第226話 いってらっしゃい

 夜中にバイトへ出かける。

 玄関にはクロさんが眠っている。

 起こした僕を眠そうに眺めてスリッと額を擦りつける。


 頭を撫でるとクンッと鼻を鳴らす。


 僕は、なぜこんなことをしているのだろう…。


 踏み外した人生は戻らないのだと身を持って知った。

 それでも、傍に居て欲しいと…それを願うのは身勝手なのだろうか。


 もう少しだけ…もう少しだけ…それはエゴなのだろうか。


 僕に会わなければ…もっと幸せだっただろうに。

「ごめんねクロさん」

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