第22話

 俺たちは再度城に向かった。誰とも合わずに王座までたどり着いてしまった


 城の中にも誰もいないとか、どうなってんだよ、人望なさすぎだろ 


 扉を開ける、自称王と目があった。足を組み、どっしりと自信満々に座っている


 少し考えるくらいの時間が過ぎたと思ったら、自称王が走ってくる。腕を振り上げ太もも高く上げ見事な全力疾走だ


「すいま――」


 走り幅跳びした


「せんでしたー!」


 ズサっと音がして自称王が土下座の体制をとった、見事なジャンピング土下座だった


「……えっと、縛っていいかな?」


「う、うむ」


 まったく抵抗などみせず、おとなしく両手を差し出してきた


 なんだろう、ちょっと気まずい


 俺は自称王を縛った、手首と足首。もう動けないだろう、これで安全だ。普通に座っているが最初にあった威厳らしいものは見る影もない


「じゃ、次、自己紹介して」


「私は元幹部、絶対防御のファンタだ」


 素直だなこいつ


「じゃ、次、こんなことした目的は?」


「それは言えん」


 ふむ、よし拷問しよう、女騎士を捕まえたらすることは? 拷問でしょ! 目的なんてドラゴンにそそのかされたんだろ? こいつも色黒みたいだけど俺は黒ギャルとか好きだよ


「拷問しますね」


「ふ、絶対防御の私に拷問など効かんわ。絶対にくっころなど言わん」


 ファンタは鼻で笑ったあと、好きにしていいぞと言わんばかりに堂々としている、縛られているのにだ


 なんだ? エロい事していいのか? 


 俺はまず靴を脱がせた


「なんですか? 指を切り落とすんですか? 拷問ならまかせてください」


「ちょっと可哀想じゃない?」


 ルナはウキウキで拷問をやりたそうに指の関節を鳴らしていたが


 俺は拷問なんて見たくない。サンは優しい、天使だ


「お前らは黙って見ててくれ」


 こいつらに邪魔されると俺の気持ちが萎えてしまう


 サンとルナが離れるのを待つと、俺はまずファンタの足の裏をなめた


「ひゃう……なにをしているんだお前は! 変態か、変態なのか!? こんなに綺麗な女騎士が縛っておいてなにをするんだ! 痛いことをする、それが拷問だろうが! 私は絶対に屈しない、さぁ拷問をしてみろ!」


「あ、これは気持ち悪いですね、城の前ではカッコイイことを言っていたのが嘘のようですね」


「!? ルナ! 何か言われたの、教えなさいよ!」


 なんだろう、俺の世界で足の裏を舐めるのは拷問として常識中の常識だぞ?


 俺は会話を無視し、次は脇の下をなめた


「ひゃ! お前さっきからなんだ! しっかりしろ、やめてくれ、絶対に屈指はしないが、舐めるのはやめろ!」


 ファンタの顔は赤くなっている


 効いてるじゃん。さすが日本だ、変態の国をなめるなよ!


 俺は脇をなめつつ、片方の手でもう片方のわきをくすぐった


「ちょっと待て! わ、わかったすべてはな――」


 俺はファンタの口を手で塞いだ


 早すぎるだろもっとねばれよ!


 俺は口を塞ぎ、へそを舐めながら脇をくすぐった


「んんん、むぐぅむむむ」


 ファンタが暴れだした


 サンとルナにも協力を頼みたいがおそらく無理だろう


 正直物足りない、もっとエッチなことしたい! しかしこれ以上やると勇者の名に傷が付きそうな気がする


「話す気になりましたか?」


 俺はファンタを解放してやった


「ぷはっ、話すと言っただろうが! なんだこの変態は! お前らはこんなやつと一緒に行動しているのかどうかしているぞ!」


「大きな口ですね、俺の仲間がいたらいろいろ突っ込まれてると思いますよ、俺はまだマシなほうです。とまぁ俺らがあなたの意見を聞いても意味ないんで、アルのところでよろしく」


「お前はなんなんだ!」


 ファンタがギャーギャー騒いでいるが、仲間のおかげで対応に慣れた気がする


 文句を言うファンタを引きずってアルのところに行った


 サンとルナもきっと今の拷問は必要なものだと思っているはずだ、俺は悪くない!




