生き延びた意味を探して

ニスタケ

第1話 地獄

 「No.48、出てこい!」


 そう呼ばれて檻の中から出てきたのはまだ幼い少年。


 身体中擦り傷、切り傷がありボロボロな姿になっている。


 服装も膝まで隠れるくらいのTシャツ?と呼べるのかすでに分からないくらいな服というより布を一枚着ている。手と足にも枷がつけられて走ることもできないようになっている。


 身体が綺麗な状態だったらまだ可愛らしい容姿だったのだろう。


 髪もいつから切られていないのか、すでに髪は肩の位置まで伸びきっていて、ところどころに血がついている。


 そして、そんな少年は目を虚ろにさせて目に光が宿っていない。


 元は小さな集落で産まれた一人の子ども。


 8歳の誕生日の前日に忽然と姿を消した。小さな集落の話だ。


 すぐに村中が大騒ぎしてその子どもを探した。


 一週間かけて様々な場所を探したが、結局その子どもを見つけることはできなかった。


 この事件の首謀者は世間で噂になっていた、子どもを攫って人体実験しているという裏で暗躍している組織だった。


 そしてこの少年が攫われてすでに2ヵ月がたっている。


 攫われた日から毎日実験の日々。


 最初は泣いて抵抗していたが、子どもの抵抗なんてたかがしれている。


 抵抗するとさらに酷い実験となる。


 いくら幼くても抵抗しても無駄なんだとわかるように体で覚えさせられてしまった。


 そんな少年は研究員から今日も呼ばれた。


 黙って抵抗もせずに檻から出ていく。


 そしていつもの実験室まで研究員2人に挟まれて、おとなしく歩いていく。


 実験室に着くまで手と足の枷がじゃらじゃらと音を鳴らし、実験室から聞こえる泣き声と悲鳴しか音は聞こえない。


 今日は何をされるんだろうとぼんやりと考えているうちに実験室に着いてしまった。


 入ると枷を外され十字の形に身体を固定され、注射器を持った男が近づいてくる。


 その男が近づいてくるのを見ていると視界の端に入ってきたのは身体中が薄緑に変わっている子ども。


 今回の実験でとうとう亡くなったのだろう。


 と今から自分も同じことをされるのに客観的にそう考えていた。


「それではNo.48の実験を開始する。」


 そう告げられるとともに注射を腕に刺され、薬品を身体に入れられた。


 チクっとした痛みを感じたがそれも一瞬のことで、すぐに注射器は抜かれ研究員は離れていった。


 注射をされて5分間とくに何も起こらないと思っていたが、次の瞬間には地獄のような痛みが身体中を駆け巡った。


 気絶しようにもそれすら許されない痛みが全身をはしる。


「グッ、ガ、あ」


 声にならない声が口から出てきた。声と共に血も一緒に出てくる。


 声を出すのも辛いがそれでも声がでるのを止められない。


 そのうめき声はとても8歳の子どもの出すような声ではない。


 その様子を研究員たちはパソコンを使ってデータを打ちこんでいく。


 そんな状態がそこから15分以上続いた後に身体の表面にも変化が表れだした。


 しかし先ほどの子どものように身体中が薄緑に変わっていくのでなく、心臓のある位置から身体全体へと黒い幾何学模様が伸びていきだしたのだ。


 少年本人はそんなことを気にしている暇などなく、もう殺してほしいとさえ思うほどの苦痛を受けている。


 そんな幾何学模様が浮かんだ少年の様子に研究員たちは顔を明るくさせている。


「No.48成功だ。」


 そしてそんな研究員の言葉が発せられると、再び研究員が近づいてきて注射を腕に刺した。


 すると激痛とともに、あの幾何学模様も縮んでいき、最終的には身体左半分と左腕の一部まで縮んでいった。


 少年からは吐息しか聞こえない。


 そんな少年を固定器具から解放し、再び手と足に枷をつけ血だらけになった顔を拭かれ、服を換えさせられた。


 服を換えるとすぐに歩かされ再び檻の中にいれられた。


 少年は今日も生きたと思いながら、倒れるようにして眠りに入った。

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