修学旅行

翠幽月

昔住んでいたのかもね

どんなに雨でも、曇っていたとしても

飛行機で雲をつき抜けた先は青空だった

これくらい晴れてくれれば

海が綺麗に見られたのに

と帰りの飛行機でぼやいた

友と私

夏に行ったわけではないから

曇っていたのもしれない

でも、少しだけ晴れた夕方があった

ひたすら美しかった

夕日があって

海があった

海の音があって、波があった

ただそれだけの空間

ありきたりで

どこでも見られる

景色だったはずなのに

何か特別な気がした

ずっと昔のことだけれど

もしかしたら私は

ここに住んでいたのではと思った

ずっとそこに行きたいとひたすら願っていた気がした

私が生まれる、ずっと昔に

今の私が認識できないどこかで

生まれ変わるつもりなんて

毛頭ないけれど

もしも私がまた私であると認識出来るならば

そこに戻ってくるだろうと思う

できるならば、私という心を

瓶に詰めてそこに埋めてくればよかった


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修学旅行 翠幽月 @long-sleep

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