短編その他諸々
蜂蜜 最中
時間停止能力の考察と対処法
翁は語る。
時間の停止は人が考えうる能力の中でも最高位の能力だと思われる。まず時間停止という能力を正攻法で叩くの出れば同じ土台に上がらねばならない。
停止する時間。凍り付く世界。時間停止能力者の最も恐ろしい所は時間を停止させることではなく停止した時間の中で自由に行動できることにある。誰もが凍り付く世界なら動ける人間が有利になるのは自明の理だ。
では、時間停止した世界は本当にすべてが止まっている世界なのか?
停止させた世界で停止するのは何も人だけじゃない。水、光、そして空気。すべてが凍り付いて然るべきだ。にも関わらず、時間停止能力者は自由に動けるし、生きていられる。これは停止を命じられているはずの空気が動いているということに他ならない。つまり時間停止能力者という生き物は時を止めるものとそうでないものが選べる、或いは止められないものがあると考えられる。時間停止能力者が水も空気も必要ない未知の怪物であったなら話は別だがその能力者が人間であった場合、攻略の糸口が見えてくる。
例えば、仮に科学的に倒すのであれば致死量のガスを空気に混入させておいたり、異能力や魔法で倒すのであれば自分の周囲を炎で喉が焼き付くほどの熱しておくことで対処することができるだろう。
最高位の能力が穴の無い完全無欠なものでないと証明された瞬間、男は舞い上がりそうになった。これで宿敵に勝つ算段が付いたと空を仰いだ。
旅立つ男の背中を眺めながら翁はふとある事を伝え損ねたのを思い出す。
「ああいう戦法は不意打ちに弱いんじゃがのう」
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