そらとぶゆめ

銀冠

たいようにむかって


 巨大な飛行機型セルリアンや、助手の輝きをコピーしたセルリアンとの戦いから、一晩経って――

 博士は、ジャパリ図書館でプリンセスからの報告を聞いていた。


「では、確かにあのセルリアンは消滅したのですね。間違いありませんね」

「だから何回言わせるのよ。この目でしかと見届けたわ。そんなに信じられないなら他のメンバーにも聞いてちょうだい」


 再三再四、同じことを聞き返す博士。プリンセスは少しく苛立ちを感じているようだ。


「もう助手とかばんに聞きに行かせているのです。くろすちぇっく・・・・・・・は欠かさないのです。我々はかしこいので」

「……そう。だったらもう私帰るから」


 ついにプリンセスの堪忍袋の緒が切れた。大きく溜息をつき、報酬として用意されたジャパリまん入りの籠をひったくるようにして、図書館から出て行った。ちょうど入れ替わりに助手とかばんが戻ってくる。


「博士、どうしたのですか。……お腹がすいているのですか?」


 顔を見るなり、助手はそんなことを言い出した。博士の側も不機嫌さが表情に出ていたようだ。


「あ、じゃあまた何か作りましょうか」


 それを受けたかばんも食材や調味料瓶を手に取ってかまどに向かおうとし始める。察しが良すぎるというのも考え物だ。


「……今はいらないのです」


 つぶやいた博士に、かばんと助手は目を丸くした。


「ええっ!? どこか悪いんですか!? お腹が痛いとか……」


 的外れな心配をして駆け寄るかばん。彼女のそんな優しさを、今日の博士は素直に受け取る気になれなかった。


「問題ないのです。……ちょっと『かっそうろ』の様子を見に行ってくるのです。日が沈むまでには帰ってくるので、それまでにりょうりを用意しておくのですよ」

「あ、はい。やっておきますね」


 表情を明るくしたかばんを肩で押しのけて、博士は図書館を後にし飛び立っていった。残された二人は、首をかしげながら顔を見合わせた。


「博士さん、何か心配事でもあるんでしょうか?」

「……」






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 しんりんちほーの南部、図書館からほど近い場所に『かっそうろ』はあった。そこを上空から一通り見て回って、その脇の草場に降り立った。


「……何事もないですね」


 様子を見てくる、とは言ったものの、これだけですぐ帰る気にもなれなかった。


「ところで助手。ダイダロスが翼をつく、」


 いつもの癖で助手に話を振りそうになって、苦笑した。その助手と顔を合わせるのが気まずくて出てきたというのに、一体何をやっているのか。


「駄目ですね。ポンコツになってしまっているのです」


 不具合を起こした己の頭に手を当てながら、絵本で読んだ話を思い返す。




――むかしむかし。

 ギリシャのクレタというしまに、ダイダロスという発明家はつめいかがすんでいました。

 ダイダロスはしまおうさまにたのまれて、ひみつの迷路めいろをつくりました。

 その迷路めいろはすばらしいできばえで、はいったひとはだれもてくることができませんでした。


 ところがおうさまは、迷路めいろのひみつがほかのひとにられるのではないかと心配しんぱいでした。

 そこで、ダイダロスを息子むすこのイカロスといっしょに、たかとう牢屋ろうやじこめてしまいました。

 イカロスはおこっていました。


「ひどい。もうあんなおうさまのいうことをきくのはいやだ。この牢屋ろうやからにげだしてやる」


 けれども、とうにはおうさまの兵隊へいたいがいるので、あるいてにげることはできません。

 そこでダイダロスは、とり羽根はねをあつめてろう・・でかため、りっぱなつばさをつくりました。


 牢屋ろうやからにげだすまえに、ダイダロスはイカロスにいました。


ぶときのたかさがたかすぎると、太陽たいようのあつさでろう・・がとけてしまうよ。ぎゃくにひくすぎると、うみしぶき・・・羽根はねがだめになってしまう。だからわたしのうしろについて、おなじようにびなさい」


 そうしてダイダロスとイカロスは、つばさをつけてびたちました。


「わあ、すごい。ぶのってたのしいな」


 そらからみた景色けしきはとてもきれいでした。

 たかいところへいけばいくほど、とおくがみえるようになるのです。

 イカロスは、むちゅうでばたいていきました。


「おおい、そんなたかくへってはいけないよ。つばさろう・・がとけてしまうよ」


 ダイダロスはいましたが、むちゅうになったイカロスはづきません。

 そしてついに、つばさろう・・がとけて、ばらばらになってしまいました。

 ダイダロスはちていくイカロスをたすけようとしましたが、まにあいませんでした。


 ギリシャのひとたちはいまでも、イカロスがちたばしょを『イカロスのうみ』とよんでいるそうです――




 イカロス。

 海の潮に耐えられないくせに、太陽に向かってゆかずにはいられない愚者。


「……ふん。まるでセルリアンのようですね」


 露悪的に嘲笑いの声を上げたが、もちろん博士は違いをわきまえてもいた。ダイダロスに忠告を受けたイカロスと違い、あのセルリアンは太陽に向かい続ければ死ぬという事実を知らなかったのだ。

