第8話『vsモジャ眼鏡』



都大会初戦・・・

相手はモジャモジャ頭に黒ぶち眼鏡をかけた選手だった。


6ゲーム先取での1-4・・・

黒峰は一回戦の相手にいいようにやられていた・・・



相手のプレースタイルは守り一辺倒だった。

攻めてはこないがスライスが上手い。

低く滑るボールをうまく打ち返せず、ネットにボールが何度も捕まる。




「ふふ、口ほどにもない」



眼鏡をくいくい上げながら、のけぞって挑発してくる相手・・・

「君も眼鏡キャラ復興の礎になるがいい・・・」




ああ・・・なんか変な対戦相手と当たっちゃった・・・






$$$






守りに入ろうとすれば、

絶妙のタイミングで来るドロップショット・・・

イラつくほどに増える凡ミス・・・空回り・・・



ああ・・・駄目だな・・・・




そもそも期待もしていなかったしな・・・

実力、経験、どれをとっても勝てる要素とステータスが備わっていないだろうに

仮にエンジョイ勢の自分が勝ったりなんかしたら場が白けてしまう・・・ああ、やだやだ





・・・





こんなこと前にもあったな・・・





確か高校1年の時だった・・・


他校との練習試合を見学させられた時・・・

白馬は一年なのにレギュラーとして出させてもらってたっけ




同じようなプレーをする相手・・・

珍しく苦戦する白馬・・・




「風利・・・我慢比べで負けちゃ駄目だよ!!」




笑顔でアドバイスする舞浜と爽やかに返事をする白馬

それから・・・白馬がじわじわ押し返していく・・・



苦心の末勝った白馬のガッツポーズと自分の事の様に喜ぶ舞浜・・・



舞浜の弾けんばかりの笑顔・・・




・・・

ああ・・・




心が深く・・・深く・・・沈んでいくのを感じた・・・






$$$






相手の眼鏡男子は勝利を確信していた・・・

そのはずだった・・・




相手の奴・・・

馬鹿撃ちしてこなくなったな・・・




じわり・・・じわりと・・・ボールの性質が変化する・・・




なんか・・・




なんか・・・ボールが手元で伸びくるな・・・




余裕のタイミングかと思ったボールが・・・

ラケットの芯を外す・・・

ネットを超えない





・・・





ボールに意志を感じる。

理由はわからないけど・・・





「君・・・俺と同じで・・・相当・・・意地っ張りだろう?」


「は・・・意地なんて張ってないし・・・俺はどちらかというと素直なんだよ」





嘘つけこの野郎・・・





素直な性格の奴が・・・こんなねじ曲がったボールを打てるわけないだろうが






それから1時間にも及ぶ接戦の末・・・

黒峰は勝利する・・・


湧き上がるなぜか応援にきていた男子サッカー部員たち・・・

あれ、こんなところで暇してていいのだろうか・・・





・・・





勝っても俺にはあの笑顔は待っていない・・・






嬉しさは全くなかった・・・



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