星に手を伸ばして

琴野 音

プロローグ

 いつからだろう、夏が遠く感じるようになったのは。




 蝉の声はうるさくて嫌いだし。




 じっとりと汗ばむ感触も嫌いだ。




 だけど、俺はいつも夏を待っている。




 七夕の日。ただその一日だけを待っている。






 彼女が帰ってくる、たった一日だけのその日を。




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