 あれ・・は博士の思惑通りにふね・・で漕ぎで、日輪の輝きを追い掛けて――己の身体が崩れ始めているのに気付く頃には、とうに手遅れであったろう。そうして消えてなくなった。あの、助手と同じ顔かたちをしたセルリアンは。


「……まったく馬鹿馬鹿しいのです。見た目にとらわれてどうするのですか」


 外見を似せたところで、あれ・・は我々とは決して相容れないフレンズ喰いの化物にすぎない。それが分かっていてもなお、今の博士は、助手と長く顔を合わせているのが苦痛だった。


 天を見上げると――太陽は西方に差し掛かって段々と輝きを弱めていたが、没するまでにはまだまだ時間がかかりそうだ。愚者を真似て太陽を追い掛けてみるのも悪くない、そんな思いが脳裏をよぎる。その後どうするかを考える前に、小さな賢者は夕暮れへ向かって飛び立っていた。






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 『かっそうろ』から西へ行けばすぐにこうざんに突き当たる。普段ならサンドスターの消費を抑えるために(というよりは単に疲労を感じるのが嫌で)地面近くを休み休み飛ぶところだが、今日ばかりは太陽がこうざんに遮られるのをいとった。ぐんぐんと高度を上げて、山頂を見下ろすほどの高さまで登りあがる。

 すると当然のようにジャパリカフェの建物が目に入った。その隣の芝生には、かばんが描いたというコップの絵。


「この目で見るのは初めてですが、なるほど分かりやすいですね、助手……」


 言ってからまた「しまった」という表情になり、腹立ちまぎれに飛行スピードを増した。どうせ当てもないのだし、カフェで日没まで時間を潰すのも悪くないだろう……



 ……うまく行ってほしい思惑ほど、うまく行かないものである。


「こんなときに限って休みとは、この島の長たる我々をバカにしているのですか」


 愚痴を言ってみたところで、店の扉に掲げられた休業札がひっくり返るわけもない。熟睡するアルパカが描かれた休業札(画風からしてタイリクオオカミの筆であろう)に反して、店主は中で寝ているのではなくそもそも不在のようだ。

 博士は勝手に入って自分で茶を沸かして飲んでみたが、味気ないことこの上ない。


「駄目ですね。一人で飲むお茶がこれほど不味いとは思ってもみなかったのです」


 自分のれ方が悪かったのでは断じてない、と自らに言い聞かせる博士であった。



 そうして美味くもない茶をすすりながら、窓の外を見やった。夏の日は長く、夕陽は未だ地面に掛かってもいない。早く沈んでくれれば帰れるのに、という気持ちと、帰ったらまた助手の顔を見なければならなくなる、という気持ちが胸中でせめぎ合う。いやそもそも『日が沈んだら帰る』という言明を守らねばならない義理はどこにもないのであって、沈む前に帰ってもよいかえりたくないのだし沈んだ後も別に帰らなくてよいかえりたいわけで――


「……ああ、もう! 本当になんなのですかこのポンコツ頭は!」


 ぐちゃぐちゃになった頭を自分の手で叩きながら、窓を蹴って飛び立った。太陽に向かって、高く、速く、より高く。どこか遠くへ行きたかった。遠く、遠く、自分の知らないところへ行きたかった。






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 ――そんな捨て鉢な飛翔は、長くは続かなかった。

 降りるというには速く、落ちるというには遅い速度で、博士はふらふらと下降していった。結局博士には、翼の溶ける高さまで飛んでいく勇気もなければ、その体力もなかったのだ。そしてこの島に、かしこい博士の知らない場所などあろうはずもなかった。

 こうざんをとうに抜け、じゃんぐるちほーの北端をかすめて西へ、西へ。この先はさばくちほーであり、海にたどり着く前に体力と高度を使い果たして地面につくだろう。それが分かっていながらも、半ば意固地になって飛び続けた。



 そうしていくらか進んで、ついに日輪の下端が水平線へ掛かる頃。

 ふと見下ろすと――奇妙な光景が目に飛び込んできた。まるで博士を迎え入れるように、地面に白く太い帯線が真っ直ぐ引かれていたのだ。帯の中央にはご丁寧に黒い細線まで引かれており、白黒を入れ替えればそのまま『かっそうろ』のようだ。

