第百十七話◆遭遇!鳥人族

出発をしてから半日が経過した頃には、アーギラ黒山の魔物を今までよりも簡単に倒す事も出来るようになってきた。

そして、ちょうど朝に再出発した辺りから道端に落ちているハンターの亡骸の量が増えていく……。


しばらく登ると、少し下り坂になっている部分があった。

その先を見てみると、そこを降りてから崖というにはなだらかだが、坂というには急過ぎるような坂を登って進んで行くようだ。

地形としては、急な坂に囲まれた盆地のようになっている……というと分かり易いだろうか?

次の瞬間……

「「「!!」」」皆が突然固まった。


しかし、好矢は先へ進む道を見ていたので、固まっている理由が解らなかった。


「どうした?」好矢は隣に目を向けて、沙羅に話し掛けた。


「好矢くん…あれ……」下り坂を降りた所にある祭壇のようなものを指差した。


「!!」好矢も気付く。

円形になっていて、そこだけ土の色が白っぽい色をしていたので祭壇だと思って気にも止めていなかったが……それは、ハンターの亡骸が山積みになったものだった。


「あれ…なんだ……?」好矢が言う。


「あそこでほとんどのハンターが死んだ……ってことじゃねーの……?」ロサリオが言う。


既にボロボロであるものの、様々な装備品を着けている亡骸がほとんどなため、間違いなくここでほとんどのハンターが命を落としたと言えるものだった。

しかし、そこを通らなければ先へ進めない。


皆で魔力を出し合って、強力な物理魔法の防護障壁を張った。もちろん、好矢が発見した金属属性と氷属性を使ったものだ。

そして、意を決して、好矢、沙羅、ダグラスを先頭に下り坂を降りていく……



「これは……酷いな……」好矢がそう言っていると、後ろから声が聞こえた。


「死人漁りすんぞ」ダグラスの声だった。


「解りました」とメルヴィンも言って、その亡骸に近付いていった。


「え?え?何してんだ!?」好矢が言うと、ダグラスが教えてくれた。


「この行為は死人漁り……死んだハンターから金品を頂く行為だ。これを行ってキチンと埋葬してやる必要があるんだ」


話を聞くと、死亡してあの世へ行き、転生させてもらう際にはお金や金目の物をたくさん持っていると、転生することが出来ないんだそうだ。

金や装備類の金属の物は、転生を叶えてくれる妖精が忌み嫌っている為、ちゃんと死んだ人間から金品を奪ってから埋葬する…というのが、正しい埋葬方法だということだ。


日本でこんなことをしたら間違いなく犯罪だが、ハンター同士でこの行為は暗黙の了解とも言えるものであるため、この世界の人間は何も不思議に思わず金品を盗んでいった。


要は死んだ人間は金品を奪ってもらえることで転生が出来るし、ハンターはその盗んだお金も稼ぎになるのでウィンウィンなのだろう。

好矢はその死人漁りはどうしても好きになれなかったので、周辺の警戒をすることにした。

これだけ大量の死体があるということは、ここで何かがあったということになるからだ。


「じゃあ、俺たちゃ死人漁りしてっから、好矢と沙羅で周辺警戒頼むぜ」ダグラスがそう言ったので、それに従っておいた。

しかし、王子であるメルヴィンがこの行為を知っている上に進んでやることには驚きを隠せなかった。

そんな中――


「私達の巣へ入ってきた愚か者は貴様らか!!」上空から人間の声が響いてきた。


「誰だ!?」好矢は上を見上げる


そこには、恐らくハンターから死人漁りをして手に入れたであろう装備品で身を包んだハーピィがいた。

見た目はほとんどアーギラ黒山に登り始めた辺りで遭遇したハーピィにソックリだが、奴らは喋れなかった。

しかし、こいつらは喋れるし、装備類を着ている。

……腕がないのにどうやって部分鎧を着ているのだろう……?


しかし、部分鎧を着ているにも関わらず飛んでいられるというのは、相当翼の力も強いということ。翼で攻撃されても相当な痛手になるだろう。


「お前たちは何者だ!!」好矢は飛んでいるハーピィに声を掛けた!

すると、ハーピィは降りてきて……

「貴様はハンターか!よくも我々の巣に忍び込んでくれたな!!」問答無用で鉤爪攻撃を仕掛けてきた!


ミスディバスタードでそれを抑え、一旦バックステップで離れた。


テッコーの町で話を聞いていた通り、相手は喋ることが出来るが意思疎通は出来ない様子だった。

こちらが何を言っても戦闘を辞める気配がないのはもちろんのこと、的外れな返答しかしてこない。相手に一方的に何かを伝えることしか出来ないようだ。


「発見があと100年遅けりゃ、新しい人種族の一つになってた可能性があったかもしれねぇのにな……」ダグラスはそう言って、ボロボロのハンマーを構えた。


「「我々は鳥人族!やがては人種族の頂点に君臨する種族だ!!」」鳥人族の群れはそう叫ぶと一番綺羅びやかな装備をしている、恐らく族長であるハーピィが言った。


「全軍突撃!!」一斉に鳥人族が襲ってきた!!


それと同時に不可解な事を発見する好矢。


「おわっと!?」超スピードで襲い掛かってきたのを何とか躱して、その鳥人族の鉤爪は地面を抉る!


「なんで族長の声だけはコイツら理解できたんだ!?」偶然、先程の攻撃を躱して、バックステップで下がった先にアウロラがいたので、背中を預けながら言った。


「もしかしたら……だけど、族長が出す声には特有の魔力のようなものがあって、それを使えば人種族の言葉が理解出来る……ってことじゃないかしら?」


「だったら、鳥人族が意思疎通出来る存在であれば、コイツらも……仲間にできる可能性があるってことか?」好矢はそう言ってみた。


「そんなこと言っても、襲い掛かってくるのを倒さないように説得しないといけないし……魔物から人種族として認められたケースは…………!!」

アウロラが考えた様子だったが、一つ思い出したようだ。


「そっか……ゴブリン……」好矢が提出した論文…魔物として認識されていた存在が人種族として認められるケース……つまりは、エンテルのことだった。

その世界へ広まるには時間が掛かると思われていたものの、好矢の論文を見た人間がゴブリン族を退治するのではなく、意思疎通を図る計画を始めたそうだ。

結果、かなり早い速度でゴブリン族が人種族の一つであることを広めつつあるようだ。


「コイツらもその可能性があるなら……!」好矢はそう言った。


「おい!族長と話をさせろ!」好矢が言っても、問答無用で攻撃を仕掛けてくる。しかし、退治してしまうと話すら聞いて来なくなる……。


ガリファリアがそこへ進言した。

「ヨシュア……妾に任せてもらえないだろうか?」


「あ、あぁ…いいけど、何をするつもりだ?」


「…任せろと言った」

ガリファリアはそれだけ言うと、族長へ向かって真っ直ぐ歩き出した。


「……発動」

ガリファリアがそう呟くと、ガリファリアに攻撃を仕掛けて襲い掛かってきた鳥人族は途中で力が抜けたようにバタバタと落ちていって動けなくなっていた。

何の魔法を使ったのか不明だが、ガリファリアは族長と話をするために行ってくれた。


周りにはまだこちらに攻撃を仕掛けてくる存在がいる。そいつらを殺さないように無力化しなければならない……。



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