余命

 家の扉につけられたボタンを押すと、ぴーんぽーんと音がした。そして暫くすると、おじいさんが扉を開けてくれた。


「やあ、どうしたんだい?」

「少しお話が。できれば、アイツの目につかなくて、声も届かないところでお願いしたいです」


 俺は、決めたんだ。


「なら、ついてきて。家の中で話そうか」




「そういえば、自己紹介がまだでしたね。俺の名前はソラ。アイツはノエルです。」

「ソラくんにノエルさん、だね。わざわざありがとう。でも、私に名前はないんだ、ごめんね。今まで通り勝手に呼んでくれればいいからね」

「わかりました。で、本題なんですけど……おじいさん。俺、長くてもあと3ヶ月しか生きられないんです。だから、暫くここにおいてくれませんか?」


 おじいさんは、困惑した笑みを浮かべた。


「唐突だね。別に構わないよ。それが、この搭の役割だからね。でも、それでいいのかい?」

「はい。それで、ここにノエルも一緒に住ませたいんです。俺は、ノエルと約束したから。だから、アイツを自由にさせてあげたいんです」


 おじいさんは少し考えてから、納得がいったようで、軽く頷いた。


「わかった、願いは聞いたよ。でも、明日まで待ってね」


 よかった。これで約束が果たせる。あとは、ここから下りるときにノエルに話をすればいいんだ。

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