 博士は自分でもほとんど意識しないまま、その誘導線へアプローチしていた。速度を落として、黒線の中央にふらりと着陸する。が、足を付けた瞬間にすっ転び、横の白帯部分で背中と後頭部を強打した。


「痛゛っ゛」


 思わず声を上げてしまったが、実際にはそれほど痛くなかった。白い部分は柔らかい砂地があらわになっていたのだ。そして近くで見てみると、中央の黒線は黒い小石をいくつも並べることで形成されていた。それに足を付けたのだから、転んだのも道理だった。


「いったい何なのですかこれは……」


 転んだ道理は分かっても、さばくちほーにこんな見慣れぬ線がある道理はさっぱり見当がつかなかった。少なくとも前に来た時までこんなものはなかった。自然に出来た物であろうか? 誰かフレンズか、ボスが文様を作ったのだろうか? あるいは、セルリアンが――


「……まずいですね」


 もしそうなら逃げねばならない。身を起こして飛び立とうとする――が、全身に猛烈な倦怠感が襲い掛かってきた。当然だろう、これだけ遠くまで、しかも異様な速さと高さで飛んで来れば。むしろ今まで疲労を認識できなかったことのほうが異常であった。いまセルリアンに襲われでもしたら決して助かるまい。いや、それ以前に、単にサンドスターを使い果たしてけものに戻ってしまうかもしれない。この見たこともない、知らない場所で。


「それも、悪くないかもしれないのです……」


 口に出してから、耳で己の言葉を聞いて驚いた。自分がそこまで投げやりになっているとはよもや自覚していなかったのだ。

 ――このままでは本当に死んでしまう。

 本気で危機感を抱いた博士は、ともすると失いそうになる意識を集中させて再び飛び立とうとした。すると、その時……遠くからかすかに、言い争いの声が聞こえてきた。


「お前がやるって言い出したんだろーが! まったく、なんでオレばっかり……」


 ツチノコだ。この特徴的な声は聞き間違いようがない。博士は己の震える膝を叱りながら、半ば歩き半ば飛ぶようにして声の出元へ寄っていった。


 見れば、ツチノコは地面を覆っている黒石を拾っては脇に寄せる、という作業を繰り返していた。石が除かれた部分は白い砂面になる。どうやら白い帯線はこうやって描かれたものらしい。そしてツチノコの後ろでは、スナネコがわずかに残った黒石を集めて中央に寄せて手でぎゅっと固める、という作業をしていた。こちらが黒い細線の正体というわけだ。

 だがしばらくすると、スナネコはその場に寝っ転がり、露出した砂面を指でいじくり回し始めた。振り向いたツチノコは声を荒げて咎めた。


「 や く そ く だったろーが!! 日が沈むまではがんばるって約束だったろーが! お前が止めるんならオレも止めるぞコラ!」


 夕陽に照らされてフードでかげったツチノコの表情は空恐ろしく、博士の背筋は凍りついた。だが当のスナネコは特に怯える様子もなく、「んー」と生返事を返すと再び黒石固めの作業に戻った。


「……何をやっているのですか、お前たちは」


 ようやく恐怖から立ち直った博士は、歩み寄って声を掛けた。今度はツチノコが慌てる番だった。


「な、な、何だーお前ぇーー!? ……って、博士か。珍しいな。なんでこんなとこに」


 一瞬跳びあがって威嚇したかと思ったらすぐに地べたに座り込む。相変わらず忙しいフレンズなのです、と頭の中で苦笑しながら、問いに答えようとした博士であったが――


「なぜここに来たか、ですか」


 答えを持っていなかった。

 『かっそうろ』の様子を見に行って、それからジャパリカフェに寄り、太陽へ向かって飛んできて……というのは「どのように」の答えであって「なぜ」ではない。わたしはなぜここへ来たのか。なぜここにいるのか。なぜ。なぜ。なぜ。

 答えない訳にはいかない。島の長として、一番かしこい賢者として、いかなる問いにも断じて「わからない」と答える訳にはいかない。

 考えがまとまらない。頭の中がぐるぐるする。ついでに腹の虫もぐるぐると鳴きわめいている。そのうちに天地がひっくり返って、上半分を天面・・に沈めた夕陽が見えて――


「お、おい!? 大丈夫かー!? 博士、博士、ぉぃ――」






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――からだが、すなに、なっていく。

あしは、もう、ない。

ゆびがくずれて、ハンドルをにぎれない。

てのひらでおす。ちからをいれたら、こなごなになった。


ああ、よかった。ひじは、まだ、だいじょうぶみたい。

めをこらせば、とおくに、りくちがみえる。

これで、も

       う、

         し

         

          ば

          

          

          

           ら

           

           

           

           

           

            く

            

            

            

