第百二十三話◆新たな仲間


――翌日―玉座。

この場には、皇帝、側近、兵士たち……そして、好矢、ダグラス、鳥人族の二人がいる。


「……これからは、良い関係を築いていきたい……族長殿はこれを受け取るがよい」皇帝は小箱を族長へ渡した。


「これは……?」


「我々ドワーフ族の技術で作られた彫像だ。異種族との交流の為の贈り物と考えてくれれば良い」


「……ありがたく頂戴しよう……生憎だが、今回は急ぎで参った為、我々鳥人族側で用意はしていない…が……これを渡す」族長はそう言うと、自分の翼を揺らして五本ずつ……計十本の羽根を抜いた。

腕が無いため、それを拾って渡したのは好矢だ。


「おぉ……これは……!」目を輝かせる皇帝。


「それは……?」好矢が渡しながらも聞いてみた。


「これはハーピィの羽根……武器や防具を製作する時の貴重な素材だ!」


曰く、ハーピィの羽根と呼ばれるその小さめなウチワほどのサイズがある羽根は、加工して武器や防具に利用されるそうだが、特殊な使い方をすることで、装備の強度はそのままで重さを軽減するそうだ。

つまり、物質そのものの重さを減らすという、物理的に考えると有り得ないような、まさに魔法のアイテムだった。


「ハーピィの羽根……ありがたく使わせて頂こう。それで製作したものを鳥人族からの贈り物ということにさせてくれ」


「承知した」そう言って、族長は敬礼をして玉座の間を出た。


「……ディスミル皇帝」


「どうした?トール・ヨシュア」


「無事、鳥人族との和解が成立した所で、私からの二つ目のお願い事がございます」


「申してみよ」


「……ドワーフ族の仲間を一人で構いません。皺月の輝きに加わっていただきたいのです」


「何…?………理由を申せ」


「はっ、我々皺月の輝きは七代目魔王ガルイラの命により、全人種族を味方につけ、邪悪なる者を討ち滅ぼせとの命令をいただきました……それの手伝いをしてくれる強力な味方がほしいのです」


「……なるほど、それでダグラス殿が……?」


「はい」


「しばし待たれよ」


そう言って、皇帝は玉座の奥へ歩いて行った。



……待つこと十数分。ようやく奥から皇帝がやって来た。


「これをテッコーの町の武器屋へ持って行くがよい」そう言って封筒を渡してきた。

この世界では基本的に巻物が多いので、通常日本で目にする茶封筒を渡されたことに一瞬驚いたが、素直に受け取った。


「こちらは……?」


「……新しい仲間を引き入れるためのチケット……と考えればよい」皇帝はそう言って、少し微笑んだように見えた。



――テッコーの町近郊。


馬車に乗って話している皺月の輝きのメンバー。


「――ってことなんだ」


「仲間を引き入れる為のチケットか……中々解せんな」ダグラスは言う。


「……でも、本当にドワーフ族が仲間になってくれたら次はいよいよ魔族で最後ね……」沙羅は言う。


「どうだろう?」その発言に疑問で返す好矢。


「どうして?」


「鳥人族という新しい種族がいたんだ……他にも新しい種族がいる可能性は考えられないか?」


「う~ん…そんなに一気に人種族なんて生まれる?」


「だから、どうだろう……ってことだ。可能性の話。」



テッコーの町へ到着する一行。


「――では、私はこれで失礼する。……皺月の輝きの活躍を祈っているぞ」鳥人族の族長エッダ・グラースはそう言って全員と翼を使った握手をして飛び去って行った。


「……改めてよろしく頼む。アンサ・クリッドだ」族長が飛び去っていくのを見送ったアンサがこちらへ振り向いて翼を使った握手を求めてきた。


「よろしくな、アンサ!」好矢はそう言って、仲間を連れて武器屋へ向かった。


――テッコーの町―武器屋。


「邪魔するぜ!」扉をガチャりと開けて店へ入るダグラス。


「お、おかえりなさい!ダグラスさん!」頬を桃色に染めて笑顔で出迎える可愛らしい小太りの女性ダラリア。


「あの子、解りやすいわね……」アウロラはニヤニヤしながらダグラスを見る。


「う、うるせえ!」アウロラの視線に気付いたダグラスはとりあえず反抗する。


「ダラリアさん、こんにちは。……皇帝からこれを渡すように言われたんです」好矢はカバンから茶封筒を取り出してダラリアに渡した。


「あっ、ハイ!」茶封筒の中身をガサガサと取り出して、読み始める………。


「………………やっぱりだ」ダラリアはそう言った。


「何がだ?」


「……お店を弟に任せて、皺月の輝きで戦えって……」


「お、お前がか!?」ダグラスは目を白黒させる。


「私は元々、グラディップの最高防兵でしたから」笑顔で答えるダラリア。


手紙にはこう書いてあった。

元グラディップ最高防兵ダラリア・ベルに命ず。弟であるドラリア・ベルに武器屋を継がせ、皺月の輝きの構成員として尽力せよ。以上。

そして帝都グラディップ・ディスミル皇帝の証であるハンコが押されていた。

ドワーフ族領に住む全ての臣民が必ず従わなければならない手紙であった。


「……と、いうわけです!」胸を張って言うダラリア。

「こう見えて……というか見た通り、私は防御能力には自信があります!必ず助けになってみせますよ!」


また、二人の仲間が出来た。

最初は好矢とエンテルの二人だけだった皺月の輝き。今はメンバーが増え、賑やかなパーティになっていた。

好矢、沙羅、アウロラ、メルヴィン、ロサリオ、ダグラス、ガリファリア、アンサ、ダラリアの九人が構成員だ。


とりあえず、好矢は新たに加わったアンサとダラリアの能力だけは冒険者ギルドへ行って魔力検査用のイスで見せてもらうことにした。


――冒険者ギルド。

受付に一声掛けて、二人を座らせる。……仕方のない事だが、周囲からアンサへ対する怒りの眼差しは物凄かった。



「魔法モニター・オン」



名前:アンサ・クリッド 所属:皺月の輝き

職業:アーギラ巡回者 趣味:自分の鉤爪研ぎ

魔力:2148

使用可能魔法属性:金属

使用不可魔法属性:火・水・氷・風・雷・土・光・闇・植物

得意魔法属性:金属



名前:ダラリア・ベル 所属:皺月の輝き

職業:元テッコー武器屋店主 趣味:ダグラスの事を考えること

魔力:363

使用可能魔法属性:水・風・闇・金属

使用不可魔法属性:火・氷・雷・土・光・植物

得意魔法属性:闇



二人の能力値はこのようになっていた。



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