第57話 海浜の死闘

 街外れに拡張された港は、昨日までなら既に労働者が監督に率いられて作業している時間なのに、ひっそりとしている。


 それはこの港の、本当の主……イシドールの手の者によって巧妙に人払いがされているからだ。

 今ここにいるのは、潜伏したイシドールたちが総督府で虐殺と略奪の限りを尽くし、戦利品と戦功の証をたっぷりと持ち出して引き上げてくるのを待っている者だけである。


 港を包む靄の中で待っていた彼らの一人は、街からこちらへと近づく人影を発見した。


「おい。今日の作業は中止だ。それ以上こちらに近づくな」


 誰何の声にも動じず、陰は近づく。


「止まれ! 止まらなければ怪我をするぞ」


 腰に下げていた、船上で使うに適した反りの強い片手剣を抜く。

 陰は止まった。男は振り上げようとした手を降ろした。その時。

 風を切る音と共に、男の顔面が割れた。


「……がっ」


 仰向けに倒れる男に周囲の目が集まった。


「なんだ?!」

「なにがあった!」

「カルロが倒れた!」


 男たち、いや、ギャセリック水兵たちが倒れた仲間に駆け寄った。

 彼らは自分たちの見た物に、衝撃を受ける。さっきまで立ち歩いていた男の額に、小振りな斧が深々と突き刺さり、絶命させているのだ。


 その衝撃が、意識の空白を作った。

 誰も靄を突進する巨大な影、身を覆うほどの大きな盾の接近に気付かなかった。

 再び、彼らに衝撃が走った。物理的な衝撃。

 そこに集まっていた五人の水兵のうち、三人が真横に吹っ飛ぶ。靄の中に消えた仲間たちが海面に叩き落される音を聞いた。


 が、それを認識できるほどの余裕はなかった。

 盾を構えた巨躯が目の前に蹲っていた。目がこちらを睨んでいた。

 敵だ。と水兵は剣を抜く。

 だが向こうの方が早かった。剣を抜いた腕に叩き込まれる痛み。

 叩き落とされた剣は敵の手に転がった。巧みに手首を返し、剣が首筋を撫でた。

 すかさず、敵はもう一人の水兵へ奪った剣を投げた。投槍のようにまっすぐ飛び、一人残った水兵の胸板に柄まで突き刺さる。


 たたらを踏み、やがて頽れる仲間を、吹き出る首筋の血を抑えながら見守ることとなった水兵は、今際の際に自分に課せられた義務に従って行動した。他の仲間へ危機を伝えることだ。


「敵襲だぁ! 敵は……」


 その先は無かった。敵の放った前蹴りが顎を蹴り砕いたのだ。

 そのまま彼は蹴り飛ばされ、最初の三人と同様に海へと落ちた。

 死の瞬間、彼が見たのは海に浮かぶ三人の死体だった。盾で体当たりされた時点で、仲間たちは内臓と肋骨を粉砕され、既に亡くなっていたのである。



 寡兵で集団と戦う時は、奇襲にて先手を取り、主導権を握り続けること。

 初陣以来、ヨン・レイに身に付いた戦いの鉄則である。

 視界を遮る靄も今は幸いした。仲間を呼ばれる前に間合いを詰めてしまえばこっちのものだ。とはいえ、今の声で敵が集まってくるだろう。


 最初に投擲した手斧を拾い上げ、さらに斃れた水兵から剣を回収する。切れなくなったらその都度捨てればよい。


 鉄靴の足音が迫っている。ヨン・レイは盾を構え、静かに、足早に動いた。

 靄に包まれているが、一度崖の上からこの港の全景は把握している。今いるのは三つある石造りの桟橋の一つである。別の桟橋からこちらを見ていたのだろう敵兵が近づいているのだ。


