女神クロユリを倒せ

 邪神であるクロユリを倒さなくては、俺たちの戦いは終わらない。

 この世界の平和と自由のため、なんとか討伐せねば。


「この世界に技術を持ち込み、世を乱した報いを受けなさい!」


「綺麗事を……妾は女神。これも神の慈悲であり、神託なのだ」


「人に干渉し、運命を捻じ曲げて何が神ですか!」


「それこそが神の特権というもの。そもそも神とは……」


「話が長いぜ。麺が伸びちまった」


 すっかり伸び切ってしまったカップ麺を箸でさらに伸ばし、オニキスへと肉薄する。


「必殺! ヌードルワイヤースラッシュ!」


 だが麺はすべて身体をすり抜けてしまう。


「なんだと!?」


「しまった! クロユリは神。それも実態がない概念のようなもの。物理攻撃が効かないんだ!」


「そういうのは先に言ってくれ」


 カップ麺が無駄になっちまったぜ。


「なら魔法でいくわ! サウザンド・ライトニングバレット!!」


 雷の弾丸が飛び交い、クロユリを貫いていく。

 避けるそぶりもないということは。


「脆弱。惰弱。やはり人間などこの程度よ」


 ノーダメージである。こいつ厄介だな。


「魔力を上げて斬ればどうだ。飛翔紅龍!!」


 ヴァリスの剣に炎が集い、クロユリに直撃するが。


「学習しないのね」


 刃を掴まれ、胸に魔力波を打ち込まれて吹っ飛んでいく。


「うがはっ!?」


「ヴァリス!!」


 出血がひどい。一撃でここまでとは、洒落にならんぜ。

 ユカリとサファイアに回復魔法を頼んでおく。


「脆い脆い」


「本当に効かないか試してやる」


 上半身と下半身を分け、巨大化して押し潰す。


「必殺、俺プレス!!」


 完全なる物理攻撃で埋め尽くせば、概念はどこにいくのか試してやる。


「無駄なことが好きだな」


 中心から声がする。


「どれ、お前の真似をしてやろう」


 どんどん魔力が高まっていき、内側から破裂した。


「マサキ様!!」


「安心しろ。俺は無事だ」


 本体はちゃんと分離しておいた。

 サファイアの杖についたクリスタルから映像が投影され、俺の姿が復元される。


「やれやれ、こんなこともあろうかと、脱出装置をつけておいて助かったぜ」


「変な機能ついてる!? 私の杖に何したの!?」


「奇妙な男よ。最大の障害はお前か」


「だとしたらどうする?」


「ここで消えろ。どの道お前は神を傷つけることができん」


「どうかな? そういうやつはビームに弱いのさ!」


 両肩からビームバズーカを発射。だがこれもすり抜ける。


「どういうことなの……」


「魔力が足りないのです。クロユリに届くほど膨大で高威力の魔法でなければ……」


「ユカリよ、貴様の目も節穴よな。こんな男に望みを託すとは」


「マサキ様は、マサキ様はあなたになんか負けない! 来て、コキュートス!!」


 要塞がさらに氷で埋め尽くされていく。

 これなら多少はダメージが入るはずだ。


「加勢するぞ! もっと冷ましてやる! ふー、ふー」


 ふーふー息を吹きかけて冷ましてやる大作戦だ。


「無理だよ! そんなんじゃ冷めないって!!」


「なら塩だ! 粗塩祭りじゃあぁぁあ!!」


 氷にさらに塩をまく。これでカッチカチになるはず。


「くだらん」


 だが砕かれる。粉々に散っていく氷がちょっと綺麗だ。


「これでもダメだってのかよ」


「つまり力が届けばいいのね? 極光冷砕波!!」


 神器をフルに使っての必殺技だ。

 だがこれも両手でバリアを張られ、別方向へとそらされる。


「初めて防御した!」


「鬱陶しい小娘だ。女神の加護がついた武器とは……」


「そのまま撃ち続けてくれ、サファイア様!」


 復活したヴァリスの剣が赤く光る。今までの剣じゃないな。


「ギャンゾックに伝わる神器だこれならお前も斬れる」


「小賢しいんだよ!!」


 その剣もバリアで防がれた。だが警戒しているのだろう。

 今がチャンスかもしれない。


「ヴァリス、一緒にやるぞ! 必殺異世界チート! コピーアンドペースト!!」


 剣にカーソルを合わせてクリック。コントロールとCを同時押し。

 俺の手元にコントロールとV同時押し。

 これで同じ剣が出た。


