「酒」 大人の味 ~垂れ耳エルフと世界樹の街~

『面白いから食わしてみな』

 そう唆されて、食後に出したのが失敗だった。

「なんだか、体がふわふわするのです~」

 アハハウフフと笑い続ける少女を前にして、どうしたもんかと溜息をつく。

「ブランデーケーキ一切れでこれだと、本物のお酒を飲んだらどうなるんだろうね、彼女」

「飲ませたら危ないな。ってか、おっさんは平気なのかよ」

「え、何が?」

 本来の標的はと言えば、顔色も変化なし、言動もいつも通り――。

「ところで、これはパン屋の髭親父の差し金だと思うけど、そうやってほいほい人の言葉に乗せられるの、君の悪い癖だよね」

 ぎょっとして店主の顔を窺えば、ああ――目が据わっている。

(こういうことか……)

「聞いてる? オルト君!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る