 霞む視界に敵の影が見えてくる。三人、固まって歩いていた。

 間合いを図り、ヨン・レイは盾を敵に向けて一気に加速する。相手の顔形、背格好まで視認できる距離まで詰め、踏み込みと同時に盾を叩きつける。


 衝突した敵兵が真横に吹っ飛び、積み上げられていた木箱を破って止まる。今ので二人を仕留め、残りの一人へ剣を叩きつけた。


 額を割られた兵士が、何が何だか分からないという目で、目の前に立つ巨大な戦士を見上げ、事切れた。


 ヨン・レイは進む。振り返ったり、倒した者へ哀れみを見せるのは、全てが終わってからでいい。



 桟橋に分散していた歩哨の兵を倒し、施設の最奥にある半円柱型の建物に近づいたヨン・レイは、そこが何であるか真に理解した。


 薄い壁の向こうで、波の寄せる音がするのだ。ここが軍船の建造所であるのは間違いなかった。

 何とか中へ入り、船を破壊できないものか。爆石でもあれば、底に穴を開けられるのだが、流石に今回は持ってくることが出来なかった。盾の袋にも入れていない。


 考えていたその時、街の方角から石敷きの道を転がってくる車輪の音が聞こえてきた。それも複数。

 ラディケインを連れたゲールだろう、ここに入るのを食い止めねばならない。

 ヨン・レイは桟橋の根元まで戻った。そこで、自分の考えが間違っていることに気付く。

 そこにいたのはイシドール率いるギャセリックの男たちだった。車輪の正体は荷車で、そこには総督府で見た垂れ幕や宝飾品、美術品、それに雑多な貴金属や金銀貨の詰まった袋が積み上げられていた。


 だがそれよりも目を引くのは、荷車の上を真っ赤に染めるほど血を滴らせる首級の山であり、その中に横たえたラディケインの死体だった。


「おおっと、そこに立ってるのは、もしやミス・ハジャールではないか?」

「……随分、好き勝手やったものだな」

「海賊だからな」


 イシドールの号令でギャセリックの男たちが武器を構えた。


「留守番させていた部下を可愛がってくれたみたいだな。その礼をさせてもらうぜ」


 帝国兵士の恰好をしたギャセリックの男たちが一斉に襲い掛かった。

 それに対しヨン・レイは、なんと大盾を捨てた。

 ただし、ただ捨てたわけじゃなかった。片手に手斧を、片手に奪った剣を持つ。

 そして大盾を迫りくる敵に向かって投げつけた。

 鉄板を巻いてある大盾の縁には刻み目が付けられていて、それが獣の顎のように敵の一人に食い込んだ。


 断末魔が響き渡る中、乱闘に縺れ込む。切り込み、叩きつけ、絡めとって体を崩す。

 帝国兵士の武具で身を固めていたギャセリックの男たちは、それらに対応しきれてはいなかった。

 何故なら、彼らは帝国兵の戦い方まで模倣してはいなかったからだ。帝国兵士の戦いとは、集団で一個の目標を攻めるものである。呼吸を合わせ、戦友を信頼し、一糸乱れぬ集団戦を行う。


 だがギャセリックの水兵たちのそれは違う。彼らは勢いに任せた苛烈な攻撃を、個々別々に行うのだ。そこに連携はない。


 そんなものに負けるほど、ヨン・レイ・ハジャールは弱ってはいない。


「畜生、なんだこいつ?!」

「やっぱり化け物じゃないか!」


 刃こぼれした手斧が隣に立っていた仲間の頭をかち割る様を見せつけられ、男たちが悲鳴をあげた。

 彼らの勢いは急速に弱まった。ヨン・レイを囲って攻め立ててはいたが、討ち取ろうとまではいかなかった。


 しかし、イシドールにとってはそれでじゅうぶんだった。


「今のうちに船に運び込んでしまえ!」荷車に積まれた物が、造船所から駆け付けた仲間たちによって運ばれていく。


「逃がさないぞ、イシドール!」

「ふん。ならやって見せろよ、北に棲む野蛮なオークとやら」


 せせら笑うギャセリック太守は造船所に消えた。


(追いかけなければ……でも、目の前の敵が……!)


