第28話 ビゼンの過去

「拙者が御家再興のために旅を続けているのは存じておると思うが。」

「御取り潰しになったのは15年前の事なのだ。」



拙者の家は若年寄の家系で直参旗本の差配と聖域の守護代を任されておった。

聖域の守護代の要職にあるものは神刀「村雨丸」の担い手でもあったのだ。


20年前に起こった帝国の崩壊後も我々の国は魔族から侵攻されることは無かった。

まぁ、当然ではあるな。

武士が刀を捨てるという愚挙なんぞ考えられぬことよ。


旗本の差配や守護代は刀の技量が求められる。

拙者も子供のころから友と研鑽を積んだものよ。

あの頃は朝から晩まで刀のついての事ばかりだったな。


だがそんな日々は長く続かなかった。

帝国の崩壊から5年後、オーク共の手勢の援軍を付けたダゴン共が事もあろうか我々の聖域に侵攻してきたのじゃ。

ダゴン共はオークの援軍だけでなく大型魔獣も操り何人もの死者が出た。


「父上、魔獣討伐に拙者も加えてください。」

「ならぬ。お主はこの家を守る使命がある。」

「ですが・・・。」

「案ずるな。魔獣退治で大事なんぞ起らぬよ。」


その様な時、わが父上は家臣のビッチュウとダゴン共や大型魔獣討伐に乗り出したのじゃ。

ダゴン共の数が多い上、オーク殿の援軍もあった、その上大型魔獣じゃ。

その戦いは一昼夜続いたと言われておる。

多くの仲間たちが失われた。


神刀「村雨丸」の力を使い、ダゴンやオーク共を退け、ついには大型魔獣を倒すことが出来た。

だが父上は大型魔獣と相打ちになったそうだ。


その時、父上のは大型魔獣との相打ちの際、神刀「村雨丸」が行方知れずになってしまったのだ。


村雨丸の担い手が聖域守護代の証明であったその神刀を紛失してしまっては御家の一大事。

じゃが運の悪いことにその時の戦はあまりにも犠牲が多すぎた。


犠牲が多いいのは差配が悪いという事になり、旗本の差配の役職は没収。

「村雨丸」が紛失したことで聖域守護代の役職も没収。

仕舞いには全責任を取る形で若年寄の株を取り上げられ御家は断絶。

没落してしまったのじゃ。


じゃが母上は

「此度は殿を恨んではいけません」

「ですが、あまりの仕打ち。」

「此度はあまりにも犠牲が多すぎたのです。誰かが犠牲になるしかないのです。」

「しかし、このままでは我が家は・・・。」

「まだ希望はあります。村雨丸を探すのです。」

「村雨丸。」


某と母上、ビンゴは神刀を探すべく旅に出たのじゃ。

元帝国の周辺、湖の周辺の各地を回った。

しかし、旅に出て数年、一向に見つからぬ。


母上は元々よき家系の出でな長旅には耐えれなかったのだ。

旅先の疲れから寝込むようになり、ついには帰らぬ人になり申した。


だが、旅をして分かったことがある。

湖の各地を回ったのじゃが、村雨丸の情報が一つもない。

つまり神刀「村雨丸」はまだ外に出ておらぬと。

「村雨丸」はその特性がある以上、口に上らぬはずはないのじゃ。


拙者は御刀が聖域のどこかにあると見込んでいるのだよ。

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