第七十一話◆効率の良い魔力上昇法

「……さて、明日には龍の渓谷へ出発するしどこか行きたい所はある?」好矢は仲間三人に聞いてみた。

好矢が行きたかった所は魔導士ギルドだ。現在の魔力数値を調べたかったのだ。


「ボクは魔導士ギルドに行きたいです。」好矢が思っていたことと同意見を言ったのはメルヴィンだった。


「そうか、俺も行きたかった所だけど……沙羅とアウロラさんは?」


「焼肉食べたい!」そう言ったのは沙羅だった。

前の世界の時に家族で焼肉を食べに行くと、大抵いつも沙羅が一人でビールを飲みながら焼肉をバクバク食べていたのを思い出した。

当たり前のように三、四人前をペロリと平らげていた沙羅。あんなに食べてて太るどころか、強く素早くなる一方なのは少し驚きだったが……。


「…あればいいわね。」アウロラはそう言うと続けた。

「私は今の所特に行きたい所はないから、付いて行くわ。」



――魔導士ギルド。


四人は魔導士ギルドに到着した。

魔族領でも購入した覚えのある、串焼きを三本抱えて、ムシャムシャ食べているのは沙羅だけだった。

ギルド内では酒場も併設されている事が多く、自由に食事することも許されているし、酒やタバコも売っている。

ハンターで購入することが一番多いのは、薬草タバコというタバコだ。このタバコは身体に害が一切なく、薬草を焼くことで効果が増すと言われ、一部の人からは好かれている。


さて、好矢たちはそのまま魔導士ギルドの受付へ行き、案内を受けて四人全員同時に魔法モニターに座った。


「「「「魔法モニター・オン!」」」」



名前:刀利 好矢 所属:皺月の輝き

職業:放浪魔導士 趣味:草むしり・魔物狩り

魔力:3883

使用可能魔法属性:水・氷・風・雷・土・光・植物・金属

使用不可魔法属性:火・闇

得意魔法属性:植物



名前:刈谷 沙羅 所属:皺月の輝き

職業:エクスナー 趣味:好矢をイジること

魔力:1809

使用可能魔法属性:暗黒

使用不可魔法属性:火・水・氷・風・雷・土・光・闇・植物・金属

得意魔法属性:暗黒



名前:アウロラ・ベレス 所属:皺月の輝き

職業:魔王軍上等魔導兵 趣味:料理

魔力:4436

使用可能魔法属性:火・氷・雷・土・光・闇・植物・金属

使用不可魔法属性:水・風

得意魔法属性:氷



名前:メルヴィン・バート 所属:皺月の輝き

職業:サヴァール王国第二王子 趣味:読書

魔力:3155

使用可能魔法属性:火・水・氷・風・雷・土・光・闇・植物・金属

使用不可魔法属性:なし

得意魔法属性:火



受付からもらったカードを見せ合う好矢たち。


「アウロラさん、また増えてますね。」好矢が言うとアウロラは言った。


「トーミヨで教わったやり方で魔力増やしてるからね。」


「ボクが一番魔力低いとは………」しょんぼりしているメルヴィン。それを元気付ける沙羅。


「心配しなくて良いわよ。この二人の魔導士は天才で知られてるらしいから。」


「そういえば……そのトーミヨで教わってる魔力を増やす方法ってどんなものですか?」好矢が聞いてみた。

トーミヨに在籍していない以上、本来なら聞いてはいけないし教えてはいけないものなので、ダメ元で聞いてみた。


「教えてあげる。三人ともちょっと来て。」


アウロラは皺月の輝きのメンバーを全員、ギルドの一番隅にあるテーブル席へ座らせて、防音魔法を使い、その上から魔法防護障壁を展開してくれた。

そこまで徹底しないといけないほど機密度が高いものなのか……と関心した。


「いい?これから言うことは誰にも言っちゃダメ。家族はもちろん知り合いやどんな人にも。それが守れないなら、この防音魔法からしばらく出て行って。」


………………

もちろん、誰も出て行くことはなかった。


「じゃあ、これを唱えてみて。」そう言って紙にペンで「満優弍優不空五」と書いた。


「うん?中国語?」沙羅はそう言った。確かに中国語っぽく見える。


「まんゆー…にゆー…ふくうご?」と言う好矢。


「この上級魔導語って、普通に読むとそうなるわよね。」アウロラはそう言って続けた。

「読み方は、満優ミュー弍優ニュー不空五ファイよ。」


「本当に中国語っぽいねぇ。」沙羅は答える。しかし、この時点で好矢はピンときていた。

この文章は当て字に近いような気もしたが、大学でたまに勉強する機会があった、ギリシャ文字を当てはめたのだ。


ミューをμ……Mを表す。これを魔力のMと考える。

ニューをν……Nを表す。これを日本語の無しと考える。

ファイをφ……これに限っては当てはまるアルファベットは存在しないが、数字の0に斜線が入ったものと考える。

こうしてみると、魔力 無し φ(0に斜線)魔力を減らさないような文章に見える。

これを、漢字……つまり上級魔導語で当て字で当てはめたのか?と思っていた。


アウロラ曰く、この上級魔導語にも意味があるらしい。

まず、満優…これは満ちる魔力に優れるという意味。そして弍優…これは二つ目の魔力にも優れるという意味。二つ目の魔力というのは恐らく魔法防御のことだろう。

そして、不空五というのは、魔力が空になることはなく、5は残る……という意味だ。と言っていた。


この最後の不空五については、魔力が減らないようにする言葉にも聞こえたが、すぐにその理由が明らかになった。

ただ唱えるだけではなく、魔力を使用できる最大まで使用して唱えるというのだ。

つまり、好矢で言えば、魔力3883使用して「満優弍優不空五」と唱えるのだ。

すると魔力が0になり魔力欠乏状態になることなく、5だけ残り、回復し切った頃にはかなり魔力が増幅されるそうだ。

ただし、肉体と精神的な疲労が激しく、毎日何度もやる気にはなれないそうだ。


「帰って夕飯を食べた後にやってみることにするよ。ありがとう。」好矢はそう言っておいた。

どれくらい上がるのかは不明だが……。




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