第10話
「!?」
「何、あの演出!?」
普通なら、SSRでも「虹色の光」が差し込むまでにとどまる、このガチャ演出の世界。暗転し、雷まで落ちるというのは、まるで、専用演出かのようだ。
まさか。
いや、あり得ない。
全員の意識が共鳴しているかのような祈りの意志。しかし。
「それしかあり得ない」という確信が、首筋に汗を醸し出す。
「……まさか……まさか、そんな……」
SR子は即座に新品のノートパソコンを取り出し、叩く。
SSRこそがこのゲームにおける最高レアリティ――だった。つい、昨日までは。
しかし更新されたニュースを見て、SR子は冷や汗を流す。
「……0・01%……この超低確率で生まれいずる……」
ピシャアン! ガラガラガラ!
雷鳴が轟き、広場の中心に直撃した。
もうもうと立ち込める煙。その中心部に、一人の女性が立っている。
傲岸不遜な瞳。雷撃をそのまま形にし、織り込んだような独特の羽織物。小柄ながら、圧倒的な存在感を放つその絶大なオーラ。
「お……お主が新入りか! ようこそ、この村へ!」
ナビゲーターがこの新たな仲間を迎え入れようと、圧倒される周囲を勇気づけるように努めて明るく接しようとする。
だが、
「頭が高い」
ピシャアン!
雷が、ナビゲーターを直撃した。
「あ……アアアアアアアアアアババババババババ!」
「な、ナビゲーター―――!」
「何てこと!? 骨まで見えてるわ! 古典的なアレになってるわ! ナビゲーターが……!」
「黙れ貴様ら」
直後、相手の眼がSSR子とN子を捉え、雷が二人の頭上に落ちた。
「「シャババババババーーーー!」」
ナビゲーターと同じ運命を辿り、二人は黒焦げになって地面に倒れ伏す。
「SSR子! N子! 何でダメージボイスまで被るんだよー!?」
「大丈夫だよ、その二人ギャグ補正入るから」
「何だよその信ら……!」
雷。
理由はただ一つ。やかましくしたから。
SR子とR子にも直撃。覚醒の宝玉(R以下)も当然のように巻き添えを喰らい、その身をパリン! と粉々にした。
戦慄が広場に広がる。あのやかましさ筆頭である家の者達が全滅――そのおぞましい事実が、彼女たちの口を固く閉ざした。そして力を示した暴君は、尊大な眼差しで周囲を見回す。
「跪け。畏れろ。無力を知れ。逆らうな。盲と化せ。考えるな。我に従え」
SR子のノートパソコンは無事だった。そこに映る画面の文字は、絶望を映し出している。
本日より、新レアリティ実装。
SSRの上を行く、究極のレアリティ、降臨――
「我はLR。レジェンドレアの、ゼウスであるぞ」
出現確率、10000分の1。
文字通りの究極の存在に、全員が襟を正し、背筋を伸ばした。
LR。SSRの上を行くこのレアリティの登場は、物議を醸しだした。かつての最高レアリティの上を行く能力、圧倒的に強力なスキル。実装された「ゼウス」、「天照大御神」、「アレキサンダー」、いずれもがまさに最強レベルであり、ゲームの環境もまた一変することになる。
そしてこのボックス村の秩序もまた、移り変わる。
絶大な力の持ち主が支配する、ディストピアへと。
20XX年。村は、ゼウスの雷に包まれたのだ。
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