第百十一話◆精霊の雫
「……報告お疲れ様」アウロラが一言そういうと続けた。
「ねぇ、メルヴィン……この池の水見てごらんなさい」話が一段落ついた所で、アウロラが池の水を指差して言った。
「え……?」メルヴィンが池の水へ近付く。そして、しばらくの沈黙…………
「えっ、嘘…えっ?もしかしてこれ……」明らかに動揺し始めるメルヴィン。
「メルヴィン、この池の水…ヨシュアくんしょっちゅう飲んでたんだってさ!」というアウロラの言葉に驚きながら「何て贅沢な……!!」と言うメルヴィン。
しかし、まだ状況が掴めない好矢。代わりにロサリオが聞く。
「その水、何なんですか?」
「……これは“
「まさか、俺の魔力の源って……」以前から気になっていた、とんでもない量の魔力の存在理由を理解する好矢。しかし……
「間違いなくこの精霊の雫のお陰ね……ただ気になることが一つ……」
「気になること?」
「そう……精霊の雫のお陰で高くなりやすいって言っても限度があるの……どれだけ飲んだら貴方みたいな上がり方するのかしら?」水の正体を知りつつも不思議そうにするアウロラ。
「この水が、どんなものなのかは知らなかったですが……たくさん飲んだ記憶があるので、それが原因なのでは……?」そう返した好矢。その言葉に頷きながら納得するアウロラ。
因みに余談だが、ガブリエルがエリシアの魔力を越えていた理由は、ここの水を少しだけ飲んだからだった。当然本人は、この水の正体は知らず、ただの美味しい湧き水だと思っていたようだが。
「…この水は、今後も十分な魔法能力の発展が残された人間じゃないと効果を発揮しないのよ……そういう意味では好矢くんもロサリオも効果を発揮するんじゃないかしら?」アウロラはそう言った。
「そうなのか!よぉ~し!」そう言ってグビグビと精霊の雫の水を飲み始めるロサリオ。
「……腹壊すなよ。冷たい水なんだから……」好矢は一応忠告した。お構いなしに飲みまくるロサリオ。
「とはいえ……間違いないのは、その精霊の雫のお陰だけじゃないわね。好矢くんが精霊の雫のお陰だけなら、あの天才のソフィナちゃんよりも魔力は低いはずだもの。何かしらの適正があったんじゃない?」アウロラは自分の中にある考察を話した。
「そしてもう一つ……好矢くんが魔法の知識がゼロだった事も関係あるんじゃないかしら」続けて自分の考えを述べるアウロラ。
「どういうことですか?」不思議そうにしている好矢。
好矢には偶然にも魔法能力をかなり発展させる適正が備わっていた。しかし、魔法に関する知識が完全なるゼロだった。
この世界の人間ならば、小さい頃から攻撃魔法など以外の非常に簡単なレベルの魔法(紙とペンを創り出す魔法など)であれば少しなら扱える。
しかし、その魔法の知識すら無かった好矢……つまり、これから無限大に成長する可能性を秘めている人間が、大量の精霊の雫を摂取した……
それにより、突然変異とも呼べるほどのとてつもないスピードで魔力が育っていったのではないか?ということだった。
「なるほど……」それなりの理由に納得する好矢。
「その膨大な魔力でお前はアデラちゃんと……!ぐびぐび」精霊の雫を飲みながら、また変な発言をするロサリオ。
「だから……アデラはガブリエルの彼女なんだって。……俺は関係ないんだよ。いい加減理解しろよ。そろそろマジでぶっ飛ばすぞ。」好矢が中学時代を思い出し少しニラミを利かせて言うと…
「ぼ、暴力反対……ッ!!ぐびぐび」すぐに反応するロサリオ。それでも精霊の雫から離れる気配が無い。ある意味、肝が据わっていて見習うべき部分があるようだ。
ずっと蚊帳の外状態であったダグラスは、魔力が大して備わっていないし、彼の魔力は発展途上ではないので退屈そうにしていた。
「おい、その精霊の雫って物が凄いものなのは解ったけど、早く行こうぜ?のんびりしてる時間、あまりねぇんじゃねぇか?」
「っと…そうだな。アウロラさん精霊の雫のこと、ありがとうございます。……行こう」好矢が言うが聞こえていないのか、精霊の雫を飲み続けるロサリオ。
「おい、さっさと行くぞ」ガリファリアはロサリオの首根っこを、むんずと掴んで無理矢理その場から引き剥がす。
「イヤアァァァァ!!俺のマイ・アデラちゃんウォーターがぁぁぁぁぁぁ!!!」アデラがどこに関係しているのか不明だが、ロサリオの絶叫がバルトロ森林中に木霊した。
「うるさい黙れ」ガリファリアは、ロサリオの頭をゴチンと殴る。
「えふっ!」大人しくなったロサリオを担いで先へ進んでいる好矢のところへ急ぐガリファリア。
因みに、後で“マイ・アデラちゃんウォーター”とは何なのかと聞いてみたらロサリオは「飲めばアデラちゃんを助ける力が手に入って、邪悪なる者を俺の功績で退治出来ればアデラちゃんが振り向いてくれるウォーター…名付けてマイ・アデラちゃんウォーターだ!」と言っていた。
どこまでもおめでたい頭をしているが、そこまでアデラの事を大切に思っている事に関しては感心せざるを得なかった。
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