運とこの奇跡の魔法パルプンテ

幼女

第1話

ハゲたジジイが目の前で浮いていた


 !? 自殺か!? いやいやいや落ち着け……落ち着いて考えるんだ…………落ち着けるわけねぇだろ! 救急車呼ばなきゃ、いやその前にロープをはずさなきゃ!


 俺は急いでジジイの所に走り寄ろうとした


 すぐにロープをはずさないと、ロープを……あれ、ロープもなければ椅子もないぞ。……こいつなんにもないとこで浮いてやがる!


 ジジイと目があった、目とかピクピクさせてるからたぶん生きてる。顔芸でもしているのだろうか


 なんだよ、自殺じゃないのか、よかった。……なんだこいつ、そもそもここどこだよ、…………夢だな。


 俺は夢を夢と理解できたときにやることは決めている、中学の頃に好きだった子とエロいことをする!


「わしは神じゃ、ここは世界の狭間、お主は死んだのじゃよ、覚えておらんかの? ゲロで喉をつまらせたんじゃ。……いやそんなことはどうでもいいじゃろう。これから異世界に行かせてやる、お主はそれを望んでいるじゃろう? もちろん能力もさずけてやろう」


 意味がわからず一瞬何も考えられなかった


 俺が死んだ? お前なんで夢の中で勝手に話してんだよ、俺の都合のいいように動けよ


 ジジイを消してみようとするが消えない、俺の夢の中なら消せるはずだ


「……あの、もしかしてここ、現実ですか?」


「夢ではないぞ? 早く能力を選んでほしいのじゃが」


 ほんとに神なのかもしれない。ラノベみたいな感じか? じゃあ俺は死んだのか


 死んだことへの後悔や未練はなかった、それよりもゲームや漫画、小説などの世界に行ってみたいと俺は思っていた


 マジで異世界とかあるんだ神様もいるんだ、……女神だせよジジイ。いやそんなことよりも能力かぁ、なににしよう……風を操る能力とかかっこいいな、でもやっぱりハーレム金持ちウハウハとかでもいいなぁ。能力ってひとつしか選べないのかな?


「能力って選べるん――」


「運でいいじゃろ、では行くのじゃ」




 俺の視界は一瞬暗くなると夜の森にいた。傾斜のある土の大地に草の茂み、背の高い木々が辺りを覆い、木の葉の隙間から月明かりが照らしていた


 明晰夢? 


 俺は今起きたことを思い出し立っていた、思考はクリアだ、とても夢とは思えない。


 マジで異世界に来たのか? たぶん夢じゃないと思うが。しかしなんで森の中なんだよ、町の中に飛ばしてくれても良かったんじゃないか? ……やばい、異世界に来れたとかなんだかワクワクしてきたぞ


「これから胸躍る俺の異世界生活が始まるんだ!」


 草の茂みがガサガサ音を立てて揺れた


「ひぃ、お、オバケとかじゃないよな?」


 夜の森は怖かった


 異世界だ、魔物とかいきなり出てきて襲われてもう終わりとか嫌だ! でも気になっちゃう 


 茂みから聞こえるた音は静かになった。俺は意を決して茂みに近づいてみることにする。


 頼む、頼むからいきなり襲うとかは勘弁してくれ。運って能力もらえたんだろ? 大丈夫、きっと大丈夫、今だに飛びかかってこないんだ、魔物じゃないに決まってる


 俺は自分に言い聞かせた


 茂みをかき分けてみると……ドラゴンの子供がいた、小さい。抱き抱えられるくらいの大きさで、クリクリとした目や愛らしいフォルムをした媚びているような可愛さがあった。


 ドラゴンだ! ……異世界ならドラゴンだっているか、ほんとに異世界に来れたっぽいな。いきなりドラゴンとか……小さいから良かったけど


「ほーら、おいでぇ」


 優しい笑顔を作りながら左手を差し出し、近づいてみる


 あ、でも左手だけ汗をかいている気がするな。右手にしよう。こいつをなつかせてペットにするんだ


「ガルァ」


 いきなりドラゴンが噛み付こうとしてきた


「うああああああああああああああ」


 あっぶねぇ! もう少し手を出していたらなくなってたぞ!


