またね
しじみ。
プロローグ:俺と言う人間
現実なんかでは到底再現が出来ないような甘く幸せな世界、はたまた地獄のような居苦しい世界。たったの5時間と言う短い時間の中でそのどちらかの世界を僕は「夢」と呼んで冒険するのだ。
だが5時間もすればその世界は理不尽に叩き壊される。
「おーい、起きろー…起きろってば兄貴…」
面倒臭いという主張をこれでもかと押し付けて来るような気怠げな声で、俺を足蹴りに幸せな夢の続きを妨害しに来たのは俺の妹。
狂っている程過剰なブラコンでも無ければ、特別なモノを宿した妹なんかでもない。
もちろん魔法なんか使うはずのない普通の女子高生の妹だ。
中々起きようとしない俺に嫌気が指したのか「起きないと兄貴の黒歴史を友達ばにら撒くわよ?」と脅迫をかけてきた。
「それだけはご勘弁を…」と深々とした土下座を妹に繰り出した。我ながら、此処まで綺麗な土下座をする高校生は俺以外にいないだろう…妹なんかに。
「わかればいいのよー」そういって心なしか上機嫌で部屋を出ていった。
俺たち男には土下座をしてでも守りきらねばならない過去がある。それは知られてはいけない過去。
そう、「
あの時の俺は、闇により生まれし漆黒の魂を授かった堕天使だったのだ。
あの時の俺は誰も理解する事が出来ない神々の境地に居たのだ。だが、そのままではこの下界で生きて行くのは困難なものだ。
故に俺自らが愚民たる貴様らにベクトルを合わせて干渉させてやっていたのだ。
「クックック…有り難く思うのだな…」
今にでも左眼の封印を解こうとした時
「キモ、死ねやクソ兄貴。」そんな言葉が背中から冷徹な刄となり俺に何本も突き刺さる。よりによってこんな痛々しい独り言を妹なんかに聞かれてしまった。
穴があるなら其処に入ってセメントで埋めてもらいたいものだ。
冗談はさて置き、今日から俺は高校三年生になる。その為に渋々と登校準備をする。
この2年間の高校生活を過ごすなか、ラブコメみたく恋が芽生え成就するでもなく、ラッキースケベなんてピンク色の思い出なんてありゃしない、あったら速攻檻の中だ。
全国の大半の高校生が送るような、平穏で平凡なハイスクールライフをおくっていたのだ。故に目標さえも平凡なもの、目指すは卒業までに彼女を作る事。
転校生が来て俺に惚れてなんて浮かれた妄想をしながら学校へと足を運ぶのだった。
またね しじみ。 @shizimii-2525
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