覇王様、異世界へ参る
涼風小鳥
プロローグ 覇王様、目覚める
『
かつて一世を風靡したその世界は那由多に広がるデータの海の藻屑となっていた……筈だった。
「――ふむ」
データの海の中目覚めたのは、かつてELYSIONにおいて最強と謳われたキャラクター。
名をオデュッセウス、通称『覇王様』と呼ばれた存在である。
正確には、数多のプレイヤー達、あるいは外部の者やELYSION運営者達の思考と言う名のデータから生み出されたかくあれと言う共同幻想である。
勿論、覇王様にはそんな事はわかりきって居たが、最強であり傲岸不遜であり、強き者であると言う概念の覇王様には一切問題が無い。
むしろかくあれと言う事に対し、それだけ思う者がいるのは当たり前であると誇らしい。
「しかし、あの輝かしき日々より幾歳の月日が経ったのか……再興はならず、か」
幾ら最強の存在だろうと不可能があると知る覇王様は孤独に、かつての日々を想う。
目の前に流れて来たテキストデータが無ければ、そのまま覇王様と言えどその存在意義を失って居たのだろうが、運命のイタズラによりその共同幻想は世に解き放たれたのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
世間では覇王様の事等忘れ去られ、新しいゲームが持て囃されていた頃、全世界的に考えつくだけのあらゆるデータ障害が発生した。
発生から数分でデータ障害は収まった物の、あらゆる箇所から様々なデータが消失した。
消失したデータの存在した場所に残された一文により、世間は『ELYSION』を思い出し、覇王様を思い出す事となった。
その一文とはこうである。
『かつて
共同幻想として覇王様が生まれてから三年の月日が経った日、覇王様は新天地へとその覇道を進める旅を始めたのだ。
元凶は誰も知る由もないが、覇王様が生まれた日に見たテキストデータであり、誰かが手慰みに書いた未完結の小説、ELYSIONの覇王様が主役として書かれた作品――『覇王様、異世界へ参る』であった。
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