 興奮している間にボンッと音がし、ドラゴンの体が煙に包まれ、少女が姿を現した。十四歳くらいだろうか、赤い髪に赤い目、ワンピースを着ている。すごく可愛い、今まで見たこともないような可愛さだった。でも胸はなかった。


 あ、この子ドストライクですわ。 異世界すげぇ、芸能人なんて目じゃない完成度だな


「なんなのよ! この変態!」


「………」


 え?


 少女は俺を指さしながら罵倒してきた、怒っているようだ、睨みながら俺の目をまっすぐにみてくる


「なによ! なんとか言いなさいよ! いきなり私に触ろうとしてきて。はっ! まさか誘拐するつもりなの!? この変態! 誘拐されるなんて死んでも嫌! ぶっ殺してやるわ!」


 少女がファイティングポーズをとった


 この状況でペットにしようとしたなんて口が裂けても言えない


「ち、違うよ? ちょっと可愛いドラゴンがいたから触ってみたかっただけで」


「やっぱり変態じゃない!」


 あれ、言葉をミスったか!? このままでは変態になってしまう、それはマズイ


 俺は真面目な顔をして自己紹介から始めてみることにした。


「ごめんね、そんなつもりはないんだ。俺の名前はクス、気がついたらここにいたんだ」


「……なにあんた、ヤバイ奴?」


 少女はファイティングポーズをやめたが両手をグーにして顔の前に持っていった、怯えたような目をして俺から少し視線をはずしている。体もフルフルと震えているように見える


 ヤバイ誤解してる! これ通報とかされるやつだ! 


「違うんだよ! 本当なんだ、もしよかったらここがどこか教えてくれない?」


 俺は悲しそうな顔を作り、誠心誠意っぽい態度をとってみた。両手をあげて降参しているポーズだ


 少女はきっと、悪い事をしたような気がして話だけでも聞いてくれるに違いない


「本当にわからないの? ……ここはフギっていう国よ、ちなみに私はドラゴンのサンよ」


「なるほど、わからん」


「ドラゴンのことは知ってるわよね?」


「ごめん、わかんない……」


 でも君が可愛いことはわかった、そして疑いもはれたのか? 自己紹介もしてくれた、ついでに身長体重スリーサイズも聞きたい


「そう、ドラゴンはすごく強いわ。他の種族を倒している所を何度も見たわ…………私も……人を殺せって言われてるの……」


 怖っ! じゃあ俺ここで死ぬの? せっかく異世界に来れたのに? それは困る、いざとなったら即効で逃げよう、でもドラゴンだろ? 追いかけてきたら逃げ切れる自信がない


 サンはうつむき両手でスカートの端をつかんでいる、なんだか悲しそうだ


 ん? 大丈夫そう、か?


「じゃ、じゃあ君は、俺を殺すの?」


「私ね、実はよくわからないの。おいしいものをたべてただ幸せに暮らしたいってずっと考えてたの。それでね、逃げてきたの。あんたに言ってもしょうがないけど……」


 サンは目を細めると、どこか遠くを見ていた


 よかった、殺されないんだ。……なんか重そうな話だな。こーゆーのってちょっといい話風に言ったらコロッといけるんじゃないか?


「じゃあそうしたらいい、生きたいように生きよう」


 ニートだったけどなんとなくでも生きてこれたし。いけると思うけどな。ちょっといい感じに言ったし心に届いたりしないかなぁ、ここ異世界だし、運とかでなんとかならないかな神様


「え? いいのかな?」


 小首をかしげながらキョトンとしている 


 よっしゃいけそう! さすが俺氏! きっと感動しているはずだ、このまま押し通そう、そしてあわよくばお近づきになろう


「いいに決まっているじゃないか、さぁ俺と一緒に冒険しようじゃないかサン!」


 手を差し伸べてみる、サンは俯いた


 なんだ? 悩んでるのか?


