15cmの速度

小海

第1話 始まりの告白

堂々とした入道雲の浮かぶ広い空にはセミの声が幾重にも重なって響いて、そこに気動車のアイドリング音が申し訳程度に音を重ねる。

枕木の吸い込んだ機械油の香りは辺りを包んで盛夏とはまさにこの事だと感じさせる。

「じゃあ、また明日ね~」

 車内に乗り込んだ彼女が言う

「おぅ、また、明日だな。」

これだけ言おうとしたけど、今言うべきだと思った

今まで何度も何時だって、チャンスを逃してた。

あの時も、もう少し早く切り出していれば.....、そんな回想をするけれど、今はそんな後悔している暇すら惜しい!


「おれ、俺.......美月の事がっ.......

『ピューーーイ』」

 車掌さんの笛の音が響く

「ドア閉めます!お下がり下さいー。」

『プシューーーッ、ガコン、

 フスーーッ、

 ガロロガグゥゥゥゥグゥロロロロ....』

今日も今日とて、か。

15cm彼女との距離が速度をまして開いてゆく。


これで、何度目の失敗だろ?ホームに佇んで深呼吸をすると、今しがた走り去った気動車の排気は少し鼻をついて、いつもながらの事に呆れて仰ぎ見る空は、昼と夜が入り混じって鬩ぎ合って夏特有の薄い青色の空から、紺色の夜空へと変わり始めている。


「おっはよーー!」

「あぁ、おはよー。」

あーーー!昨日のこと引き摺ったままで、テンション一向に上がらない。

たくっ、いっつもタイミングが悪いというか、なんというか。

「そういえば、ハルト、昨日なんか言おうとしてたけど何だったの?」

「あー、うん、何でもない。気にするな」

「ふーん、いつもそうねー、そうやってはぐらかす~」

他愛もない会話でさえ、結構バクバクとうるさい鼓動を落ち着けているとヤジが飛んできた

『ヒューヒュー!お2人さん朝からお熱いことで~』

「うっさい!外野は黙ってなさい!?じゃないと....分かるわね?」

美月がそう言うと、茶々を入れていた外野衆は引き攣った笑顔を貼り付けて、ゆっくりと後ずさって行った。


先生が入ってきて、チャイムが鳴る朝のSHRが始まる、夏の朝の空気が窓から入ってきて先生の声を攫ってゆく、なんて言ってたかな?


夏休みがどうこうって言ってた気がする些細なことを気にしたまま、いつの間にかSHRが終わていた。


授業はどんどんと進んでゆく1時間目の現代社会に始まって、2時間目数学、3時間目音楽っと、4時間目国語。


カバンの中を開いて教科書を出そうとするけど、国語の教科書はどこにも見当たらない、置き勉なんてしないから、学校にはない。

授業の準備をしている先生の所に赴いて

「教科書、忘れました。」

 それだけ伝えると、隣の人に見せてもらうようにとだけ言われた。

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