死なない魔女のなんでもない日常

宵月アリス

一章 彼女の日常

1気まぐれに行った森の中で……

帝都から離れたクラウの村郊外の小高い丘に私は住んでいた。少し歩いた所に村があり、立地としては十分な場所だ。

そんな静かな場所で、ある時は惰眠を貪り、またある時は近くに出る魔獣の相手をし、時には錬金術や薬草の調合などをして暮らしていた。

太陽が真上に登ってきた頃、私はやっと布団の中から起き出した。

「うぅーん…よく寝た…」

「あ、師匠おはようございます。いくら何でも起きるの遅すぎですよ」

ジト目でそう注意してくるのは弟子のクエルだ。

「おはよう」

私がクエルと出会ったのは一ヶ月程前のことだった。


私は、その日も日課である薬草を取りに森へ行っていた。

「うーん…やっぱり、最近は薬草も少なくなってきたなぁ…自分で栽培とか?でも、めんどくさいなぁ…」

なんて考え事をしていると、爆発音と共に森の奥からドス黒い魔力・・・・・・が漏れ出てきた。

「これは…もしかして、魔力暴走かな?おかしいなぁ…この森にそんなに大きい魔力泉まりょくせんは無いはずなのに」

魔力泉とは、名前の通り魔力が漏れだしている場所のことである。それより、こんな所で魔力が暴走したらまず森は助からないだろう。それどころか、私の家にまで被害が…

そしたら、私のダラダラ怠惰生活が…

「やっぱりやるしかないかなぁ…」

そう言って、私はカバンの中から取り出した片眼鏡モノクルを掛け、藍色のローブ・・・・・・を纏った。

そして、一本の枝を取り出しこう呟いた。

「神樹よ、我が願いに応じ姿を変えよ」

眩く枝が光り、次の瞬間には手の中に箒が現れていた。

「さて、私の庭テリトリーで遊んでいる愚か者たちにお仕置きをしよっか」

そう言うと彼女は、箒に跨り音の発生源へ飛んでいった。

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