第7話『自主練』




練習後は決まって、白馬と舞浜が二人きりで自主練をしていることが多い。





ひたすらにネット際のボールのやり取りを繰り返す。

白馬の通うテニススクールが始まる19時ごろまでずっとやっているようだ。



白馬はボレーが上手い。

特にネット際で競り合って白馬が負けたことなどなかったように思う。

それを可能にしているのが、舞浜との自主練なのだろう・・・



「ひゅー、今日も夫婦で自主練か?精がでるねぇ」



周りの冷やかしの声にも爽やかに対応する二人・・・あああ闇に飲まれる





$$$






夜20時、

聡子先生は自販機でコーヒーを飲みながら、ため息をつく・・・





(外周を走る人影・・・あれは・・・また、黒峰か・・・)





「やぁ精が出るなぁ、黒峰」

顧問でコーチの聡子先生に呼び止められて、姿勢正しく手を後ろにして立つ。


「大丈夫か?・・・部のみんなも心配しているぞ、最近のお前は、何かに取り付かれたように、ずっと筋トレをし続けているとな」



そういえば、最近はずっとそうかもしれない。

何もせずにぼーっとしているのが辛い・・・舞浜と白馬のことばかり考えてしまうから、ひたすら筋トレをし続けていたな。




「・・・単なる気まぐれです」

「・・・そうは見えないんだがな」

訝し気に黒峰を見る聡子先生



く・・・




「ああ、そうえいば、地区大会突破おめでとう、言うのが遅れてすまない」

「いえ、ありがとうございます、たまたま運が良かっただけだと思います」

よし、話題が逸れた。




「何を言うか・・・サッカー部男子の話だと、その時のお前は『いつもの黒峰らしからぬプレー』だったそうじゃないか」

・・・見られてたの?

・・・なんでサッカー部男子?




「どういう心境の変化だ?」

「・・・」




答えを渋る黒峰に聡子先生はぐいぐいと来る。

「その・・・だな・・・黒峰・・・後学のためにも・・・どうしてお前がそこまで強くなろうと思ったのか知りたいのだが、教えてもらえないだろうか」




「絶対に嫌です」




「・・・」

「・・・え?」




「いえ、なんでもありません」

「・・・すまない、デリカシーが足りなかったかな」





・・・





「ところで・・・黒峰よ、都大会に向けてもっと筋トレ以外の練習をした方がいいんじゃないか?・・・例えば練習後にコートで自主練をするとか」




コートには舞浜と白馬がいるだろう・・・

その横で一人サーブの練習などをする惨めさを考えると・・・ぞっとした。




「白馬と舞浜が練習していたな・・・そこに混ぜてもらったらどうだ?」




もっとねーよッ




「わかったぞ、輪の中に入り辛いんだろう・・・よし、先生が頼んでやろう」




ああああ




黒峰はその空間から一刻も早く逃げ出したいと思った。




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