「わかったわ、でもその前に」


 サンがいきなり俺の腹を殴った


「さっき避けられたから! でもまぁ生きたいように生きるってちょっとカッコイイじゃない!」


「……ちょっと、きもちぃ」


 言葉が勝手に出てしまった


 なんだろうこれ、可愛い子に殴られるのはご褒美って聞いたことがある、これがその感覚なのだろうか、ちょっと息子が元気になった気がする 


「やっぱりあんた変態ね!」


 サンはその辺に生えている草をちぎっては、なぜか口に押し込んでくる


「やめて!? 冒険行くんだよね!?」


「そうよ? その前に薬草で回復してもらおうと思ったの」


 あら優しい、でもこれ薬草なのか? どうみても雑草なんだが、回復してる気もしないし。サンはアホの子なのかもしれない。…………一緒に冒険することになったんだし、ここに来る前に起こったことでも説明しとくか


「俺、異世界から来たんだ」


「そうなの、たまに聞くわね」


「え?」


「なに驚いてんの? これでも私は立派なドラゴンなのよ? 人間より長く生きてるし、そーゆー話も聞くわよ」


 だからあっさり誤解が解けたのか? てか他にも異世界から来る人っているんだ、でもそんなことよりも気になることができた


「何歳なんだ?」


「百歳だけど?」


「合法じゃないですか! これで問題ないよね!」


 サンが拳で顔面を殴ってきた。が、少しバランスを崩した程度で踏みとどまった。


「なに!? エッチなことする気なの!? この変態はなんで死なないのよ!? ドラゴンのパンチで死なない人間なんて初めて見たわよ!?」


「ありがとうございます!」


 褒められちゃったよ


 お礼にイケメンスマイルをサンに向かい飛ばした


「ひぃ、ばっちいもの触っちゃった!」


 サンが目元に涙を浮かべ手をブンブン振っている


 ひどいなぁ、照れ隠しかな? おっとそろそろ説明とかしないとな


「……そういえば、この世界に来る前なんだが、神様に能力もらったぞ」


「あんたそれすごいじゃない! 聞いた話だけど異世界人は特別な能力ですごいことをした人が多いらしいわよ! どんな能力なの!?」


 目が輝いている、異世界からきたやつなんてそりゃ珍しいだろうな、俺は格好つけて言ってみることにした


 木にもたれ掛かりながら髪をかき分けてキメ顔で言う


「運がよくなるらしい」


「なによそれ……プークスクス、プクス、プクススス」


 腹を抱えてめっちゃ笑われてる


「馬鹿にしすぎだろ?」


「あんたそれ絶対外れよね? カッコ悪ーい!」


「でもたぶんお前のパンチで死なないのってそれじゃね?」


「……なんか当たり損ねた気がしたのよね、いやでも……」


 サンが顎に手を持っていき、なにやらブツブツ考え出していた


 もしかして運の能力ってなんでも影響して強いんじゃないのかな?


 この世界のことをいろいろ聞き、俺たちは町に向かうことにした。どうやら森を抜け、草原を抜けた先にここの国の城や町があるそうだ


 


 サンについていったらあっさり森を抜けられた、特に魔物に襲われることもなく草原に出た


 草原は芝生のようで所々に小石や土が見えるが月明かりだけでも十分に進めそうだ、遠くに町の明かりだろうものが見える


「じゃ、行くか」


 月を見ながら颯爽と平原を歩いていると急に空から俺に向かって氷が降ってきた。上を見たからか石に躓いてコケそうになり偶然それを避けた。たたらを踏み氷が飛んできた方を見ると青色の小さいドラゴンが目に入る、俺に急降下し体当りしてきた。


