第百七十二話◆征戦攻伐

そして突撃部隊の一行は学長室の扉をバンッ!と開けた!


学長室にはまだシルビオ学長がおり、かなり実力のありそうな魔導士が二人ついていた。


「覚悟しなさい!シルビオ!……いや、邪悪なる者よ!」沙羅が怒鳴りつける!


「突然やって来て何だねキミたちは……?私が邪悪なる者だと?バカバカしい。誰から聞いた?そこのエルミリアか?」


「貴方が邪悪なる者であることはもう分かっている」エルミリアも発言した。


「ふん……裏切ったかエルミリア。……おい、お前たち。コイツらをれ」


「「はっ!」」


(高火力電撃の球……魔力3500消費)「魔法伝導180!発動!」

(高威力の旋風……魔力3500消費)「魔法伝導180!発動!」


二人の教官は腕に付けていた、恐らくミスリル製の青白いリングを輝かせ、魔法伝導を行った魔法攻撃を放ってきた!

その二人の魔法はぶつかり合い、融合し、電撃の竜巻となって、学長室ごと破壊……魔法伝導により魔力6300分となった威力に、上級魔導語による大火力アップにより、

学長室は跡形もなく破壊、突撃部隊六人の魔法防護障壁は一瞬で割れてしまった!


「ハァッ!」ガリファリアは自らの発声と共に竜巻へドラゴンビームを放った!

一瞬で竜巻は消え去り、武器を構えた沙羅たちが一斉に飛び出し、シルビオの胸ぐらを掴むとそのまま窓の外へ飛び降りた!


空中で手を放し、シルビオは上手く地面に着地し、突撃部隊の全員も地面へ着地した!


「くそっ!貴様ら……!!」


「突然襲撃されて悔しいか?邪悪なる者」好矢が声を掛けた。


「トール・ヨシュア……貴様の差し金か……!!」


「ヨシュアだけじゃない……。お前は出張り過ぎたんだよ、邪悪なる者よ」赤い光を瞳に灯らせたソフィナ……パラディースが声を掛けた。


「貴様は……!どういうことだ!?何故、サラ・キャリヤーとパラディースが手を組む!?」シルビオが狼狽えている。

そりゃそうだ、おとぎ話で殺し合った謂わば、勇者と魔王が手を組んでさらなる巨悪に挑んでいる状態になっているからだ。


「許さん……!!許さんぞ、トール・ヨシュア!!」シルビオはピキる程度ではなく憎悪に満ちた顔を見せた。

だが、それこそが本物のことを物語っていた。あの人はこんな表情をしないはずだ。


突き落とされたシルビオ学長が影武者の可能性を一瞬考えた好矢だったが、これはシルビオ学長その人であり、中身はシルビオ学長ではない。


「貴様ら全員まとめて地獄に叩き落としてやる……!!……発動ッ!!」


次の瞬間、シルビオは倒れ、そこからすうっと黒い肌の男性が姿を現し、それと同時に、黒いオーラが男性と仲間たちに降り注いだ!


「まずい!みんな逃げて!」エルミリアが言ったが、遅かった。


トーミヨの敷地の原っぱのど真ん中に直径10m程の黒いドームが出来た。

そのドームの中にいるのは黒い肌の男性、好矢、沙羅、ソフィナ、メルヴィン、ロサリオ、ダグラス、ガリファリア、エルミリア、サミュエルの十人だった。

シルビオの身体は上手いことドームに入らなかった。彼が戦いの後再びシルビオ学長の身体へ戻る為にやったことだろう。


黒いドームの中は、さっきまで緑色だったはずの芝生は黒い芝生に見え、空気が重く、外の光景は一切見えない。

外の光景が見えないということは光が入ってこないはずなのだが、不思議と視界は良好だった。


「な、なんだここは!?」好矢が驚いていると、目の前の黒い肌の男は言った。


「ここはトーミヨの敷地のど真ん中に作った、戦闘エリアだ。あのまま本気を出してしまえばこの世界が壊れてしまうからな……ドームの中で戦えば問題あるまい」


「お前が、邪悪なる者……!?」


目鼻立ちは整っているが、人間なのか魔族なのか龍神族なのか、はたまた、エルフなのかドワーフなのか分からない不思議な様相をしている。何故なら、全ての要素を有しているからだ。

真っ黒い肌に、山羊の角にドラゴンと悪魔の翼が一対になり二枚、耳はエルフのように長く、身長は巨人族、だが割合的な筋肉量は巨人族よりも多いドワーフ族のような体格をしていた。

しかし、ガッチリしたイメージは受けない不思議な身体をしていた。作り上げられ、引き締められた最高の状態の身体と言えるだろう。


「その通り…この俺が、ルイン・ディナス……貴様ら人種族が邪悪なる者と恐怖する者だ……!」


「そうか。だったら話は早い……お前を倒す!」好矢はミスディバスタードを構える!


沙羅、メルヴィン、ダグラス、エルミリア、サミュエルが全員武器を構えたが、好矢は指示を出した。


「お前たちは、下がれ。ソフィナ、ロサリオ、ガリファリア……コイツをやるぞ!」


「分かった」「あぁ!」「任せろ」



「なんで!?全員で戦った方が――」と言いかけた沙羅をエルミリアは制して言った。


「例の魔法よ。分かるでしょ?」


「そ、そうか……」


「コールブランドに魔力が集まるように意識して」


「分かった……」



「――発動!」好矢は五大魔器持ちとガリファリアの防護障壁が割られていることに気づき、それを施して話を始めた。

「ソフィナ、魔法バフは使えるか?」


「もちろん……!」


「俺とロサリオとガリファリアに魔法バフを施しながら援護してくれ」


「……分かった」不服そうな表情をしたが、ここは飲み込むしかない。言い合いをしている暇は無いのだ。


好矢はミスディバスタード、ロサリオは試験用の杖、ガリファリアはミスリルの篭手、ソフィナも同じ材質らしくミスリルの杖……

それぞれ全員が再び武器を構え直した。


「死ぬ準備と覚悟は、もういいか?」ルインはそう言うと、自らの杖を構えて不敵に笑って見せた。



一方沙羅たち五大魔器を持つ仲間は……


(ボクと獄弓ごくきゅうジュデッカが有する全ての力を……)

(俺と魔鎚まづちミョルニルの全ての力を……)

(僕と覇杖はじょう明鏡止水めいきょうしすいが持つ全ての力を……)

(私と魔槍まそうゲイボルグが持つ全ての力を……)


((((聖剣コールブランドに……!!))))


「詠唱を始めるから、そのままイメージを続けて」エルミリアは詠唱を始める。

聖剣コールブランドは微かに光を讃え始めた……。



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