日記

今日はとてもいい日だ。この塔に人が来たのは何年ぶりだろう。昔は、悲しむべきか、嬉しむべきか、判断に苦しむが、この塔に来る人はそれなりにいた。この塔に人がなぜ来なくなったのか、この塔の管理者として聞かなければ。


……とにかく、久しぶりのお客さんだ。紅茶とお菓子を用意して、精一杯もてなそう。




彼らに聞いたところ、この塔の役割が継承されていなかったらしい。

確かに、何かを語り継ぐことは大変だ。いつしか、正しい伝統や伝承は失われてしまう。だから、この塔の必要性は薄れてしまった。

覚悟はしていた。だが、私はこの塔の管理者。離れるわけにはいかない。

そういえば、彼らは何を思ってこの塔を上ったんだろう。




これから、どうしようか。この塔の管理と人を導くことが私の仕事。人を待つのが私の楽しみ。だが、一人で永遠にそれだけをするのは淋しい。

さて、彼女たちの願いを叶えられるように、少し準備をしておかなくては。


忘れられたものに力は宿らない。まだ、私に願いを叶えるだけの力があるかは分からないけれど、一方的な約束でも、叶えると言ったのだから、果たさなければ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る