第百五十話◆裏切り
「何をするつもり!?」沙羅が言ったのを合図に黒い水溜りから一人の青年が現れた!
その青年は、青い部分鎧を身に着けており、好矢が使っているミスディバスタードにそっくりの剣(ただし、刀身は白銀色)を右手に持ち、左手には恐らく魔法金の装飾が施されている盾を持っていた。
「……!?」その青年を見た沙羅は目を丸くしたまま立ち尽くしていた。
黒い円から青年の全身が出て来ると、青年は自らの意志で円から出た。
召喚で使われた黒い円は、青年を見届けるように、スーッと消えていった。
「どう…して…?」沙羅は言葉にならないような小さな声でぽつりと言った。
「久しぶり、沙羅……」その青年は優しく微笑むと、好矢たちを見た。
「彼らは?」
「アタシの…仲間たちよ」少し嬉しそうな表情になっている沙羅が言う。まさかこの男は……好矢の中で一つの考えがグルグル回る
「お前は何者だ」好矢はほとんど分かっていたが、聞いてみた。
「ガルト・エスだ」その男は確かにそう言った。
「ガルトよ……」エヴィルチャーが後ろから声を掛けた。
「……はい」
「このサラ・キャリヤーと協力し、目の前にいる奴らを全員殺せ!」
「はっ!」ガルトは剣を好矢に向かって構え、沙羅に声を掛けた「サラ、一緒にコイツらを倒すぞ!もしも倒してエヴィルチャーに報告出来れば、もう一度この世界で生を……」
そう言いながら、ガルトの瞳はだんだんと赤身を帯びてきて、言い終える頃には真っ赤な色に染まっていた…
「え…でも……ホントに生き返るの?」
「あぁ!…だから、やるぞ!」
「……え、えぇ!」
あろうことか、沙羅ですらコールブランドを好矢たちに向けた。
「テメェ…!自分が何しようとしてんのか解ってんのか!?」ダグラスが怒鳴る。
「やめてください、サラさん!」メルヴィンも説得に入る。
「ごめんね、皆……」サラはそういうと、ダグラスへ向けて駆ける。
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「…準備はいいな?」ガルトは好矢に向かって言った。
「あぁ……お前にだけは負けるつもりはない」
「……何を言っているか解らんが…全力でいく!」そう言うとガルトは超高速で横一閃に斬り付けてきた!
ミスディバスタードでそれを受けると、キィィン!という甲高い音が木霊した。
「おらあぁッ!!」好矢は思い切り受けた斬撃を押し返し、そのまま横薙ぎにガルトを斬り付けた!押し返された時に瞬時に後ろに下がったガルトは腹部に浅い切り傷を負った。
「ぐっ…!……力は間違いなく俺より上か…!」腹を押さえながら好矢を睨み付けるガルト。
「…降参しなさい!」ガルトと戦っていると、後ろから声が聞こえた。
「サラさん……」メルヴィンの首にはコールブランドが付けられていた!
「……降参しないと……酷いことになるわよ」
「……サラさん、どうして……」
「メルヴィン!とにかく今は降参しろ!」ダグラスは肩から血を流し、その傷口を押さえながらメルヴィンに叫んだ。
「……は、はい!……こ、降参します」
「…良かった。アタシは皆を殺したくはないから……」そう言うと、コールブランドを引く沙羅。
「ハァッ!!」ガリファリアは沙羅が油断したと判断した瞬間、残りの魔力を振り絞ってドラゴンビームを放った!
しかし――
「…効かないわよ」沙羅はビームに向かって手を向け、暗黒属性を使用して魔力をそのまま吸収した。
「そんな、まさか…妾の最強の攻撃が……」そう言うとガリファリアはその場に倒れた。魔力欠乏状態に陥っているようだ。
「次の相手は?」残ったのは、好矢、アウロラ、ロサリオ、アンサ、ダラリア、オルテガの六人だ。
「……アウロラ、ダラリア。援護を頼む。俺が相手をしてやる」オルテガはそう言うと前へ出た。
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キィン!キン!!……好矢とガルト…両者とも一撃もダメージを負わずに戦いが続いていた。
「ガルト……お前はどうして、エヴィルチャーの言いなりに!?」
「俺は、俺の沙羅を護る為に戦っているだけだ。誰かの言いなりになるつもりはない」
「残念だがお前は死人だ!今の沙羅は俺の恋人だ!!」好矢の斬撃により力が入る。
「だったら何故彼女は俺の味方をした!!」そう言うと好矢へ刺突攻撃をし、それは彼の肩を掠めた!
「…クソッ!いきなり召喚されただけのゾンビ野郎が……!!」位置を取るため、横薙ぎの斬撃を再び繰り出す。
しかしガルトは狙い通りには動かず、一気に懐に飛び込んできた!そして……
「そのゾンビにお前はやられるんだ!!」そう言って死角から地を這うように斬撃を繰り出すガルト!その切先は確実に好矢の首を狙っていた!
(し、しまっ――!!)
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