            

            

            

            

            

             は






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 ――暗い。

 目を開いて前を見る。開くための目がまだ、ある。

 のどが渇いた。お腹がすいた。口を――開けることができる。

 開けた口に、生温い液体が注ぎ込まれた。

 夢中で飲み干した。


「お、起きたか!? だいじょぶか!?」


 やかましい声が聞こえる。聞く耳が、ある。


「オレのことわかるか!? この指は何本に見える!? なぁ、」

「黙るのです。そんなにギャースカ騒がなゲホッ、ゲホッ」


 口内に残っていた水が気管に入ってしたたかに咳き込む。すると、やかまし声の音階とボルテージが二段階上がった。


「し、しっかり、しっかりしろー!!! 博士にもしものことがあったら、オレたち、っぐすっ、島のみんなは、うぇぇ……」


 終いには鼻声になって嗚咽をもらす始末。そんな、無様でお人好しなフレンズツチノコの涙を、博士は指で拭ってやった。


「もしものことなど無いのです。まったく、このわたしを誰だと思っているのですか」


 立ち上がって、ふんぞり返ってみせる博士。見せられたツチノコは声にならない声でわめいた。


「……! !……!!」


 だが腹の虫がぐるると鳴いて、博士の足元がふらつく。それを見越していたかのようなタイミングで、スナネコがジャパリまんを差し出してきた。


「食べますか?」


 行動による返事は言葉よりずっと素早い。博士は頬一杯にかぶりついた。……が。


「~~~~~!!!!」


 口いっぱいに広がるジャリジャリとした異物感。普段なら迷わず吐き出すところだが、底抜けの飢餓が吐き気を上回った。そのままゴクンと飲み込んでしまう。


「な、な、な、何ですかこれは!! 砂だらけではないですか! こんなものを食べて平気なのですか、お前たちは!」


 わなわなと肩を震わせる博士に向かって、ツチノコは申し訳なさそうな顔で謝った。


「あぁ、そいつ、博士の口には合わなかったか。悪ィ。ちょっと待ってろ、普通のジャパリまん取ってくる」


 そう言うと、彼女は扉の向こうへ去って行った。……扉?


「一体ここはどこなのですか、スナネコ」

「ここは『めいろ』。夜になっても明るくて寒くならないから、好き」


 迷路。さばくちほーの地下にあるというヒトの遺跡。イカロスを気取って太陽を追い掛けていたら、ダイダロスの迷宮にいざなわれたという訳だ。


「まったく、笑えないひにく・・・もあったものです」


 ああ、本当に笑えない。笑えないといえば――


「このジャパリまんは何なのですか。確かに鳥のフレンズの中には砂を食べる者もいますが、わたしは違うのです。お前たちは尚のこと砂を食べたりはしないはずなのです」


 砂はジャパリまんの具の中に混ぜ込まれていた。表面に誤って付着したものではない。


「それ、『がんえん』っていうそうです」

「『がんえん』?」

「ジャパリまんに『がんえん』入れるとおいしくなるって、アクシスジカさんに教えてもらいました。入れすぎると辛くなっちゃうけど」

「おいしく……」


 言われてから、手の中の、食べかけのジャパリまんをよく見てみた。細かく刻まれた通常の具材にまぎれて『がんえん』の塊がゴロッと3つ入っている。さっきは大して味わいもせず飲み込んでしまったが……


「もしゃっ、ガリッ、ガリガリ、もしゃ、ガリ、もっしゃ……ゴクン」


 美味い。そして辛い。かばんの作る茶色くてドロッとしたりょうりとどこか似ているが、あれよりずっと乱暴というか荒っぽいというか……そんな美味さだ。そして猛烈に水が欲しくなる。


