【1日目】「弱すぎて笑っちゃうね」
戦闘の疲れが出たのか、フィリアは僕の背中で眠っているみたいだ。
……格好を付けて能力を使ったはいいけど、全身が脱力感に見舞われる。
すぐに能力を解除し、学校から駅までフィリアを起こさないように歩いて行く。
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結局、黒の影はどうなったのだろう…街に居たはずの影は消えているけど街の人は無事なのかな。
街の心配をしていると、不安で暗い表情になるのが自分でも分かった。
そういえば、『神』は「倒した数によってレベルが上がって特典が得られるようになった」と言っていた。
僕たちは一体も倒せてないと思うけれど、特典は得られたのか…?
確か、神が言っていた言葉は…
「ステータス」
僕は小さな声でその言葉を呟いた。
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能 力:『模倣』Lv2/10 ★★★★☆
スタック:『火』『木』『操作』『』
マ ナ:40/120
ラ ン ク:Lv1
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小さな"風の破片"のようなものが集まり出し、目の前に薄いガラスのようなものが現れた。
記載している内容自体は少ないが、本当にゲームの世界のようなステータスが現れた。
夢を見ているようだ。僕はそこに書かれている内容を一つ一つ考察して行く。
能力。これはそのままだ『Lv2/10』というのは熟練度みたいなものだろうな、星印は良く分からないけど…レア度とかそういう類なのかな。
スタックという欄を見つけた僕は、幸せを拾ったような顔で笑みをこぼした。
4つの力を保管出来るのか。5つ目からは上書き制だろうな、慎重に能力を選びたい。
マナについては…もう既に1/3になっていた。『操作』を使ったからなのか戦闘で使いすぎたのかわからないけれど、最大値が120って…低いの?高いの?後でフィリアと比べてみよう。
そして最後の項目『ランク』
神が言っていたのはこの事だろう。意味は全くわからないがLv1、つまり最低ランクだ
黒い影は倒せていなかった。あれを倒せる人が居るのかが疑問だけど、この項目が段々と大切になって来る気がする。
僕は欠伸をしながら、ステータスの事、今日起こった事を振り返る。
―――力が足りない。今の僕は弱すぎて、女の子に守ってもらい1日を生きているだけ。
フィリアが家に不法侵入して来た時も、能力を掛けられていた。
今回の戦闘でも、マナを上手く使えず身体強化が行えなかった上に能力を使って倒れている始末。
強くなりたいな。その為には…
空はもう暗い。
朝、空を見た時は綺麗な青色で染まっていたが遠い過去のような気がするほど時間は過ぎていた。
あれから何も食べていない。帰り道にコンビニにでも寄ろうと思ったが、女の子を背負いながら店に入れるほど勇気は…あったらもっと上手く人生を生きてたよ。
カッコつけたいが、目立ちたくはない。男子高校生とはそういう生き物なのだ。
駅に着いた。僕は通学用の定期券があるが、フィリアの分はないので券売機で切符を1枚だけ購入する。
駅員さんに切符を渡し定期を見せる。事情を理解してくれたのか微笑みながら改札を通してくれる。
ガラガラと響く音を立てて此方側に近づいてくる。丁度電車が来たみたいだ。
激しくブレーキ音の軋む音がする。古いレーンだから仕方がないが耳に響く。
僕はフィリアを背負ったまま電車へ乗り込んだ。土曜の夕方だからか乗車している人は少ない。
疲れた。家に帰って早くご飯が食べたい。今日の晩御飯は何だろう。
ああ……そうだった……家族は居ないんだった。フィリア.....だけか。
僕は……何も考えないようにして下を向いた。
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家についたので、フィリアをソファーに寝かし、毛布を掛けてあげる。
こうして見るとハーフ故、美女に見える。
ただ、性格がハバネロとガッツ石松を足して2で割ったような凶暴さと根性があるから、うかつには近寄れない。触るな危険、フィリアが噛み付く。
……そういえば、フィリアと出会ったのは今朝の筈なのにもう心を許し合っているような感じがする。
何度も会った事があるかのような信頼関係。……気味が悪い、これからはもうちょっと距離を置こう。
僕は冷蔵庫に入っていた母が作ってくれていた"昨日食べるはずだった晩御飯"をレンジで温める。
何も考えない。考えてはいけない気がしてならないからだ。
机の上を拭き、箸や食器を並べていく。並べ終わったら椅子に座りテレビを付ける。
晩御飯は一人で食べても美味しくないのでフィリアを待つことにした。
テレビを付けると、想像していた通りのニュースがやっている。
黒い影は全世界中に現れていたらしく、誰も負傷者はいない。ただ何時間も永遠に、日が暮れて太陽が沈むまで立たされていただけのようだ。捕まったフィリアに何もなくて僕は安心する。
そして"それ"は急に現れる。
「はろー!こんばんは。楽しんでもらえた?今日のイベント」
出た。現れた。予想はしていたので驚かずに、機械音を聞き続ける。
「イージーモードだから殺傷能力は無いものにしてあげたよ!感謝してね!
今回の目的は、"君たちの強さを測る"為に生み出したものだ。つまり今日の『巨人』はスライムみたいなものだっぞ!そして結果は」
僕は吐きかけた息を飲む。
「弱すぎて笑っちゃうね。」
…僕は何も言えなかった。
「中には才能のある奴も居た。けれど、大半が本体すら見つけられないカスだ。
ハッキリ言う、間違い無く『魔王』が現れたらお前らは死ぬ。1秒も掛からないで全滅するだろう」
機械音だが、まるで"重み"のある声質のように淡々と話し続ける。
「私も鬼じゃない。『今は"魔王側"にも"人間側"にも公平でいたい』だから明日の進撃は休みにしてやる。
明日で今の3倍は強くなれ。ただし、強くなれなかった場合は…火曜日は来ないと思えよ」
神の威圧感が急に無くなる。
「ところでー!今日ステータス見たよね?君たちの能力の詳細やマナについて記載したよ!
それでも分からないなら『ヘルプ』って念じてみてね。じゃあ現在の人間の強さの"平均値"と"最高値"を発表しまーす。」
…これはかなり重要な情報だ。僕はすぐさま受話器の横にあったメモとペンを取る。
「1位は…マナが18万。巨人を倒した数は4000を越えてる。やるねぇー。
そして平均値はマナが100。倒した数は0.2だ。これからはもっと頑張ってよねー?
以上で、私からの発表は終わるね。あ、最後にアドバイスをあげるよ。
『力は想像以上に適当で繊細だよ』じゃあ、また明後日。」
たまげた。桁が違うどころか、住んでる世界が違う。確実に魔法使いだろう。
…僕は平均値、か。
今の3倍強くならないと死ぬ。
僕が何かを出来る訳じゃないけれど、せめてこれ以上は犠牲を出したくない。
危機感を感じると共にこれ以上フィリアに迷惑をかけられないと決心する。
温めていたご飯が冷めかかっている。そろそろフィリアにも起きてもらおう。
フィリアの体をゆすり、起こす。
今、テレビでやっていた説明をするが、夢の中で同じ話を聞いていたらしい。そういう仕組みなのか。
一緒に晩御飯を食べて、僕たちは今日を終えた。
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