熱中症にご注意を

カゲトモ

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「あっつー・・・」

 ジリジリと焦げてしまいそうなほど暑く照りつける太陽。アイボリーの砂浜はその光を受けて蜃気楼を揺らめかせている。

 首筋に、つぅっ、と汗が流れた。パラソルの下で特に何もせず、ボーっとしているだけなのに全身からドッと汗が噴き出る。

 これは熱中症に注意しないとなぁ。と思いながらクーラーボックスを見た。

「足りるかな?」

 後で海の家に買いに行かないといけないかも。と中身のペットボトルの本数を確認する。

「はぁっ」

 暑いだけでため息が出てしまう。どうして僕はこんな所へ来てしまったのだろう。いや、誘われたからなんだけども。

 僕は別段賑やかなグループに居るわけではないが、大学で仲良くなった子の一人に最近彼女が出来て、海に行きたがっているからお前も一緒に行こうぜ! と言われたからだ。

 そうして僕たちは男三名、女の子三名で図らずも海合コンのようになっていた。

 男の方はみんな地味で、髪も染めたことのない(いや、彼女の出来た子は最近少し明るい色になっていた)服にも特にこだわりのない普通の本当どこにでもいるような子。それなのに女の子はザ・今どきの女の子、って感じの、髪だってお化粧だって丁寧にしていて、女の子らしくておしゃれで可愛い、大学内でも上の方と言うか、目立っているタイプの子達だ。

「いや、一人は違うか・・・」

 ぼそり、と呟くと前方からこちらにズンズンと歩いてくる人影が目に入った。その人は棒の目の前に立つと、少し乱暴に隣に腰かけた。その際、レジャーシートに砂が入って来る。

「何荷物番になってんのよ」

「いや、別に」

 僕はそう答えながら手で入って来た砂を外へ出す。

「あんたも行ってこれば? あたしがここに居るから」

「いいよ、もともと暑いのはそんなに得意じゃないし」

 砂を出し終えてパンパン、と手の砂を叩く。

「はっ」

 彼女が鼻で笑った。

「ここに居たって暑いじゃん」

「・・・いーの。影の下はまだましだから」

「あっそ。じゃ、あたしは疲れたからちょっとここで休むわ」

 そう言って彼女はシートの上にゴロンと横になる。もちろん彼女が着ているのは水着だ。しかも黒いビキニ。

「・・・」

 僕はちらりと見てからまた海の方を見た。

 目のやり場に困る。いくら幼馴染だといっても、大学生女子だぞ。女の子のくせに男の前でそんな無防備な恰好をするな。こんなとこでもそんなことをしていると、いつもどんなことしているのか心配になる。女の子なんだからもっと自分を大事にしろ。

「なになに~」

 と、彼女の意地悪そうな声が聞こえた。僕は不覚にもビクリ、と肩を揺らしてしまう。

「何想像してんだよ~」

「してないし」

「え~してんだろ~おいおい~」

 起き上がった彼女はニヤニヤして(顔は見てないが絶対笑ってる)僕の肩にピタリと自分の肩をくっ付けた。

 やめろ近い。なにも想像してないって!

「あたしのセクシーなブラックビキニでとうとうあんたもやられたか~?」

「やられてないし。自意識過剰だし」

「おー、言ってくれるねぇ。泣き虫ちゃんのくせに」

「んっ!」

 昔からの彼女は僕を弄る時に呼ぶあだ名だ。いったいいつの話をしてんだ。

 ちょっとムッとして首を彼女の方へ向けると、その顔は目と鼻の先。近さに驚いて頬が微かに熱くなった。

「ち、違うし」

「何がよ」

「何かいつもとキャラが違うの付けてるから、珍しいなって思っただけ」

「・・・あぁ、これ」

 そう言って彼女が自分の頭を触る。

「貸してもらったんだよね、シュシュ」

 黒い水着には少し似合わないフリフリのピンク色のものだ。それは明らかに彼女のタイプとは違っていた。

「似合ってないでしょ、これ」

 彼女が言う。

 そこでふと思い出す。そう言えはあの時も、同じような事があった。


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