 イシドールの部下たちは、どうやら上司が逃げ延びるまで時間稼ぎをするつもりらしい。


(ここは……)


 ヨン・レイの頭脳が、蓄積された知識が、経験が、問いに対して答えを探る。

 鈍った手斧を投げつけ、一人を倒し、剣を奪い、別の一人に叩きつける。

 男たちは引き下がりながらも造船所の手前で壁の様に立ち塞がった。

 だが、その目は怯えている。恐怖に竦みあがるのを、集団になって辛うじて抑えている。

 答えは出た。

 両手に一本ずつ剣を持ったヨン・レイは、胸いっぱいに息を吸った。

 体が一瞬、一回り大きくなったように見えただろう。

 瞬間、叫んだ。



「そ こ を ど け ろ ! !」



 牙を剥き、質量を伴ったかのような大音声。鋭く、突き抜けるような大喝に男たちは瞬く間に竦み上がった。


 動かない兵士などただの案山子だ。ヨン・レイの身体が剣を持って踊る。剣の舞だ。

 一呼吸の間に素早く繰り出す剣が固まった男たちの急所を貫く。首、胸、腰を割られ、ギャセリックの男たちが雪崩を打って倒れた。


「ふぅ~……」呼吸を整えるヨン・レイ。間髪入れぬ連撃は負担が大きいものだ。


 体術を教えてくれたインファが言っていた。呼吸こそ最も重視すべき根源の動作であると。

 だからヨン・レイは、今少しの間パンクラチオンの呼吸法で体力を回復させる。

 障害はなくなった以上、また走り出さねばならない。



 

 軍船に乗り込んだイシドールは、待機させてあった部下に問う。


「何人いる?」

「ざっと50人」

「思ったより減ったな……」


 完全に油断していた帝国兵だけを相手にするつもりだったから、この損害は予想外だった。

 帝国貴族を名乗る、オークという巨人の女は厄介だったが、船に乗ってしまえばこっちのものだ。

 靄が晴れる前に出港し、沖合で待つ水軍と合流する。

 それで全て万事解決。後は無防備な都市を正面から蹂躙すればいい。


「出港する。漕ぎ手を付かせろ!」

「へい!」

「錨あげろ! 帆を張れ! いい加減靄も晴れちまうからな。それまでに沖に出てぇ」


 錨が巻き上げられ、帆柱に水夫が登る。さらに造船所の前面の大扉が開け放たれる。

 日光で煌く靄は、夜明けの頃より少し薄い。その中へそろそろと軍船が進み出ていく。

 扉を開けた部下たちが綱を伝って船に戻って来た。


「ようし、持ち場に着け」

「お頭ぁ! 侵入者です!」


 見張り台の水夫が指し示す。

 離れつつある造船所の岸に立つ大柄の人物が、此方を見ていた。

 イシドールが叫ぶ。


「綱を切れ!」

「まだ陸に残ってる連中がいます!」

「いいから切れ! 切るんだ!」


 そう言っている間にも、綱の一つに侵入者……ヨン・レイが飛びつく。

 水夫たちは船から陸へ伸びる綱を曲剣で叩く。厳しい航海でも痛まない丈夫な綱はそう簡単に切れやしないのだ。


 二度、三度と剣を叩きつけ、ついに綱が切れた。重力に従って海面へと綱が落ちていく。

 盛大な水音が聞こえ、甲板の上で水夫らが胸をなでおろした。


「落ちましたぜ」

「結構。持ち場に戻れ」


 イシドールは平静を装ったが、内心ではこう思っていた。


(果たして本当に奴は水に落ちたのか? 聞こえたのは音だけだ。もし、奴が落ちていなかったら……)


