鉛の雨

福王寺

第一章 ゆず

 小さい頃、雨降りの日が大嫌いだった。

 髪はうまくまとまらないし、お気に入りだった真っ赤のスニーカーが汚れちゃうから。

 だから雨降りの日はすごく憂鬱だった。

 仮病で休みたいけど、家にいるのも嫌で。

 今も雨は好きじゃない。お気に入りの真っ赤なスニーカーはもうないけど。

 でも嫌い。大嫌い。

 一年前の今日も雨だったっけ。だからあんまり外に出たくなかったけど、それでも頑張って出たんだっけ。

 でも。


 あの日、あたしはもっと雨降りが嫌いになった。

 それまでと違って、もっと激しく。

 今日も雨が降ってきた。

 天気予報では降水確率ゼロパーセントって言ってたのに。

 すごく嫌な気分。

 でも、もういいんだ。もう、関係ないんだ。

 今日のあたしはあの人がついてるから。

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