アンブレイカブル

よしおは深夜にしか姿を現さない。それを狙って若い連中が彼の前に立ちはだかる。手にはものものしい鉄パイプ。よしおがすれ違うと共に一斉に躍りかかった。容赦無く打ち下ろされる金属音。ドスッドスッという鈍い音が響き渡る。そして跳ね返す小気味良い筋肉音が微かに擦るように続く。


一通り打ち込み終えると一同はサッと飛び退く。すかさずスポーツカーがよしおに向かっていく。腹部にバンパーが打ち付けられる。ボスッ

鈍い音がして肉に食い込み、次にメキャと音がして、バンパーがひしゃげた。


「たまげたな」

「怪物だ」

「次はどうする?」


よしおのボディはいつからかどのような衝撃にも、刃物にも傷つかないアンブレイカブルボディーになっていた。彼は習っていた空手が災いし、つい絡まれてた美女を救ってしまった時、それが判明したのだった。幼い頃から怪我も病気もなく育った彼には気づく機会もなかった。そんな彼に対し、町はどうやれば彼が本当に傷つくか、その方に好奇の目を向けたのだった。痛みはないが、攻めくる町の目が怖くて、よしおは日中なるべく姿を隠すようになった。


そんないつもの光景に見るに見かねて1人の美女が立ち上がった。


「可哀想じゃないの、そんなに傷つけちゃ。」


そう言って颯爽とした足取りで近づく彼女に、男たちは動きを止め、道を空ける。


よしおに近づくと、不意に女は口付けした。

「やめろぉぉぉおおお!!」

その瞬間よしおは呻き声をあげ、飛び退いた。


「俺は女に免疫がないんだぁぁ!!」


その瞬間よしおの体はみるみる歪んでいき、煙となって消えた

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