「お水、お水……お水はないのですか」

「ツチノコが持って行っちゃった」


 言われてみれば確かに。さっき口に入れられた水分は、ツチノコの水筒からのものだったのだろう。


「ツチノコ!!! 早く戻ってくるのです!!!」


 ほどなくして水筒・・は戻ってきた。


「大声出さなくても聞こえとるわッ! まーその様子なら大丈夫そうだな。ほれ、普通のジャパリまん……」


 差し出されたジャパリまんには目もくれず、肩に掛けられた水筒をひったくる。唖然とする水筒の主を尻目に、博士は水を一息に飲み干した。そして……


「お水と『がんえん』入りのジャパリまんを持ってくるのです。あるだけ全部持ってくるのです!」

「え、でも、普通のじゃなくていいのか? さっき……」

「いいから持ってくるのです!! 早く!!!」





 ……20本あった備蓄の水筒を全てからにしたところで、饗宴は終わった。


「あぁ、せっかく汲んできたオレの水がぁ……」


 がっくりと肩を落とすツチノコの横に寝転がって、博士とスナネコは満ち足りた声を上げた。


「まんぷく、まんぞく、なのです。りょうりの他にこんな美味しいものがあるとは思ってもみなかったのです」

「まんぞく……」

「お前なー! 博士はともかく何でスナネコまで余分に飲んでんだよ! 今度水汲み手伝ってもらうからな! 絶対だぞー!」


 飢えと渇きが満たされて、人心地ついたところで……博士の秀でた額に、疑問が舞い戻ってきた。


「そういえば、お前たち、砂漠の上で何をやっていたのですか。あの模様はお前たちが作ったのですか」


 うずくまったスナネコは反応しない。代わりに、説明するのが苦手で大好きなフレンズが口を開いた。


「そうだよ。つっても言い出したのはコイツだけどな」


 コイツ呼ばわりで足蹴にされた方のフレンズはしかし、むにゃむにゃと鳴くばかりでまともな言葉を発さない。どうやら寝入りかけているようだ。


「コイツ、地面に『かっそうろ』みたいな絵を描こう、って言い出したんだよ。ジャパリカフェにあるような感じで」

「なぜそんな絵を」

「あの『ひこうき』って奴、もとはヒトの乗り物だったんだろう? なら『かっそうろ』をどんどん増やしていったら、今度はセルリアンじゃなくてヒトの『ひこうき』が来てくれるかもしれない」

「それは…………ずいぶんな絵空事ですね」


 聞いたとたんに鼻で笑いそうになった博士だったが、ツチノコの目を見て、そんな笑気は消し飛んだ。さっき地上で威嚇していたときより、ずっと恐ろし気な、熱のこもった目つきだった。


「分かっとるわ。けど、見てみろよ、これ」


 ツチノコが右手親指を後ろへ向けた。その先へ視線をやって――驚愕した。

 迷路の壁面、木目が途切れて土があらわになっている場所いっぱいに、絵が描かれていた。ひこうき。かっそうろ。ひこうき。ひこうき。端っこに小さくジャパリバス。更にもう一個ひこうき。そしてそれらの上に……なんだこれは。大きくて細長くて、片方の端が尖っている……なんだかよくわからないが、飛んでいるらしい物体。


「なんなのですか。一体なんなのですか、これは!」

「あのデカいのは分からん。けど多分『のりもの』だ」


そう呟いてから、ツチノコは右足の先で、寝息を立てるスナネコの背をもう一度優しく蹴った。


「グータラで飽きっぽいコイツが『ひこうき』を見てからずっとこの調子でな、コイツの巣の壁なんてびっしりだ。『ジャパリバスに乗ったときも面白かった。バスより大きくて、速くて、空まで飛ぶんだから、乗ったら絶対面白い』って。よっぽど気に入ったんだろうな」


 確かにそれは分かる。しかし、だからといって『かっそうろ』を描くというのは。本当にヒトの飛行機を呼べるなら博士だって諸手を上げて協力するところだが、しかし。


「ヒトはもういないのです。絶滅したのです。いくら描いたって『ひこうき』は」

「来ないって、本当に断言できるか? かばんが居るのに」


 ハッとした。……いや、いやいや。それは詭弁だ。だって、かばんにはそんな大層なことはできない。


「いくらかばんがかしこいと言っても、あの飛行機を」

「あのひこうきを直せなかった。かばんはそうだ。だけど他のヒトなら? 同じ種類のフレンズが生まれることも時々はある。それに、『ミライさん』は空を飛んで来たって」


 ミライさん。その話は博士の耳にも入っていた。ロッジアリツカの宿泊者たちにボスが見せたという、過去の光景。


「あれはずっと昔のきろくなのです。今はもう」

「もういない、よな……ま、そうだよな」


 ツチノコはあっさりと自らの意見を放棄した。


「オレも同じこと言ったんだよコイツに。けど全然聞かなくてな。押し切られて一緒に『かっそうろ』描き始めたんだが……」

「スナネコのさぼり癖につきあわされて一苦労、ですか。嘆かわしい」

「ははっ」


 自嘲して、ツチノコは下駄で地面を蹴り始めた。からん、からんと小気味いい音が狭い空間に響く。


「これはスナネコには秘密なんだが――オレは、別に『ひこうき』が来なくてもいいやって思ってる」


 からん、からん。眠気を誘う音にやられそうになりながらも、博士はツチノコの言葉を待つ。


「こうやって地面や壁に絵を描いて残してりゃ……いつか、オレみたいな奴がこの絵を見つけるかもしれない」


 瞼が重い。満腹になった胃腸が、いまだ疲労の抜けきっていない翼が手足が、さらなる休息を求めている。


「いつかオレやスナネコこいつがいなくなって、誰もオレたちを憶えていない時代が来ても……この絵を見れば『ひこうき』を大好きだった奴がいるって分かるんだ。オレたちのきもち・・・がずっとここに残るんだ。それって……凄いと思わねェか?」


 その問いに是や否やと答える前、考える前に、博士の意識は洞窟の柔らかな闇に溶けていった。






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さて、ずいぶん無駄な寄り道をしてしまったのです。そろそろ図書館に帰るのです。


おや、そこにいるのはタイリクオオカミ。今月の新刊は仕上がったのですか?