「ぐほっ」


 痛くはない。が、なぜだろう少し気持ちいい


 俺は仰向けの体制になり、青いドラゴンは俺の上に乗っている


 これはピンチでは? このドラゴンが俺のことを殺すと言ってきてもおかしくはない、しかし身動きが取れない逃げ出すこともできない、さよなら俺の異世界


 青色のドラゴンはボンッという音とともに少女の姿になった。俺の事を見下ろしている


 ドラゴンは人にもドラゴンにも変身することができるとサンから聞いている。基本的には人の姿で生活しているが狩りをする時、移動するときはドラゴンの方が便利らしい


 ドラゴンっていうより、ドラゴンになれる人なんじゃないか? そんなことよりどうせ逃げられないならパンツを覗きたい!


 俺のもぞもぞとしている姿は少女には見えていないだろう、少女は今サンの方を見ている


 少女はサンと同じくらいの年だろうか。青色の髪だった、この子もワンピースを着ていた、そして胸がそこそこある。


 この子も可愛いな、異世界ヒャッホー、この世界の人は容姿レベルが高いんじゃないか? …………生ぎだい! この世界でいぎだい


「なんですかこのゴミは、しぶといですね」


「ルナ! なんでこんなところにいるのよ!」


 ルナと呼ばれた少女はいきなり罵倒してきた、しかもゴミ呼ばわりだ


 もしかしてこの世界の挨拶なのではないだろうか


 サンはルナがいることに驚いているようだが、その前に俺をゴミといったことに驚いて欲しい、驚いてないんだきっと挨拶だ


 ルナと呼ばれた少女はサンに駆け寄った


「探しましたよサン、家出なんてやめて早く帰ってきてください、寂しいです」


 ショボーンという効果音が聞こえてきそうな寂しそうな顔をしながらサンに抱きついている


「帰らないわ! 私はドラゴンのお勤めが面倒くさいの! このクスと冒険するの!」


 面倒なだけだったのか?


 サンはルナに抱きつかれながらも平然と答えている


「ではこのクズを殺したら、私と二人で冒険しますか?」


 ん? また俺の命が危ない! てかクズって言った! いやいやいやそんなことよりどうしたら俺の命は助かる!?


 俺は自分がいかに役に立つかを必死に考えた、生き残るには自分がいかに有用か認めてもらわなくては!


「少女の二人旅は危ないよ? 大人がいた方がいいだろ? ほら誘拐とかさ、うへへ」


「なんですかこのゴミやばくないですか? 絶対殺したほうがいいですよ」


 ルナはゴミでも見るような冷ややかな目で俺をみている


 え? 引かれたか? 俺でも愛想笑いくらいできるはずなんだが。


「いやいやいやいや待って! 殺すとか言わないで! そうだそうだよ! 俺異世界人なんだ神様って言うジジイから能力貰ったんだ! 見てろよ役に立つぞ!」


 どうやって使うんだろうこの能力……


「え? ひゃー!」


 サンの叫び声が聞こえ、サンとルナのスカートが風にまくり上げられパンツを晒した、


 おほっ、やっぱり運がいいですなぁ。サンはクマさんパンツ、ルナは縞パンか、グッジョブ


 サンは顔を赤くしなにやら体が震えているようだった。ルナはジト目で俺を見ている


 なぜだろう能力が強すぎたのだろうか。


「さいてー!」


「死ねゴミクズ」


 俺はまた罵倒され、俺はいなかったかのように二人で会話がなされていく 


 なんだかんだ俺を殺すとか言う話からは話題がそれた、これは成功? いやパンツも見れたし大成功だ!


「……そういえばサンにお土産があるんですよ」


 ルナはニコニコしながら懐から石を取り出した


 なんだ? 幸運の石とかそういうのか?


「なにそれ!?」


「お饅頭ですよ、あげます」


 サンはニコニコ顔で石を受け取り、かじりついた


「あにこえ、かひゃーい」


 サンはまだずっと石にかじりついている、ルナはゲス顔でニヤニヤしていた


 これが……異世界か…………

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