起きたらーーが生えていた。
imi
第1話
「ぐえッ」
ベッドの上で寝ていたら、誰かにいきなり首を横向きにグリンっと倒されたように感じた。
「……?」
親か誰かが部屋に侵入ってきたのかと思って飛び起きるも、部屋の中を見回してもわたしの首を急に横に向かせた人はいない。
部屋の中にはわたしが一人でいるだけだった。
「そういえば、親がいるわけはないんだっけ」
昨日からこのアパートに一人暮らしなので家自体にだれかがいるわけがない。
ならば、だれが?
疑問に頭を傾けると、なんだか体に違和感があった。
「っと、なんか、頭が重い……?」
肩甲骨下まである髪の毛全てが顔に覆い被さっているのかと思ったけれど、視界良好で周りを見回せたのでそれはない。それは寝起きのわたしでも分かった。
「今日は高校の入学式だっていうのに……。風邪でもひいたのかな……?」
周りの音に耳をかたむけてみるが、耳鳴りはしない。
おなかを押さえて食欲があるかを確認してみるが、食欲はありそうである。
「熱でも、あるのかな?」
自分の額に手のひらを当てて体温の差を比べてみるが、手と額の温度は大差がない。どうやら、熱はないようだった。
だったら、この頭の重さはなんなのだろう。
汗をかいて張り付いていたわけではなかったが、顔に当たる髪の毛がなんだか鬱陶しくて前髪をかき上げようと額においた左手を上に上にと移動していく。
「……?」
なんだ、これ?
頭頂部に向けて手を滑らせようとしたら、わたしの手は頭頂部に至る前にあった、硬いなにかにぶつかった。
その硬いなにか。髪の毛の塊ではないなにかを、わたしはもう片方の手も使って確認してみる。
「…………」
この質感は鉄ではない。かといって、軟らかいわけではない。
表面はスベスベではなく、なにか浅い皺のようなものがあってボコボコしている。
手で長さを測ると、およそ二十センチメートルあるかないかくらい。
先端は鋭くはなく、指先のようにキレイな弧を描いている。
「えっと、これって……」
急に冷たいなにかがわたしの背筋を滑るような感覚。嫌な予感に自分の体温が冷たくなっていくのが分かった。
――あれ、これってもしかして……。
「わたしの頭になにか刺さってる!?」
急いでソレから手を離してベッドから跳び出し、出きる限りの速さでこの家唯一鏡がある洗面所に向かって駆ける。
途中、部屋のドアが開けっ放しでも気にしない。この家の主、わたしの身になにかあったかもしれないのだ。
大きな事をするときに小さい事はいちいち気にしていられないという方の、大事の前の小事というやつだ。
「……………………はい?」
鏡の前に立って自分の姿を確かめると、わたしの頭には疑問符が浮かんだ。
いや、正確には、頭にあったのは疑問符ではないし、浮かぶというより付いているというのが正しいのだけれど。
「えっと、これって、ツノ……だよね?」
ツノが生えていた。人間の額にツノが生えていた。わたしの頭にツノが生えていた。それも、ユニコーンのような立派なツノが生えていた。
「…………」
本当にわたしに生えているのかを確認するために、横向きになってみたり、下を向いて上目遣いで鏡の自分を見たりをしてみる。
しかし、髪から垂れ下がっているわけでもなく、糸やゴムやテープで頭にとめてあるわけでもない。
どこからどう見ても、自前のツノだった。
「なにこれえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
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