「……! 来るな……!」


おお怖い怖い。そんな目で睨まなくても、少しくらいなら〆切を伸ばしてやるのです。我々はかしこいので。


今度はマーゲイですね。ライブの運営は大丈夫ですか? 機械がおかしいようなら手遅れになる前に言うのです。申告が早いほど直しやすいのです。


「あ! みんな、今日のライブは中止よ中止! ほら走って、急いで!」


おや、そんなに大きな不具合が起こったのですか。いくらかしこいわたしでも、すぐには直せないかもしれないのです。図書館に戻ったら助手を呼んでくるので、それまで待つのです。


少し小腹がいてきたのです。近くにボスは……いませんね。仕方ないので、ロッジアリツカの食堂で少し世話になるのです。


「ひぃっ! 今日は満室でーす!!」


……締め出されてしまったのです。いくら満室とはいえ、この島の長に対して何たる仕打ちですか。

まあいいのです。せっかくならジャパリまんよりかばんのりょうりを食べたいのです。などと言っていたら、ちょうどいいところにかばんとサーバルが。


「かばんちゃん、わたしに任せて! えーいっ!」


狩りごっこですか、今はそんな気分ではないのです。しかしまあ、りょうりを作ってくれるならば相手してあげないこともないのです。ほれ。


「うぎゃあああああーーー!!」

「サーバルちゃん!!!」


わたしの勝ちですね。さありょうりを用意するのです、かばん。

そう、火をつけて材料を煮るのです。

しかし……初めて火を見たときはずいぶん恐ろしい思いをしたものですが、慣れてしまえばどうということはないですね。むしろ、この火自体が美味しそうにさえ見えてきたのです。これが『じょうけんはんしゃ』というものでしょうか。


ほら助手、そんなところで突っ立ってないで、こっちに来るのです。一緒にご相伴しょうばんにあずかるのです。

おーい、おーい、おーい……






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「……ヵセ、ハカセ、博士!!」

「んぁ……?」


 目の前に、何か大きな……耳?

 サーバルの耳だと分かるまでしばらくかかった。


「ふぁ~あぁ……おはようございます、サーバル。りょうりは出来ましたか?」

「できましたか? じゃないよ! みんな、すっごくすっごく心配してたんだよ!?」


 はて、みんな、とは。

 身を起こして見回してみると……右にもフレンズ、左にもフレンズ。顔見知りのフレンズのほぼ全員が集まっていた。


「何事ですか、これは」

「それはこちらの台詞ですよ、博士」


 真後ろから声を掛けてきたのは、助手だ。まだ顔を合わせる踏ん切りがつかなくて、博士はそちらへ振り向けなかった。


「日没までに戻るといっていたのに、さばくちほーで一泊とは何事ですか。用事があるならそう言ってください」


 助手の声は震えていた。怒っているようでもあり、悲しんでいるようでもある声音だったが、そっぽを向いたままの博士にはその真意はうかがい知れなかった。

 そのとき、博士の前方にいたアルパカがまくしたてた。


「お茶っ葉ぉ取りに行っで、帰ってきで見たらぁカフェん中荒らされてだんだゅぉ! 大慌てで図書館ァ行っでみたら博士さ行方不明だっつうでねぇか! あだしゃもぉてっきりセルリアンか何か襲っで来たんだァ思て必死でハンターさん呼びに行ってなァ」


 その両脇ではヒグマとキンシコウが頷いている。ヤバい。あれは本気で怒っている目だ。


「この前から、巨大セルリアンや『ひこうき』と立て続けに危険なセルリアンが現れていたからな。アルパカが助手とかばんを連れてきたときは肝をつぶしたよ」

「そのあと島のみんなで博士さんを探して回ったんです。本当に、無事でよかった……」


 良かったと言いつつも、キンシコウの言葉の端々から怒りと呆れが伝わってくる。だがしかし、博士としても冤罪をかけられて黙っている訳にはいかなかった。


「待つのです。わたしは『日没までに戻る』という約束を破った、そのことは謝るのです。ですが、カフェを荒らしたりはしていないのです。お客として店に入って、お茶をいただいて、紳士的に退出したのです」

