妹をプロデュースして、アイドルにしたいと思う

@iberico

1章 アイドルとプロデューサー

第1話 出会い

ある春の昼下がり、暖かい春の日差しの中、教室で静かな寝息をたてる少女がいた。机に突っ伏した彼女の髪は、太陽の光を柔らかく反射し、顔には天使のような笑みを浮かべている。


「ヒナちゃーん、もう6限目終わってるよー」

「ふぁぁ? あ、ありがとう、ふわぁ」


クラスメートに起こされる少女。

これがうちの妹、ヒナの日常だ。

ゆっくりとした手つきで荷物を片付け、美術室へ向かう。いつもの通りの放課後だ。


廊下を歩いているヒナ。そのとき、妹の耳がピクッっと動く。妹は眠そうに目を擦る。音の主は、屋上だ。

重たい足を、階段へ向ける。


屋上のドアを開けると、そこは、まるで森の中に迷い込んだように錯覚させる、そんな空間だった。

視覚は、歌っている少女をとらえたが、聴覚は、叫んでいた。女神の両手に包み込まれたような暖かさ、大地の咆哮のような力強さ、小鳥のさえずりのような可愛らしさ。それらがひとつにまとまって、彼女の聴覚を攻撃する。妹は、そこを動くことができなかった。


「すごい! 歌、すごくうまい!」

「ありがとう」

妹に気づいていなかった様子の少女、不意打ちを受けて、驚いている。

「私、2年のヒナ。あなた、歌手か何かなの?」

すぐに詮索するのは、妹の悪い癖だ。

「私は、2年の美優。歌手じゃない」

ヒナの方を向き、息を吸い、言う。



「私は、アイドルになるの」

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