第16話 物語への挑戦

このゲームは基本プレイ無料だ。

しかし、馬や鳥などのペットの購入や回数限定の復活サポートやアイテム枠の増加等、プレイサポートは有料でサービスを回している。


そして、このサポートを購入するとメインクエストを受けることができるようになる。

メインクエストはRPGゲームの様な一つの目的に乗っ取って進んでいくクエストで、一定の条件をクリアすると初まる。


ゲームにログインするとある日突然、女神からの呼びかけがくる。

この世界にも複数の神がおり、この女神は人間の神で魔族サイドの別の神に監禁されている。

そして、女神を解放するべく3人の勇者が旅立つ。


勇者がいるなら何も特別な能力を持たないプレイヤーキャラに出番がない様に思うが、

勇者たちはその度の道中で強力な敵と出会い敗北。生死不明となる。

プレイヤーの旅路はこの3人の勇者の足跡を辿るところから動き出す。

そして、その捜査の最中に勇者達を撃破した強大な敵達と遭遇していく。


このメインクエストの面白いところは、通常のRPGであれば一人で仲間を操作して黙々と

敵と戦っていくだけだが、その仲間は他のプレイヤーキャラに頼るしかない。

つまり、本当に自分の仲間と強大な敵と挑むことができる胸熱設定なのだ。


当然強すぎる仲間がいれば、逆に無双状態となり難易度が低くもできるが、

幸いにと言うか、残念ながらと言うか我がギルドには上級プレイヤーは一人もおらず、

一番強いスパイスさんですら三部作まで公開されているメインクエストの第一部をクリアしたのみでその先の強敵には戦力不足で挑めていない。


しかし、その第一部をクリアすることで段階的に解放される女神の力を得ることで前回の話であった

変身能力を得ることができる。この変身能力は現実の時間で約一時間に一回使うことができ、

その間は莫大な能力が向上するが、特段の副作用もない。

あえて言うなら普段から常用するとその力に溺れ、普段の戦闘での判断を誤ることくらいだ。


その絶大なパワーを知った我らが団長まほうつかい及び、ギルドメンバーは一路メインクエストの制覇に乗り出した。


魔「まずは何をしたらいいの?」

スパイス「課金^^」

魔「… … 。家族と交渉してきます。」


頑張れお子様。頑張れ団長。

僕らもうちょっと歳取っている組は直ちに課金をし、簡単なおつかいのクエストからこなしていき

複数のプレイヤーで協力してクリアしなければならないクエストまで歩を進めた。


最初の複数クエストでは勇者達の足跡をアイテムにまつわる記憶から読み取り、実際に勇者達のプレイヤーキャラを

操作してダンジョンの探索を行う。

初心者をようやく卒業したばかりのメインキャラと、仮にも勇者達のキャラではその戦力差は圧倒的で

普段ではありえないペースで敵を撃退していく。勇者つえー。


順調にダンジョンをクリアし、女神解放へと道を進んでいく勇者達。

いたって順調な旅に、今の所不穏な気配は見られない。パーティーの構成もなかなか理想的で

前衛の脳筋戦士と、後衛の凄腕魔法使いと凄腕弓使い。魔法も弓も特殊なスキルを使っており、

通常の魔法や、通常の弓攻撃よりも格段に威力や速度が向上している。


僕「いやー、順調過ぎですねー。これ負ける要素無くないっすか?」

スパイス「ふふふっ。」

僕「何それこわい。」

友人「^^;」


複数回のクエストをこなして、クリアしたことのないダンジョンも勇者の強力なパワーでクリアし、

BOSS部屋までたどり着いた。その先に待っていたのは、各種モンスターが複数とそれを従える黒騎士ブラックナイト

まるで、変身したスパイスさんの敵バージョンといった感じでやばい雰囲気を漂わせている。


まずは戦士で突撃するも通常の攻撃では怯まず、反撃で吹き飛ぶ戦士。

続いて魔法使いが魔法を放つも、魔法のバリアで弾かれダメージこそ通るも態勢を変えずに魔法使いを一刀の元に切り捨てる。

弓使いの弓もこの敵には大きなダメージを与えることはできない。

戦士がなけなしの力を振り絞り、瀕死のダメージを受けている魔法使いと弓使いを逃し、

その逃げ道の前へと立ちふさがる。

不敵な笑みを浮かべた黒騎士ブラックナイトが戦士に近寄って武器を構えたところで、ロールプレイは終わる。


自分のキャラに戻るも、先ほどの緊張と敵の圧倒的な戦力に言葉をなくす。

あれ(ブラックナイト)に、この自分のキャラで勝つ方法が見当たらない。

何か新しい力が必要だ。


僕「スパイスさんはどうやって、あいつを倒したんですか?」

スパイスさん「秘密っ☆」


かわい子ぶってやがった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る