 その懸念が現実のものとなったのは、船が沖に出ようとした時だった。


「大変だぁ! 漕ぎ手がやられた!」


 水夫の悲鳴。と同時に、船体側面にある櫂を出す穴から漕ぎ手が飛び出し、海面に落とされた。


「敵襲だ! 迎え撃て」厳しいイシドールの声に部下が応える。


 漕ぎ手が犠牲になる中で、武器を携えた水夫が船室に向かう。

 激しい物音が足元で聞こえた直後、甲板に穴が開いた。

 水夫の一人が天井に叩きつけられたのだ。血だらけの頭が甲板に生える姿に動揺が走る。

 事態はそれだけじゃなかった。船室から、なにやら煙の臭いが漂ってきたのだ。


「火が出ているぞ! 消火しろ!」


 水夫たちの動きは速い。船上での失火はまさに命取りだからだ。

 大急ぎで船室に向かおうとした水夫だったが、戸口に近づいた途端、はじき返された。

 吹き飛んだ水夫の身体が帆柱に叩きつけられた。背骨を折ったその者は絶命した。


「この船はもう終わりだ。イシドール」


 ゆっくりと出てきたのは、イシドールの予想通り、ヨン・レイだった。

 手には船倉にしまってあった船上戦闘用の細い槍を持っている。


「お前が戻らねばギャセリックの水軍は動くまい。じきに靄も晴れる。企みは潰えたんだ。今降伏すれば、運が良ければ死にはしないだろう」


 余裕たっぷりに出てきたヨン・レイを水夫たちが囲む。

 イシドールは剣を抜く。そして突き付けた。


「貴様、たった一人で俺たちを相手に勝てるつもりでいるのか? とんだ自信家だな」

「当然さ。何故なら……」


 ヨン・レイは槍を低く構えた。その顔には笑みさえ浮かべていた。

 自信家。そう言われても、ヨン・レイは意外とそれを受け止めている自分に気付く。

 積み上げた物が、託された物が、受け継いだ物が、ヨン・レイに力を貸していた。

 戦い、勝つ意志。気高き戦士の称号。

 素槍一本でも雄々しく立つ『騎士』 それがヨン・レイ・ハジャールだ。何故ならば。


「何故なら、私はスピネイル・ハジャールの娘だからだ」

「なんだそりゃ。殺れ」


 切りかかる水夫たち。だが既にヨン・レイは対策済みだ。


「……止 ま れ !」


 一喝され動きが止まった水夫に、手の槍を放つ。

 肉串で肉を刺すがごとく、槍が貫通して背後の敵にまで当たった。

 断末魔を上げて悶え苦しむ敵から武器を奪い、機先を制したまま切りかかる。

 狭い船上を縦横無尽に駆けながら、ヨン・レイは目に映る水夫を片っ端から切り、あるいは舷側から海上へ叩き落す。


 圧倒的な戦闘能力の差、埋めがたい差がそこにはあった。

 何度目かになる剣を奪い取り、返す動きで水夫を蹴り落とす動作の後、突如ヨン・レイは横っ飛びに飛んだ。


 直後、さっきまで立っていた位置にイシドールの一撃が飛び込み、甲板に突き立った。


「ちっ、うまくかわしたな。折角忍び寄ったっていうのに」

「部下を壁に近づいてきたのか。卑劣な奴め」

「なんとでも言え」イシドールは正対し、剣を構えた。


 目が合ったヨン・レイは、この男は他の連中のように一喝できる相手じゃないと分かった。だから、こちらも剣を相手に向け、構える。


 戦いの間船室で放置された失火が拡大し、船室から船上へと火の手が伸びつつあった。煙の筋が各所から上がり、陽の光ならぬ熱気を空気が帯びている。


「ちくしょう。手間暇かけて準備した計画が全部ご破算だ。だが守備隊は壊滅させたし、帝国貴族の首が増えれば多少言い訳も立つ」


「悪いけど故郷から遠く離れた地で死ぬつもりはないんだ。養い親が悲しむ顔は見たくない」

