ジョーカーズ・コスト―『勇者』になれなかった僕は、ガチャで引いた『道化師』で最強を目指す―
妹尾 尻尾
プロローグ
たしか
照明がいっさい無いわりに、仄かに明るいその喫茶店で、最上久丈はコーヒーを飲んでいた。
向かいに座る麗しのお嬢様、美しさと艶かしさの化身、
「あなたはちゃんと強くなっている。そんなに心配することないわ」
「本当にそうなんでしょうか……一華先輩が言うほど、僕は……」
「大丈夫。今は実感がないかも知れないけれど、きっとわかるときがくる」
「でも……」
「あなたの悩みは私も通ってきたわ。だからちゃんとわかる。隠さないで、ちゃんと言って? あなたの葛藤を、ぜんぶ私に預けて?」
優雅に微笑む一華。久丈には、彼女の周囲に花が咲いたかのように見えた。
「――一華先輩、あの、僕は、」
「男なんて口ではカッコイイこと言っても頭の中はえっちなことばっかり考えてるってわかってるから、その性欲、ぜんぶ私に預けて?」
ブフーッ。
「聖母みたいな顔して何てこと言うんですかアンタは!」
お客さんが誰もいなくて助かった。
「やだ、ジョーくん……。顔にかかっちゃったじゃない……」
「かかってません! ちゃんとコップに向かって吹きましたからねー! 残念でしたー!」
「ええ。ちゃんと中に出したわね」
「コップの中ですからね!」
おかげでコーヒーがおじゃんになった。
「ところで話は変わるのだけれど、ジョーくんのカフェラテ美味しそうだからちょっと飲ませてくれないかしら? ジョーくんの体液が混入してコーヒーから進化を遂げたことは一切無関係なお願いなのだけれど」
「一華先輩って、なんでそんなに一華先輩なんですか? いつからそんな風に一華先輩になっちゃったんですか!?」
「あら? 私の名前をドM変態痴女の代名詞みたいに言わないで? 濡れちゃう」
「濡れないでください悦ばないでください」
「私が私になった原点は、そうね、第一に家庭環境。第二に少女漫画の影響かしら?」
「あぁ……最近のはスゴイらしいですからねぇ」
「妙に『薄い本』だったわ」
「少女漫画じゃねぇええ!!」
「ふふ、元気になってくれて嬉しいわ」
にっこり。
信じられないかもしれないが、この物語は、
『持って生まれた才能がないために』夢を諦めた少年と、
『持って生まれた容姿端麗という才能のせいで』人生を決められた少女の、
『運命に抗う』お話である。
「あら、こっちは元気じゃないわね?」
「ひとの股間にさわんなああああああああああああああ!」
そのはずである。
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