幽霊作成実験

ゆうけん

第一話「私はオカルト研究部。幽霊部員」

 オカルト。


 幽霊や妖怪、魔術に地球外知的生命体。未確認物体や生物。

 オカルトという言葉に内包している意味は多彩である。


 オカルト研究のサークルや会合に集まる人々は不思議な体験を期待し、または現代では薄れている非凡な生活を求め集う。



 私、赤宮あかみあ早苗さなえもその一人だったと思う。

 今年で大学三年生になり一人暮らしも慣れてきた。


 昔から私は「独り」が好きで一人暮らしでも友人知人は部屋に呼んだ事はないし、独りの空間を満喫するタイプの残念な女だ。


 勘違いされると困るんで先に言っておくが、私はボッチではないと明記しておこう。


 たしかに携帯電話スマートフォンは持っていない。今時あり得ないと言われるが必要性を感じない。勿論、SNS等のコミュニケーションツールも興味がない。そこまで他の人と連絡を取りたいとは思えないからだ。


 だが社交性は自他共に認める性能を保有している。


 あまりこの言い方は好きではないが、愛想笑が上手いという事。


 正直、性格はそんなに良くないと思う。見下している気もないが、人間関係はそこそこで良いと思っているだけだ。一緒にいても楽しいと思うが、独りの時間に比べると物足りない。人の行動や思考に飽きているのかとも思った事もあるが、多分それも違うと思う。

 恋愛や友情にまったく興味が無い訳でも無い。そういう映画とか小説は好きな方だし。




 こんな変わり者の私でありますが、サークルと言われる人の集まりに所属しているのです。それは俗にオカルトサークルと認知されるものでした。


 このサークルには今までの活動履歴のようなレポートが沢山あり、それらを読み耽っているうちに幽霊部員として扱われるようになりました。


 何故ならば……


 部員が集まり活動する場所は大学の東棟。過去のレポートが保管されている場所は西棟と別れており、レポートに興味のない部員達は私の存在に気付かずサークル活動をしているようです。


 部員達はあまり過去のレポートには興味がなく西棟へ来る事は滅多にありません。


 たまに部員と会うと「最近来ないね」等と言われます。


「毎日、西棟の資料室に居ますよ」と愛想良く返答しますが、あまり信じてもらえないようです。


 まぁ、部長から資料室の鍵を借りているので、部長は知っているはず。幽霊部員と勘違いされるほど過去レポートにのめり込んだのには理由がありました。


 サークル創設者の粕谷かすや十朗じゅうろう


 ネットで「心霊現象」「オカルト」等と検索すれば必ず出てくる記事。それの元となる事象を手掛けたのが粕谷十朗であった。彼の名前は出ていないが、このレポート達を読めば一目瞭然である。現在在籍している部員達も創設者の実績に惹かれ入った者も多く、有名な事件のレポートは東棟に保管されていた。


 部員達は粕谷十郎の目立った調査にしか興味がなく、大量に残った資料に目を通す者は私以外にいない。


 結局のところ、どんなに凄腕の調査や実体験をした人が在籍していたとは言え、あれから十年の月日が経てば、どこにでもあるオカルト研究部なのだ。


 私はそんな事は気にせず、彼の書いたレポートを読んだ。


 些細な事件、事象は私を魅了する。彼の裏取りや考察などは、怪現象の大小に関わらず素晴らしい完成度だった。そして、莫大な資料は未だに読みきれていない。





 いつものように資料室でレポートに目を通していると部長が現れた。


 どうやら忘年会の参加命令なのだが、今回は特別らしい。



 伝説的に囁かれるサークルのOB。つまり創設者が四年ぶりに顔を出すからだ。


 つまり粕谷十朗の事だ。


 部長が粕谷さんとは別のOB経由で連絡がついたらしい。そこで飲み会という名目で会合を企画できたようだ。


 粕谷さんは霊感が異常なまでに強いらしいと部員達は噂をしていた。皆彼に会いたがっている。普段は人前に出るのが苦手だそうで、粕谷十郎は上等な日本酒でしか釣れない。OBの先輩方からアドバイスを事前に貰えたのは、幸運だったとしか言えない。


 サークルが創設されて十年は経っているので年齢は三十を越えているだろう。


 私はどんな人なのか期待しながら参加するのであった。




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