「その不細工な面を切り刻まれても、意地を張り通せるかな……」


 二人が間合いを詰める。集団の長だけあって、イシドールの剣は傍目から見ても上質の逸品だ。長く、鋭い。持ち主の腕も、ヨン・レイの想定する平均的技量より上と見た。


 こうなると桟橋に捨てた盾が恋しくなった。だが、状況判断で捨てた武具に未練を持つと死につながる。彼女はすぐにそれを忘れることにした。


 その時、甲板の一部が火を噴いて砕けた。船室に積んであった可燃性の防水剤に引火したのである。

 それを合図に二人は同時に動き、切りかかった。二人の間で剣がかち合う。

 火の手が一気に広がる軍船は、操るものもなく沖合へと漂流をはじめる。その上で、生き残った二人の戦士が戦っていた。


 翻るイシドールの剣を紙一重でかわす。返す動きで切り返すも、ヨン・レイの攻撃をイシドールが鞘で払った。


 叩き割られた鞘を投げつけ、間合いを開ける。火の粉が掠め、イシドールの髭を焦がした。


「さあ、そろそろ時間切れって所かよ。港で商船が騒いでるからな」


 火を噴く船が航路の上に漂流しているのだ。目を引かないわけがない。


「楽しかったぜぇ! ミス・ハジャール。帝国の神々に慰めてもらえよなぁ!」


 最後の攻撃、とばかりの猛烈な連撃がヨン・レイを襲った。彼女はこれを防ぐ。だが、もう反撃する余力はあまりなかった。


 たった一人で港の歩哨、偽帝国兵、水夫、そしてイシドールと戦い続けたヨン・レイの体力は、底を見せつつあったのだ。辛うじてパンクラチオンの呼吸で維持している状態だった。


「どうした! 黙っていても可愛げがないぜ!」

「はぁ、はぁ、生憎と、愛嬌で売っているわけじゃないんでね……」

「ふん。なら、もういい加減死んでくれや!」


 強烈な一撃で、遂にヨン・レイの持っていた剣が折れ砕けた。その隙に放たれた足払いで、炎が舐め残した甲板の隙間に倒れ込んだ。


「ぐっ……」

「よくやったよ、あんた。帝国の騎士は本当に強かったって、俺が本国に胸を張って報告できるくらいにはな……」


 大上段に剣を構え、イシドールが首を切ろうと迫る。

 疲労で手足が萎え始めたヨン・レイは……それでも決して諦めてはいなかった。

 剣の食い込む瞬間、イシドールに飛び掛かり、諸共海へ落ちてやる。ただそれだけを考え、身構えていた。



 ただ、その思惑は実らなかった。幸運にして!



 風切り音が聞こえた。槍ではなかった。

 何かがイシドールとヨン・レイの間をすり抜けた、ような気がした。


「がっ……ぐふっ」


 その後、イシドールがたたらを踏んだ。胸に血が滲み、口からも一筋の鮮血が溢れた。

 それを見た瞬間、ヨン・レイは発条仕掛けの人形のように跳ね上がり、肩から相手のどてっぱらに体当たりした。


 炎を纏っていた帆柱がへし折れ、叩きつけ合えたイシドール諸共、海へと没した。


「はぁ……はぁ……」


 肩で息を吸い、今何が起こったのかを見定めたかったが、そんな余裕はヨン・レイには無かった。

 ただ、風切り音が聞こえたのは分かった。今も聞こえていた。それが聞こえるたびに、船の舷側が爆ぜ、炎が吹きあがり、船体が傾く。


 聞こえる音を便りに、海を見た。もう薄く、消えかけた靄の果てに、小さく船の影が見える気がしたが、疲労からくる幻覚かもしれない。


 船が燃え、傾く。船尾が沈み始めていた。

 逃げなければいけないのに、ヨン・レイは見える幻影をしっかり見ようと、じっと甲板の上で目を凝らすのだった。

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