第4話 主人公、すごい。

 僕はNo.1765842受付の人に連れられて新しい場所に来たのだがそこには沢山の人間がいて、彼らは魂が抜けたようにボーっとしている。


「…あの、彼らは何をしているんですか?」


「ああ、あれは地球人に転生する順番待ちをしてるんだ。」


「くじを引けなかったり、はずれだったりした人がいるっていうことですか?」


「まあそういうことだ。受付でくじが引けないと判断されたら、魂を抜き取られてここに集められる。だから人口密度も高い。」


「忍耐力測定で不合格だった場合、僕も地球に行くことになるんですか?」


「…そうなるな。」


 今後について話していると


「ふう、ついたぞ。ここが忍耐力測定をする場所だ。」


 そこには小さな犬小屋みたいなものがぽつんとおいてあった。


「犬小屋…ですか?」


「ああ、そうだ。まずはここに入ってもらう。さあ、はいれ!」


「なんだか乗り気ですね。」


「まあ、楽しいからな。」


 それを本人の前で言うか?


「じゃ、じゃあ入りますよ。」


 足の方からかがんで入っていく。少しきつい。…気づくとNo.1765841お姉さんがいる。こちらを見て少しにやけてから、スマホを取り出す。その瞬間はなぜNo.1765841お姉さんがいるのかわからず戸惑っていて、写真を撮られたこと気づかなかった。


「え、なんでNo.1765841お姉さんがいるんですか?というか、なんですかそれは?写真撮りました?え、消しますよね?」


「いやぁ、武君がマゾヒストだったのは意外だったなぁ。確かに言われてみればそうかもしれないけど、わかりにくいタイプだねぇ。」


 盛大に恥ずかしい。彼女の見る目が怖い。死にたい。…死んでいるのだけど。


「それじゃあ本当の忍耐力測定機の所に行くか。」


「え、ここ本当の所じゃないんですか?」


「ええ、そうよ。私がNo.1765842受付の人に頼んでやってもらったの。ふう、楽しかった♡」


「一応弁解しておきますが、僕マゾヒストじゃないですからね…。」


「わかってるわよ。これからはいじらないから安心してね♡」


 絶対いじるやつだ…といっても次会う時はまた死んだ時くらいなのだが。


「それじゃあ、行くぞ。No.1765841、お前もついていくか?」


「行くけどあなた、武君には敬語で話しなさいって言ったわよね?」


「別に最初からこれだったから、いいだろ。こいつもそんなの気にしてなかったし。」


「まあ、武君マz…うんそれなら仕方ないね。」


 本当にマゾだと思われているらしい。大きなため息を聞こえるようにするが、スルーされる。


「じゃあ、こっちだ。」


 仕方なく言われるがままついていく。


「ここだ。」


 そこにあったのは…いや、何もなかった。


「何もないですけど、ここで忍耐力測定するんですか?」


「ああ、そうだ。ここにいるすべての人がその測定をすることになる。」


 すると、No.1765841お姉さん


「というか、もう始まってるわよね?」


「あ、ばれた?」


 僕の体感ではほとんど何も感じない。というか何も感じない。


「なんで私もやらなきゃいけないのよ!終わるまでここから出られないじゃない!」


「まあまあ、武を応援するんだよ。二人で。」


「なんで、私の許可も取らなかったの?言ってくれれば準備もできたのに!」


「そう怒るなって。シャワーもベットもあるから。」


「そういうことを言ってるんじゃないの!」


 とまあ、30分くらいはぶられてたところ少し気持ち悪くなってきた。感覚的には軽い熱程度だ。


「あの、二人ともこの部屋にいて苦痛は受けないんですか?」


「私たちは受けないわ。それより、トランプやりましょう。」


 僕の体調についてはガン無視。まだ気にする必要もないということだろうか。


「いいね、いいね。何やる?ババ抜きやる?」


 No.1765842受付の人も気にしてくれないようだ。


 一時間後…さらに気持ち悪くなってきた。


 三時間後…頭が割れそうなくらい痛い。


「大丈夫か?ちょっと横になっとけ。よくなるわけでもないけど。」


 そうなんだけどなぁ…つらい。


「あなた、一言多いわよ。武君、あと三時間くらいだから頑張ろうね。」


 嘘だろ。あと三時間とか地獄じゃないか。


 しかし、一時間経過すると頭が割れそうなくらい痛くなる苦痛は収まった。


「なんでそんなに元気なんだ?今、さっきより強めになってるはずなんだけど、不具合があるはずないしな?」


 と言いつつ出ることもできないので時間まで待ってそこを出る。


「やっぱり、壊れてたんですか?」


「いや、壊れてなかった。多分、苦痛に慣れたんだな。」


「え、え、そんなことできるの!?」


 最初に驚いたのは僕ではなく、No.1765841お姉さんだった。


「なんでそんなに驚いているんだ?」


「え、だってそんなこと普通の人にはできないでしょ!」


「こいつは脳が死んでるのに気力だけで生きてたんだぞ。」


「まあ、そうだけど…」


「僕は人間なのでしょうか…」


「大丈夫、大丈夫。ちゃんと人間だから。」


「そうですか。」


「切り替え早いな。…それじゃあNo.1765841、こいつを連れて行ってくれ。」


 え、どこ行くんだ?


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