第百四十一話◆ゾンビ初遭遇
今、好矢はパルセニア北西地区の森へ来ている。
その森にもポポイ草(赤い雑草)やソムソム草(青い雑草)などが自生しており、他にも見たことのない葉っぱがあるため、新しいポーションを創ることが出来そうだった。
「…………」好矢は黙々と雑草を手で抜いていっている。
魔法を使っても良かったが、今回使うポーションのことを考えて、わざわざ手掴みで草むしりをしていた。
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――数時間後。
ズッ…ブチッ!……ズボッ!
……どんどん必要と思った雑草を手当たり次第に抜いており、また、青いリンゴがこの森にも自生しており、それは4つほど採った。
そうして採取を続けていると、気付けば数時間が経過していた。
朝食食べ終えてすぐに会議をして、そこからすぐに採取に出かけたのだが、太陽は真上から少し進み、昼時を少し過ぎてしまったようだった。
「好矢くーん?」……遠くない場所から声が聞こえた。
少し経つと、木陰から沙羅が出てきた。
「あぁ、沙羅……どうした?」
「どうした?じゃないわよ!……一体何をしてるの?」
「材料集めだ」
「ポーションの?」
「あぁ……とはいえ、もうかなり集まったし、もういいかな?」そう言って、土だらけになった手をパッパッと叩いて、集めた雑草や薬草類の中から必要な分の雑草を選出し、残りをカバンの容積拡張分へ入れた。
「沙羅、すぐに済むからちょっとだけ待っててくれ」好矢はそう言って、木のボウルと小さい麺棒のような棒とビンを取り出して、ポーション製作を始めた。
「…………」かなり手際良く作る好矢の手さばきに見とれている沙羅。
「…………」黙って葉っぱを日にかざしながら、葉脈に魔力を注いでいっている……。
「……よし、一本完成だ!」好矢は赤紫色のポーションを完成させていた。
……それは、あの魔力を増幅させる、使い方を誤れば非常に危険なポーションだった。
「好矢くん、もしかしてこれって……あの魔力を増幅させるっていうポーション……?」沙羅は赤ワインのような色になったポーションを見ながら言った。
「あぁ。作成するには周りに人がたくさん居る所だと、マズイと判断したんだ」
「ねぇ好矢くん……このポーション、かなり濃く作ってるようだけど……丸々一本飲んだらどれくらい魔力増えるの?」
「……注いだ魔力は2000だから、それくらいは増えるはずだ。……これをダグラスとダラリアに飲ませるつもりだ」
「2000!?」思っていた以上の数値に驚く沙羅。
「これくらいしないと、長時間空を飛び続けるなんて無理だろ?」
「それはそうだけど……」そう言って魔力増幅ポーションを取って、太陽光にかざし眺める沙羅。
「綺麗ねぇ……」
「…飲むなよ?」
「飲まないわよ……アタシ個人としては、これ以上は魔力無くても暗黒魔法は使えるわけだし、困らないわ」
「無くて困っても、あって困る事はないだろうけどな」と言いつつ手は止めずに、また魔力を2000使用して魔力増幅ポーションを完成させる好矢。
「……よし、出来た!」
「でも、魔力を増やすポーションなんてとんでもない代物よ?どう伝えて飲ませるの?」
「俺たちは仲間だ。ありのままを説明して飲ませるしかないだろ」
「……でも、他の人に聞かれるとマズイんじゃ――」
ガサッ!
沙羅が言った瞬間、近くの茂みが揺れた。
「誰だッ!?」
「安心していいわ、生き物じゃないはずよ。アタシが気配に気付かなかったんだもの……」
沙羅がそう言った瞬間、茂みからそれは出てきた。
「グゥァ~……」
それは、焦点の合っていない眼で、腐敗臭を撒き散らしながらボロボロの服装で現れた。
身体のところどころが腐り落ちてしまっている。
「なっ……!?」
「沙羅!戦闘準備だ!」
「えぇ!」
ジャキッ!とコールブランドを構える沙羅。
好矢はポーションを作るだけのつもりだったので、ミスディバスタードは持ってきて居なかった為、魔法で対処するしかなかった。
「ゲームとかの通りで考えると、ゾンビだよな……?」
「好矢くんもゲームとかやるのね……っと、そんな事気にしてる余裕なんて無かったわ!」
「グアァッ!」近付いてきた腕を振り下ろすゾンビ。当然、沙羅にとっては遅過ぎる攻撃。すれ違いざまに振り下ろしてきた右腕を斬り落とした。
一瞬にして腕を斬り落とされたが、腕が無くなった事に気付いてか、それとも気まぐれか、ゾンビはそのまま反対の腕でその奥にいた好矢に攻撃を仕掛けた!
「おっと!」そのまま攻撃を躱す好矢。
(突風…眼前のゾンビを吹き飛ばす……魔力80使用)「発動ッ!」
ポーション生成で合計4000以上も魔力を使用していたので、上級魔導語を使用して魔力を抑えて魔法を放つ。
ゴゥッ!!という音が耳をかすめたと思えば、その瞬間目の前にいたゾンビは物凄い勢いで近くにあった木に激突し、身体はバラバラになった!…しかし……
「うぐぅ~……」唸り声をあげながら、偶然繋がっていた、胴体と片腕でのそのそと自分の足の方へ近付き、足を一つ一つ器用に自分の身体にくっつけていった…。
「なッ…!?何だコイツ……!!」
「どうやってコイツは……!」沙羅がそう言った瞬間、眼に飛び込んできたのは少し離れた位置にある転がっているゾンビの頭だった。
眼は相変わらず焦点は合っていないものの、自分の身体を見つめているのが直感的に分かった。
“このゾンビは頭を潰されない限りは動き続けるのでは?”という結論に至った沙羅は…
「好矢くん!あそこのゾンビの頭を魔法で潰して!」
「? …あ、あぁ!」
(降ってくる大きい氷塊……ゾンビの頭上に……魔力70使用)「発動!」
キィン!という音を鳴らしてゾンビの頭の上に生成された氷塊はそのまま地面に転がっているゾンビの頭へ自然落下し、腐食して柔らかくなっているゾンビの頭を潰した!
「ぐ…ぅ……」小さいうめき声をあげて、既に両足を付けて立ち上がっていたゾンビの身体はバタリと倒れた。
「……パルセニアにはこんな魔物がいるのか……!」
「アンデッドの魔物がいることは知っていたけど初めて遭遇したわ……でも、昼も活動出来る何て知らなかったわ……」
「ここは危険だ……早く皆の所へ戻ろう」
「そうね」
好矢と沙羅は足早にホテルへ戻るのであった……。
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