綺麗な髪なのに
河井咲月
可愛いキミの変化。
6月9日、月曜日。
高校生になってから、2回目の夏休みになる少し前の話。
俺は今日も目立たない陰キャラらしく過ごしていた。
朝のホームルームまでの時間に本を読む、これが、陰キャラらしい過ごし方。
ホームルームが始まるまで、あと二十分ほどある。
教室には俺以外誰もいない。
でもそのうち誰か来るだろうから、俺はほんの続きを読む。
続きのページを開いた時、聞き覚えのある声が聞こえた。
「おはよ、慎一」
「ああ、おはよう。美玲は今日も可愛いな」
「そう? てか、毎日可愛いとか言われても冗談って分かってるから嬉しくないんだけど」
別に冗談ではないんだが……。
思ったことを口に出しただけだし。
と、心の中で言ってみる。
流石に本心を述べたら、俺の美玲に対しての気持ちがバレてしまう。
そんなのは嫌なので誤魔化した。
「ごめん、ごめん。そう言えば、髪を切ったんだな。似合ってるぞぉ」
美玲はなんでわかったの? みたいな顔で俺を見る。
好きな人の変化にはすぐ気づいてしまうんだよ。
なんて口を滑らしそうになったのを必死に堪えた。
他になにか考えようとしても言葉が出てこないので、美玲が何か言うのを待ってみる。
「ありがと。15センチも切ったんだけどもとが長すぎるからまだ長いのよ。ほら、長いから二つ結びしてきたの」
彼女は胸くらいまである二つ結びを揺らしている。
その髪を見ながら俺は考えた。
ここ数日、髪を切るなんて言ってなかったはず。
なのに彼女は突然切ってきた。
あんなに綺麗な長い髪をバッサリと。
なんで切ってしまったのか、とても気になる。
たくさん考えたが俺には分からない。
なので、明日にでも聞こうと思う。
ずっと考えていたせいで、ノートをとっていなかった。
仲がいい誰かに借りようと思ったが、男子に借りても字が読めない可能性がある。
という訳で、美玲にノートを借りた。
女の子って、何でこんなに字が綺麗なんだろう?
家に帰ってきてノートを写してる時、そんなことを考えていた。
すると、そこには目を疑うようなものが書いてあった。
これは、美玲に詳しく話を聞かないといけないな……。
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