mission4 凡事不徹底、だからこそ今すべき事。

 新年度が始まりました。

 多くの新社会人が世の荒波にもまれ、悩み、苦しむ時期でもあります。


 そこで新社会人の皆様へ送る、表題の件。

 凡事徹底という言葉がありますが、それは後程解説します。



 さて、世の中には「掃除と挨拶は仕事の基本」だなんて言葉あります。少々古臭い気もするのですが、実はこれが核心的な部分だったりします。


 例えば飲食店や娯楽施設、宿泊施設等の接客業においては、それはもう当然の基本です。これなしでは仕事になりません。


 ですが、そうではない企業においても「掃除と挨拶は仕事の基本」と言われます。

 ただそれだけを言われると納得感がないでしょうから、少々解説します。



 まず掃除。


 これは「掃除をする事」が目的ではなく、現状よりも「綺麗にする事」が目的であり、前段階としてそれを理解できるかどうか、そこが基本姿勢として問われます。


「お願いした窓拭き出来た?」

「はい、拭きました!」

「……まだ汚れてるね」

「そこ拭いても落ちないんです……」


 そうじゃない。

 汚れが落とせたかどうか、落とせなかったにせよ努力してみたのか、そこが問題であり、拭いたかどうかはどうでもいい事。それがお仕事なのです。お仕事をしていれば、似たような事が山ほどあります。(窓の汚れに関してだけヒントを出すと、水拭きで拭いても落ちない汚れは、案外、乾いた雑巾でせっせと擦ると摩擦で綺麗になったりします)


 拭けと言われて拭いたかどうかではなく、掃除という作業が目指すところの目的をしっかりと把握し、着地点を「現状より綺麗にする」という場所に求められたかどうか、そこを見られます。

 そして、そうする事の出来る人間になるため、皆さんは掃除に真剣に取り組むべきなのです。


 会議室の掃除を頼まれたとします。

 自分は綺麗にしたつもりで報告するわけですが、上司は書庫の上に手を伸ばして埃の有無と確かめたり、壁の造作のほんの僅かな段差に埃がないかを確かめたりします。

 これは、そこまで手を伸ばそうとしたかどうか、単純にそれだけを見られているのです。面倒だからやらなかったのか、それとも気付きもしなかったのか、どちらにせよやらなかったという評価に着地します。


「普通、そこまでやらないでしょ」


 という反論はもしかすると正論なのですが、そうじゃない。

 姿勢を問われ、どこまで気を配れるかを問われたのです。


「先輩は全然掃除しない」


 そりゃそうです。

 逆に、先輩がせっせと掃除をしていたら会社として問題です。

 生産性のある仕事が出来る人が、非生産的な仕事に時間を割くなど会社としては損失であり、やらせるべきではない。


 新入社員の皆さんに掃除を頼むのは、掃除をさせる事が目的ではなく、試されていると思った方がいい。

 なぜそんな試され方をするのか、答えは簡単です。


 何もできないからです。

 生産性のある仕事など何一つ出来ない事が分かっているので、そういった事をやらせるわけです。そして、生産性のある仕事を任せても問題のない人材に育つかどうか、また本人が育とうとしているかどうか、そこを見られるのです。


 ですから、仕事を頑張りたいと思ったのならば、掃除は真剣にやるべき!

 いやむしろ、掃除こそ真剣にやるべきです。

 掃除を真剣にやれない人材に、掃除以上の仕事は回ってこないと思うべき。


 他人がやらない部分にまで目を向け、手を伸ばし、そうやって自分の感性を鍛えるのに掃除はとてもいい練習です。

 誰よりも掃除をし、誰よりも早く生産性のある仕事を貰いましょう。

 仕事は降ってくるものじゃありません。

 自分から取りに行ってこそ、評価に値するのです。



 次に挨拶。


 著者はよく、新入社員の研修でこう言います。


「皆さんが、今日からになれる事があります。それは元気の良さです」


 これについては、それ以上でも以下でもない、そのままの意味です。


 声を出すという事を経験してきた人と、そうでない人では若干の差はありますが、それでもそこは意識一つ。特別これといった経験値や修練を積まなくとも、大きな声は出せる。


 自分の殻に閉じこもり小さく纏まってしまわないよう、大きな声を出す。

 そうやって一歩踏み出せるかどうかも、その後の成長に大きく関わってきます。


 掃除も挨拶も仕事に関係ない。

 そんな事はありません。

 多くの仕事は人間が行います。だからこそ、皆さんが雇われたのです。

 そしてその仕事を行う人間が、細かい箇所まで気を配り、人が伸ばさない所まで手を伸ばし、自分の殻に閉じこもらず大きな一歩を踏み出せる人間ならば、仕事も上手くいく気がしませんか?


 きっと、上手くいくのです。


 逆に、細かい箇所に気配りが出来ず、誰かと同じ所までしか手を伸ばせず、自分の殻に閉じこもって小さく纏まってしまう人に、いい仕事が出来ると思いますか?


 何事も練習です。

 掃除と挨拶、これは仕事をやる上で非常に良い練習になります。



 さて、ここで表題の件。

 凡事徹底という言葉があります。それを座右の銘にしている人がいたり、部門のスローガンに掲げたり、好きな言葉に挙げたり、色々です。


 ただしこの「凡事徹底」という言葉、私はあまり好きではありません。

 それは私が尊敬するとある経営者さんの影響なのですが、非常に納得感があり、完全に影響されてしまいまいした。


 凡事とは、正しくあらゆる「意識せずにやっている事」全てであります。

 仕事中だけに限定しても、凄まじい量になる。

 それが出社した瞬間から始まるのです。


・挨拶

・お辞儀の角度

・歩く姿勢

・座っている姿勢

・表情

・掃除

・電話応対

・机の上の整理整頓

・備品の取扱

・時間厳守


 などなど、他にも山ほど出てくるでしょう。

 それらを常に徹底して行う事で、全てが上手くいく。一事が万事、小さい事も出来ないようでは大きい事など出来るはずもない。だからこそ、凡事を徹底せよ。


 素晴らしい教えです。


 ですが、その経営者さんはこう曰く。


「凡事を徹底して行うなど、私には無理だ。凡事徹底などと軽々しく言う奴は、凡事を軽く見ている」


 多分、やってみたのでしょう。

 凡事を徹底する事がどれだけ精神力をすり減らす事か、体験してみたのでしょう。

 著者もやってみたのですが、三日と持ちません。こんな事をしていたら仕事に支障が出ると思う程でした。人間はそこまで凡事に徹底できない生き物なのかもしれません。


 そこで、凡事の中から二つを抜粋し、徹底する。


 掃除と、挨拶。


 凡事徹底など出来やしない。

 生産性のある仕事も出来っこない。


 ならば今、すべき事。



 掃除、挨拶。

 これは誰にでも出来る事。


 今、やるべき事です。

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