「ご苦労である、しかしこんなに早く解決してくるとは驚いたのである」


 ……俺なんかしたっけ? いや、でも疲れたな。何をしたんだろうか


「まぁいいか。じゃ、帰るわ」


「何を言っているのだ? 魔王の国はここだろう」


 アルは意味不明だな、これがゲーム脳か。初めてこんなこと思ったが、ゲームの悪口は許せんな! そもそもゲーム脳ってなんだよこの言葉作ったやつは最低だ、馬鹿はゲームしててもしてなくても馬鹿なんだよ! ふぅ。よくわからなかったから質問してみる


「お前が何を言っているんだ?」


「今日からお前が魔王だぞ」


「……ふぁ!?」


 俺は魔王になった


 もしかして魔王とは寝ゲロで死ぬやつがなる職業なのかもしれない




 アルに連れられて城に向かう途中、どこからか町の人が現れてきて崇められた


 城について王座に座らされる、またどこからか家臣だろう人たちが現れて跪き、魔王万歳とか言っていた


 この国は結構やばい宗教団体なのかもしれない、てかほんとどっから出てきたんだよゴキブリか?


 その後、俺は用意された部屋に案内され、ずっとこたつに寝転びゲームをしている


「入ってもいいであるか?」


 ドアの外からアルの声が聞こえた


「ん~」


 アルがやってきた


「実はの、我が国の秘宝である、人を操る魔術が昔に盗まれての、魔王様ならば探してくれると思っているのであるが」


「んなもん門番してたドラゴンが犯人だろ、拷問でもして口を割らせろ」


「そうなのだが、なかなか認めんし、持ってもいないようなのだ」


 そりゃずっと自分でもってないだろ。俺だったら隠すね、森の中の土に埋める……見つかるわけねぇじゃん。無理無理


「……そんなことより魔王とかどうすんの? 俺何もできる気しないよ?」


「それは大丈夫なのである、魔王様を案内したやつがすべてやってくれるのである、おかざりでいいのである。むろん我も働かないのである」


 アルはこたつの中に潜り込んできた、足が当たる、幼女と足が当たる。俺の息子が大きくなった


 そうか! なにか物足りないと思ったらさっき大きくならなかったんだ!


 俺たちはゲームをして過ごした


 こんな生活もいいかもしれない、むしろこの生活がいい、この国は少し肌寒いがそれがまたこたつの良さを引き出していると思う。たまに魔王としてリアル内政ゲームでもして過ごそう


 俺は幼女と一日、安らかに過ごした




 そして次の日、この国のギルドがどうなっているか気になり立ち寄ってみた。


 国があんなになっていたのにこの国の冒険者は何もしなかったのだろうか?


 ギルドの掲示板にはパーティを募集する張り紙があったので一つをじっくり見てみる


 ふむふむ、『マジックユーザーとシーフのアットホームなパーティです。誰でも歓迎』か


 その張り紙を見ていると後ろから肩に手を置かれ、話しかけられた


「こんにちは、その募集をしているのは俺たちなんだ。よかったら俺たちとパーティを組まないか?」


 振り返ると男たちが並んで立っていた。話しかけてきた男はヒマワリと似た格好を、おそらくこちらがシーフだろう。もう一人は短パンにTシャツを着ている、デブだが魔法に体格は関係ないだろう、こっちがマジックユーザーのはずだ


「あ、いえ。この国の冒険者がどんな方たちか気になっただけですので」


 パーティに入る気はない、なんで仲間がいるのに新しいパーティなんか……あれ? ダメ猫よりこっちの人の方がシーフとして仲間に相応しいのでは? マジックユーザーの仲間もいないのでは? そもそもシーフとマジックユーザーがどんなスキルや魔法を使えるか俺は知らないしな


「そうか、なら仕方ないな。募集に興味があったのかもしれないと思ったのだが……。また機会があったらよろしくな」


 踵を返し、立ち去ろうとする男を俺は呼び止めた


「すみません! やはり話を聞きたいのですが、よろしいでしょうか?」


 男たちはこちらに向き直るとどこか得意げな顔で自己紹介をはじめた


「はっはっは、やはり俺達のパーティに興味があったか! ならば教えてやろう、俺はシーフ! 主な役割は夜に金持ちの家に忍び込み、バレない程度の金と下着を盗みだす!」


 パンツを掲げながら胸を張っている


「ぼぼぼ、僕はマジックユーザー! 三十歳になったら名乗れるようになった! 夢は賢者!」


 ガッツポーズをしている、意気込みが伝わってきた


 …………ただのコソ泥と童貞じゃねーか! この国の住人は終わってる!


 俺は二人の自己紹介が終わるのを見届け、無言で城に帰った。そしてこたつに入りゲームだけをして一週間を終えた



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