太陽を見つめるとやがて僕は

野口マッハ剛(ごう)

第1話 どうして?

 僕が名前を捨てた。ヤンキーから文学の道を志した。まわりは先生にでもなってくれと言う。でも、本はもとより、小説をろくに読んだこともない。不安だらけのスタート。文学の学校に入学してみる。僕の国語力は中学校で1だ。どう考えても無茶苦茶だった。だから、文学学校の教材を一から読んでみる。18才の春、僕は小説家の卵だ。


 なぜか頭が悪い僕が先生から注目される。センスが良いとか、大事なのは心だ、など言われた。毎日、バイクを乗り回していた時の方が気が楽だった。でも、僕はがむしゃらに教材を読み尽くしていた。つまりは、基本というものがいつの間にか僕に身に付いていた。先生はこう言った。「貴方はやれば出来る」、と。


 僕はしばらくして、文学の道を諦める。どうしてかって? 自分の作品に対して羞恥心が生まれたからだ。早い話が、元々ヤンキーの僕が、いくらセンスがあったとしても、長続きをするわけがなかった。一年で一応の修了をした。


 僕は病院に運び込まれた。全身が痛い、バイクを乗り回していて事故に遭ってしまった。僕は全身に寒気を覚えた。出血がひどいのだろう。もう助からない? 僕はその時に思った。もしもこの事態から助かったのならば、もう一度だけ、文学を志しても良い、と。僕はドクターの顔をぼんやりと見つめた。さあ、頼んだぜ、僕にチャンスをくれよ。

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