「なんと!! どこまで多芸なのだマサキ!」


 俺とヴァリスが背中合わせになり、腹をロープでぐるぐる巻きにする。

 そして剣に赤い光をつけたら準備完了。


「引っ張れユカリ!」


「了解です!」


 ロープを引っ張られれば、後は回転するだけだ。


「ダブル奥義! 赤い神器ゴマアアアアアァァァ!!」


 全力光速横回転でクロユリに突っ込んでいく俺たち。


「ぬっ、くっ、このおおおぉぉぉ!!」


 バリアーをガリガリ削っていく。いける。

 少なくとも当たれば傷がつくはず。


「ぬがああぁぁぁ!!」


 バリアを砕き、クロユリの両腕に傷をつけることに成功。

 そのままUターンして背中に攻撃を仕掛ける。


「まだまだ!!」


「覚悟しろ邪神!!」


「調子に乗るなああぁぁぁ!!」


 膨れ上がった絶大な魔力によって、俺とヴァリスが引き剥がされ、壁に叩きつけられる。


「うあああぁぁぁ!?」


「ぬふう!? やるじゃない!」


 背中に付けておいたエアバッグで事なきを得る。

 どうやら攻撃が浅かったらしいな。


「まずはギャンゾックのザコからだ!!」


「ぐっ!? うおああぁあ!?」


 いかんヴァリスがまた瀕死だ。

 かなり強烈に殴られている。


「謎の脱出マジック!!」


 ヴァリスに『?』マークのついた箱を被せ、開くと姿が消える。

 サファイアとユカリの横に移動しているというマジックだ。


「回復頼む!」


「わかった!!」


「完全に神を怒らせたぞ。楽に死ねると思うなよ!」


 当然だが体を傷つけられて激怒している。

 だが俺も仲間を傷つけられたんだ。かんたんにはやられんぜ。


「どうやら本当に奥の手を出すしかないようだな」


「ほう、この期に及んでまだ隠し玉があると言うか」


 仕方がない。正直やりたくないし、最終手段なんだけども。

 でも文句言ってられる状況じゃない。あれをやるか。


「マサキ様、どうするの?」


「サファイアはヴァリスの回復に専念してくれ」


 あれはもうどうなるかわからない。だが今から単独でボケていると時間がない。


「ユカリ、あれをやるぞ!」


「あれ…………あれですか!? 封印するって言ったじゃないですか!」


「仕方がないだろ。俺単騎ならまだしも、サファイアもヴァリスもいる。早く倒さないと国に被害も出る」


 正直俺だけか、俺とユカリだけが無人の世界で暴れていいなら勝てる。

 星や世界への被害がでかいボケもできるからな。

 次元断裂ハリセンとか出せばいい。世界ごと吹っ飛ばせる。

 だが今はこれしかない。


「わかりました……やればいいんでしょやれば!!」


「何をする気か知らんが……させると思っているのか!」


 クロユリの魔力波が俺に迫る。

 だがその波に乗り、カヌーでゆかりの元へと船を出す。


「いくぞおおおぉぉぉ!!」


「いやだけど……いやだけどやるしかない!!」


 俺の胸に現れた扉が開き、猛スピードでユカリを吸い込んでいく。


「なっ!? なにをしている!?」


 眩い光が要塞を飲み込み、神聖な力が俺の身体を満たす。

 やがて最強の戦士へと融合した。


「どういうことだ! 何者だ貴様!!」


「俺は人でも神でもない。俺はマサリ! 貴様を地獄に落とす者だ!」


 融合前よりスタイルが良くなり、髪がユカリの銀と俺の黒で混ざる。

 瞳がより深い紫となった。まさに人と神の合わせ技だ。


「女神様と……融合したの……?」


「ありえん! 人と混ざった所で、妾には勝てぬ!!」


 さらに巨大な魔力の渦が俺を覆う。

 だがこの体の時は真面目モード。この程度は無効化できる。


「効かんな」


 光速を超えて肉薄。ボディブローを叩き込んだ。


「ぬがっ!? 神である妾に触れただと……!?」


「俺にはユカリの力も混ざっている。概念だろうと神だろうと殴り抜けるのみ!」


 しばらくおふざけは封印だ。本気でいかせてもらうぞ。


「真面目に、ものすごく真面目に。本当にしっかりやるぞ! ちゃんと戦ってやるからな!!」


 さあ邪神退治だ。決してふざけずいこうね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る