「んだっでコップも洗っでないしびん・・も開けっ放しだし、焙煎機『ばいせんき』の中身も放ったらかしでお茶ッカスこびりついて黒ぐなっぢまっだんだゅぉ、これで荒らされてないってそりゃあ゛ないよお……ぺっ!!」


 アルパカの唾飛沫は、器用にも混雑したフレンズたちの合間を通して壁へ叩きつけられた。どうやら、博士に言い逃れの余地はないようだ。


「……万策尽きたのです。かくなる上は煮るなり焼くなり好きにするがよいのです」


 もはやこれまでと、頭を下げた博士の前に、かばんが歩み出てきた。


「えー、みなさん。今日は博士さんの捜索にお集まりいただき、ありがとうございました。おかげさまで、こうして無事に博士さんと再会することができました。心からお礼を申し上げます」


 博士より更に深々と頭を下げるかばん。それを見て、アルパカも留飲を下げたようだ。


「お礼とお詫びの印に、皆さんにプレゼントをお渡しします」


 言いさしながら、かばんは背の鞄から石を取り出した。ツチノコとスナネコがいじっていた例の黒石……に、白く輝く刻み印をつけたものだ。


「この石は、今度から図書館で何かお願いをするときに、ジャパリまんの代わりに支払うことができます」

「んなっ!?」


 ジャパリまん無しで手伝いをしろというのか。とても損な上に、よくわからないが何だか屈辱的な気がする。こんな不当な条件を受け入れる訳にはいかない。


「勝手にそんなことを決めるな、なのです! 助手も黙ってないで止めるのです」

「いいえ、これはわたしとかばんとで話し合って決めたことなのですよ」


 助手も了解済みとは……どうやらお手上げのようだ。そんなことを言っている間に、かばんは手際よく石を配っていった。


「はいどうぞ。はい、はい、人数分あるから押さないでー! はい、サーバルちゃんも」

「わーい、わーい! お礼石ー! お礼石ー!」

「はい、アルパカさんは6個。ツチノコさんとスナネコさんは3個づつです」

「ありがとぅぉー。またお茶飲みに来てにぇ」

「……うっす」

「わー、きらきらー」


 石を受け取ったフレンズは各者各様の喜びようを見せながら帰っていった。そうして一人減り二人減り、十人減り二十人減り……かばんとサーバル、博士自身、そして助手が残った。


「博士」


 トン、と。背中に重みが掛かる。


「博士が望むなら、わたしは図書館を出ていきます。顔を合わせてくれともいいません。セルリアンに操られてとはいえ、あんな事件を起こしてしまったのですから」


 助手は消え入りそうな声で言う。違う、そうではない、と言い返してやりたかったが、どうにも喉が動かない。


「だから――お願いです。もう二度と、いなくならないでください。あなたは、この島の長なのですから」

「違うのです!!!!」


ようやく絞り出せた声は、自分でもびっくりするほど大きかった。


「違うのですよ、助手。この島の長はわたし・・・ではありません。我々・・なのです。お前とわたし、二人でこの島の長なのです」


 意を決して、振り向く――心臓が止まるかと思った。

 なんとなれば、助手は、胸元に石を抱えていたのだ――他のフレンズに渡されたのより大きくて平たい石。そう、それはまるで、あのセルリアンの体表にあったのとそっくりに――


 息が上擦る。動悸が止まらない。両の膝はバカ笑いしつづけていて、今にもくずおれそうだ。だがもう逃げる訳にはいかない。今の博士には、確かめねばならないことがあるのだ。


「助手。これはあくまで仮に、の話です」


 前置きし、深呼吸して、言いさして……一度咳き込んで、また呼吸を整えなおして。


「助手、もし仮に、お前が……美味しい物を食べられなくなったら」


 違う。これでは駄目だ。こんな遠回しな言い方では伝わらない。


「我々と同じものを食べられなくなったら。食卓を共にすることができなくなったら」


 婉曲表現が次から次に思い浮かぶこの優れた頭脳が、今はつくづく恨めしい。しかしありがたいことに、それもついに終わりが来た。


「もしもお前が……フレンズを食べないと生きられない身体になったらどうするのですか」


 後半は一息に言い切った。言ってしまった、ついに。そして、博士の心の受け入れ準備が整うよりずっと先に、返事がかえってきてしまった。


「パークの外へ旅に出るでしょう」

あれ・・と同じように、ですか」


 ああ。そうか、やはり。分かってしまった。

 いや……本当は博士だって、とっくに、最初から、理解していた。あのセルリアンが写し取ったのは、助手の顔かたちだけではなかったのだ。

 あのセルリアンが飛行機を復元した後、しばらく島へ留まってフレンズを襲って回ったのは何故だったのか。単に島の外へ出たいだけなら、すぐに飛び立っていればかばんに墜落させられることもなかったというのに。

 答えは簡単だ。あれ・・は『保存食』を確保しようとしていたのだ。あるいは食い溜めか。いずれにせよ、島を出てどこか別のサンドスター供給源を見つけるまで耐え凌ぐための貯蓄を狙っていたのだ。


 しかし我々に捕縛されて、ふねを与えられてからのあの子・・・は、唯々諾々とこちらの思惑に従って、漕ぎ出していった。まるで島の外へ出れば死ぬことを知らないかのように「永遠の世界を作るのだ」と言い続けながら。


「……バカですね。本当に、救いようのない、どうしようもない大バカです」


 博士があの子・・・を謀殺したなどと、自惚れもいいところだったのだ。あの子はろう・・の翼が溶けるのを知った上で、自らの意思で太陽へ羽ばたいていった。二度と友達フレンドを傷つけないために。

 博士はそのことを認めなかった。島の長として、断じて認める訳にいかなかった。あれ・・はフレンズ喰いの化物で、パークの敵で、助手を傷つけ殺そうとまでした仇だったから。

 博士はそのことを認めたくなかった。だって、認めてしまったら――


「助手。わたしの方こそ、お前に謝らなければならないのです。お前から輝きを奪った、あの憎むべきセルリアンを、わたしはどうしても嫌いになれなかったのです。お前の次に……いえ、お前とかばんのりょうりの次くらいに、好きになってしまったのです」


 認めてしまったら、悲しい。

 好きだった友達フレンドを死なせてしまったら、たとえ他に取るべき方法がなかったとしても、悲しい。悲しい思いをするくらいなら、それを認めてしまうくらいなら、いっそ忘れたかった。友達フレンドなんていなかったんだと、我々は憎い敵をやっつけたんだと、そう思い続けていたかった。

 けれど――



   「いつかオレやスナネコこいつがいなくなって、

    誰もオレたちを憶えていない時代が来ても……

    この絵を見れば『ひこうき』を大好きだった奴がいるって分かるんだ。

    オレたちのきもち・・・がずっとここに残るんだ。

    それって……凄いと思わねェか?」



 憶えていてもいいのだろうか。この悲しい、悲しくて張り裂けそうな、大好きな気持ちを、残し続けてもいいのだろうか?


「……助手。お願いがあるのです。わたしは、あの『ひこうき』の事件と不思議なセルリアンの話を、本に書いて残したいと思っているのです。そのために、お前にも協力してもらいたいのです。あのときお前が感じたことを……苦しいことも辛いことも、根掘り葉掘り……ほじくり返して聞きたいと思っているのです。……協力してもらえますか」


 途切れ途切れに、歯切れ悪く、たどたどしく……無様この上ない言葉だったが、それでも頼み込んだ。これで助手に嫌われてしまったら……仕方ない。それくらいひどいお願いをしているのだから。


「なんだ、そんなことですか」


 返ってきた答えは拍子抜けするほど軽かった。


「それくらいお安い御用なのです。聞き込みくらいでどうにかなるほど、わたしはヤワではないのですよ」


 どうやら事件がこたえていたのは博士のほうだけだったようだ。今までうじうじ悩んでいたのがバカらしくなってきた。

 悲しいものは悲しい、嬉しいものは嬉しい、そして好きなもの・・は好き。それで良かったのだ。


「そうと決まれば、さっそく聞き込みを始めるのです。行きますよ、助手」

「……? わたしに聞くのではないのですか?」

「かしこい我々は時間が経っても事件のことを憶えているのです。ですが、あまりかしこくないフレンズはすぐに当時のことを忘れてしまうのです。ですから、かしこくない順に聞いて回るのです」

「なるほど、道理ですね。ではまずサーバル、お前からです」

「えー、ひどいよー!」


 助手にかしこくないと名指しされたサーバルが憤慨する。しかし博士はこんなところで時間を無駄にするつもりはなかった。


「サーバルはずっとかばんと一緒にいたので、後でかばんに聞けばよいのです。さあ助手、付いてくるのです。時間は待ってはくれないのですよ」


 地下迷宮を出て、外の世界へ。

 東の空を振り仰げば、朝日が今まさにこうざんの稜線から溢れようとしていた。もう少しすれば、さばくちほーの地表は灼熱地獄へと変ずるだろう。

いよいよのんびりしてはいられない。


「ところで博士。『ひこうき』事件の本ですが、どんなタイトルにするかは……」

「もう決めているのです。ですが助手、良いアイデアがあるなら聞くのです」

「では、せーの、で言い合いましょう。どちらが良いタイトルか競争です」

「いいですね。では……せーのっ」


島の長は大地を蹴って飛び立ちながら、声をそろえて叫んだ。




「「そらとぶゆめ!!」」

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