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 どうして急に怒ったのか、その時は良く分からなかった。

 でも、こうして歳を重ねていくにつれて、あの頃の彼女はきっと、照れくさかったんだろうなと思う。男勝りなキャラじゃない、可愛いゴムで髪を結んだことが。だから、あんなふうに怒ったんだろう。

「似合ってないことないよ」

「え~? ほんとにぃ?」

「本当だって、似合ってる」

 怒らなくてもいいのに。あんなに似合っていたのだから。

「可愛いよ」

 彼女の目が真ん丸に見開かれる。それから変な表情になって僕から勢いよく距離を取った。また砂がシートに上がる。

「もう、気を付けてよね」

「あっあああああ」

「なに? 暑いの? なんか飲む?」

 僕はクーラーバックを開けた。中からひんやりとした心地よい空気が流れる。中から一本のスポーツドリンクを掴むと、僕はそれを彼女の赤い頬に押し当てた。

「ほら、熱中症になっちゃうから」

 彼女はまだ驚いている表情でそれを手にした。僕も一本取り出してキャップを回す。

 やっと言えた。あの時は言えなかったから。

 隣で彼女がぎこちなくドリンクを飲む。こんな彼女は初めてかもしれない。やっぱり彼女は昔から可愛い。

 きっと僕はあの頃からずっと、彼女が好きなのだろう。

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