宇曽川 嘘のショートショート集
宇曽川 嘘
海辺の過負荷
ある日の海辺、少女が眩しそうに目を細めて歩いていた。
突き刺さるような日差し、突き抜けるような空、劈くような蝉の声。
誰もが認める夏の要素が、その海辺にあった。
彼女はにこりともせず、ただ足を進める。
彼女の周りは、夏が来たとばかりに浮かれている。お祭り前の子供のように。
まるで一つの宗教のように、夏は楽しむものだと信じている。
彼女はさらに歩みを進め、海を目指す。
海の見えるこの街で、夏を教えてくれるのは、この海だ。
もう何年もこの街で夏を迎え、感覚でそうだと知っていた。
海が青く、広くなると、この街に夏が来る。海の波が夏を運んで来るのだ。
彼女は海を見渡せる高台にたどり着き、ひとり海に向けて叫んだ。
「頼んでもないのに勝手に来るな!!!」
海辺の過負荷。カレンダーの「7月」という文字が、彼女に重くのしかかっていた。
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