第四節・第二話
拝啓、前葉君へ
初めに、別れの言葉も言えない臆病な私をお許しください。
手紙一通しか残せない、薄情な私をお許しください。
もしかしたら、私の蒸発を、自罰的な前葉君は自分のせいだと思うかもしれません。
でも、あなたが責任を感じる必要はありません。
あなたはなにも悪くないのです。
一切の
だから、もう自分を痛めつけないでください。
私を恨み、軽蔑しても、どうかそれだけは信じてください――――。
今、これを書いているのは、時計によると深夜の三時七分です。
あなたは疲れたのか、ぐっすり眠っています。
この三日間、私のわがままに付き合わせてしまってごめんなさい。
突然、見知らぬ土地の廃校で暮らすことになって、困惑したと思います。
水道も電気もなにも通っていない場所を、生活できるよう整えるのは大変でしたね。
掃除に洗濯、二人で作った即席物干し竿や、苦労して運んだソファとテーブル……。
私たちの居場所を作る、その行為一つ一つに胸が躍りました。
楽しかったのです、本当に。
その一方で前葉君に、酷なことを語らせてしまいました。
辛い思いをさせてしまったと思います。
手酷い裏切りのように、あなたは感じたかもしれません。
ごめんなさい……。
でも、前葉君が自分のことを教えてくれたから、私は安心できました。
あなただったから、私は廃校の日々を笑って過ごせたのです。
最後まで、あなたに直接伝えることは叶わなかったですが……。
今、この手紙に私のすべてを記します。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます