第13話 燕雀安んぞ団長の志を知らんや

彼女がなぜ男性キャラで、このゲームを始めたのか。

理由はいたってシンプルで、彼女の好きな漫画のキャラクターのロールプレイをするところから始めたからだ。

そしてその漫画にちなんだギルドを作り、人集めをしていく中で男ばっかりが入って来た。

これはまずいと思い、女子を勧誘したらそいつの中身も男だった。


彼女は絶望に打ちひしがれつつも、勧誘ナンパを続け僕の友人を捕まえたというわけだ。

そもそもネットゲーム界隈に女の人の進出が少ない時代のことである。

絶対数的にはどうしても偏ってしまうのは仕方ない。

その中でリアルでも経験豊富な女性ならうまくやり過ごせただろう。


しかし団長まほうつかいは違った。勧誘したはいいが、今までコミュニケーションを

とったことのない男性陣のギルドメンバー達に大きく戸惑った。

その中でも、僕を除くと変な人ばかり集めてしまった彼女にも責任はあるが責められないだろう。

彼女には経験がなかったのだ。あったのは積極性。


僕「正座。」

魔「えっ。」

僕「正座。」

魔「は、はい。」


僕は団長をはじまりの村の村長の家に呼び出した。


僕「このギルドに入ってから騙されどうしですけど、今回のが一番騙された。」

魔「ご、ごめんね?でも別に悪いことは・・・。」

僕「 許 さ ん 。」

魔「ひぃー。」


今思えば最初の時に僕を無視していたのも、無視したというより接し方がわからなかったのだ。


今後もその状態で彼女がギルドの運営を続けていてもこの集団は早晩瓦解するだろう。

なぜなら、彼女には組織をマネージメントしたりする能力も、人の気持ちを慮る経験も足りない。


そして、それでもいいと思える程度の関係しかないなら、また新しい関係を探せばいいだけなのだが、

あいにくと面白い人が多いこのギルドに居心地の良さを覚えている僕には、この選択肢しかなかった。


僕「団長まほうつかいさん。」

魔「は、はい。」

僕「僕をこのギルドのサブマスターにしてください。」


14歳の子どもの作ったギルドの運営雑務を一手に引き受けることにした。

それで少しでも他の人が楽しめるなら。もちろん自分も楽しむ。


魔「そ、それは助かるけど、他の人にも聞いてみないと... ... 。」

僕「スパイスさんと仮面さんには了承とってます。後の皆んなは従います。」

魔「従うって... ...」

僕「従わせます。」

魔「... ...あはw じゃあその方が楽しそうだし任せるね。」

僕「はい。それから、しばらくギルドメンバー増やすのは無しですからね。」

魔「えー、なんでー?」

僕「初心者ばっかり増やしたら面倒見たり、教えてあげたりする人手が足りないからです。新しく入った人たち放置状態になったらゲームやめちゃうかもですよ?」

魔「そうか、人を増やすだけじゃダメなんだね。わかった。」


よしよし、大事な部分はわかってくれたな。


魔「あ、でも結婚はしてもいい?」

僕「は?(威圧」


どうやら先ほど勧誘した女子初心者をギルドに入れるだけじゃなく口説き落としてだましてゲーム内結婚の約束をしたらしい。なんだこいつ、積極性ステータス振り切ってんぞ。


僕「却下^^」

魔「そんなあぁ... ...。」

僕「ていうか、ちょっとさっきの子に説明してくる。」

魔「ちょ、ちょっと。」


さぁ、忙しくなりそうだ。

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