【異世界に行った天才は向こうでも天才】
橘しんご〈タチバナシンゴ〉
第1章 主人公、転生までの話。
第1話 主人公、死ぬ。
「おう、
僕の名前は
「ああ、まあね。」
「いいなー。俺もお前みたいに頭良ければなー。お前、受験勉強してなかっただろ。」
「うん、まあめんどくさかったからね。」
模試の最初のテストがS判定だったので、特に勉強はしなかった。ただ、将来医者になるのが夢なので、そっちの方は平日に5時間ほど、土日に10時間ほど勉強していた。しかし、友達には一切勉強していないと言っている。医者になるためにずっと勉強しているなんて格好悪い。
「それで東京のめちゃ偏差値高い私立受かるとか、ずるいわー基本性能が違う。」
確かに基本性能は違うのだが、それを自慢すると、嫌われるのでいつも相手のいいところをほめることにしている。
「でも、
「何言ってんだよ。そういうこと言うからみんなから嫌われんだって。」
…嫌われている人もいるが、特に友達がいないわけではない…はずだ。
「友達はいるぞ。少なくとも太一は俺の友達だし。」
「ふーん、そうかな?」
太一の顔が曇る。
「え、なんだy…」
刺された。完全に油断していた。
「いやー、すっきりした。お前、前からうざいとおもってたんだよね。こんなあっけなく刺されるとか、まじワロタw」
悪気もなく、太一が言う。
「お、お前捕まっちまうぞ…いいのか?」
「別にもういいよ。俺ももうやることないし。」
「s…そんn…aこと、ないだr…ろ…ぐはっ…」
口から血が出てきて、
「はっはっは。しっかり、胃に刺さったみたいだね。いたそー。ダイジョウブデスカ?」
ここは、太一に反抗することなく自分の命を優先する。
「…k…きゅうきゅ…う…救急車を…よんで…よんでくれっ…」
必死で太一に言う。しかし、
「は、救急車なんて呼ぶわけないじゃんwゆっくり、ゆっくり、痛みを味わいながらのたれ死んでくんないかな?」
もう、話す気力すらない。体力の温存と意識を保つのに専念する。だんだんと目の前が暗くなっていく。太一が何か言っているが、よく聞き取れない。手先と足先からじわじわとしびれていく感覚。おなかの痛みはもうなくなっている。しびれているところの感覚がなくなるころには、かろうじて開いていた目が完全に閉じる。
(まだだっまだ眠ってはだめだっ!)
そう自分に言い聞かせながら意識を保っている。しかし、
(くそっ、もうだめなのか?)
その時、体力も気力も限界だった。そして…僕は死んだ。
「…はい、次の方。えっと、あなたは…殺人ですか、う~んずいぶん理不尽な理由で殺されましたね。」
ここは…たぶん天国(?)的な所の受付らしい。受付の人は結構お疲れのご様子。
「はい。結構頑張ったんですけど、最終的には死んじゃって…」
「うん…うわぁ、こんなに耐えてたんだ。あんた、すごいね。もしかしたら転生できるんじゃないか?」
「転生?」
ゲームとかでよくある1Lvからチート級に強くなれるあれか?
「うん、転生。まあ、くじ引きみたいなもんだよ。100億個の球の中に1つだけ、金色の球が入っているんだ。他は白なんだけど、ひとつだけ色が違うんだよ。で、それは運とかじゃなくて、生きていた時どれだけ人間離れしていたのかで決まるらしいんだ。」
「えっと、人間離れってことはめちゃめちゃ天才だったりとか、めちゃめちゃ強いとか?」
「記録によれば、大体はそういう人たちが転生してるみたい。まあ、そうじゃない運がいいだけの人もいるけど…あと、頭がいいとかだけじゃ転生先で前世の記憶をよみがえらせることは無理みたいだ。」
「じゃあ、前世の記憶を持ったまま転生することもできるということですか?」
「ああ、あんたみたいな精神力が人間離れしている奴は転生先でも記憶が残るらしいが、今までの記録では1人しか達成した人がいないみたいだ。」
「ぼく、いけますかね?」
「ああ、そうしてもらわないと困る。」
「ええと、どうしてですか?」
「受付の仕事は素質ある人間を見極めることだからさ!」
…つまり、ボーナスが出るってことなのかな?
「そうなんですか。じゃあそのくじ引いてもいいですか?」
「もちろん!是非受けてくれ!」
受付の人に案内してもらったのだが、あるのが遠いらしくそこまで行くのに結構な時間がかかった。しかし、長旅の疲れは次の瞬間吹き飛んだ。
「でかっ!」
そこには、大きな球が100億個詰まっているという球体があった。一個の星と言いても過言ではないくらいにでかい。受付の人によると人間と同じくらいの大きさの球が入っているらしい。
「じゃあ、はいこれ。」
と言われて渡されたのは小さな球体だった。小さいと言っても僕よりかは大きいのだが。
「これは?」
「これはあっちの球体と連動していて、こっちを混ぜるとあっちも動くんだ。」
「なるほど…。」
まじまじと小さいほうの球体を見る。特に変わったところはない。
「じゃあ、混ぜなくていいです。取り出してください。」
「え、いいのかい?」
「はい、見た限り小さいほうの球体にも、大きいほうの球体にも取り出すところないですよね?」
「まあ、確かにないね。」
「それなら、混ぜても混ぜなくても同じかなって。」
実際そう思ったのは本当なんだが、大きすぎて混ぜられないということでもある。
「そうか。じゃあ取り出すな。」
「おねがいします。」
ドォォォォォオン!!!!!
向こうの方で大きな音がなり、砂煙があがる。そこまで行くのに時間がかかりそうなくらい遠い。…しかし、そこにあったのは金色の球だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます