《七月編》百合短編集
いろいろ
①エアーこんな七夕
ぶおぉぉーー。
起床からエアコンの音を表現しようとしたけど、ダメだあんまり上手くない。機械音ですらこの難易度なんだから、夏たる季節の雰囲気を描写しようだなんて、私には無理難題だろうな。
午前十一時というニートな時間に起きてしまい、まだ寝てたい悪魔の囁きと試験も近いからそろそろ勉強しなさいと言う天使の戯言がぶつかる。結局戯言に過ぎないから、勉強なんてしないんだけど。
深夜から点けっ放しのエアコンの冷気が徹夜明けの身体に染み渡る。不健康かなと自覚はしても、暑さで目覚めるよりは精神的に健全だろうと思う。善意が働いてタイマーモードにしたあの日の朝、排出するのは洪水だったから。もちろん汗の。
この街の夏は湿度が高い。気温と湿気の相乗効果で体感的には三倍くらいの暑さに感じる。でもそんな夏が嫌いじゃない。夏か冬か、って聞かれたら春秋と答えるし、虫が頻発するのは困るけど、嫌いじゃない。
純粋な日光の注ぐ中、街を歩くのはかなり好きだ。ビルが光る駅から商店街のアーケードを横切り、緑豊富な公園のフェンスに沿って帰宅する時の青春っぽさ。青空に照らし合わされて、必然と一歩一歩伸びる気持ち良さ。汗をシャツから飛来させたら、爽やかなアイスでも食べたりして。あ、私はニートとは言え、学校には通っているので、そこんとこよろしく。
今日は日曜日。中間考査真っ只中の休日だけど、怠惰な日中を過ごす。何だかんだ成績は何とかなるから、それより生産性の高いことをやりたい。何をしようかと考えて、そうだ友達は、と天才的な発想に至ったけど、天災的にもそんな人いなかった。ほら、暑さで友達全員溶けちゃった的な。まぁどっちにしろ試験期間だからふらふら遊んでいる奴はいないかな。
結局やることも見つからず、持て余した暇を昇華すべくツイッターを起動する。リアルでは友達ゼロ人の実績を持つ私でも、ネット上ではフォロワーを千人程従えている。ニートだから。ニート関係ないけど。単に、フォローのやり取りをし合っているだけだ。そんなつまらないアカウント。
無批判にハートマークのついた呟きを横に流し、意味もなくトレンド情報を目に入れる。その中の一つに、「七夕」という言葉が載っていた。
そうか、今日は七夕なのか。七夕と言うと、昔の彼女との記憶が
高校生になって別れた彼女。
今も隣りの家に住んでる親友。
何だか無性に、会いたくなった。
日曜日に外へ出るつもりはなかったけど、行きたくなった。
スマフォをベッドに投げて、私の織姫の場所まで。
あっちぃ。
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