第六十九話◆ヨシュアvsメルヴィン

向かい側の門から、一人の人間が入ってきた。

「……キミがボクの対戦相手か。ヨロシク。」髪は特徴的で、全体的に銀髪だが前髪の真ん中から後頭部の真ん中へかけて黒髪になっている。

着ている服はかなり質の良さそうな服で、緑色の光沢感のあるローブを羽織っていた。左手には紫水晶球が付いた杖を持っており、背中に弓を背負って腰には矢が差さっている。

三角帽子こそ被っていないものの、典型的な魔導士のような格好をしていた。


「ボクは、メルヴィン・バートだ。キミは?」メルヴィンは自己紹介をした。


「俺は……って、えっ?バート……?」そう言ってフレッド王を見た。

フレッド王は、好矢が何を聞きたいのかを察して、答えてくれた。


「そやつは、この国の第二王子、メルヴィン・バートだ。弓術と魔法に関しては特に秀でている、この国でもトップクラスの実力者だ。」


「なるほど……。俺の名前は刀利好矢。よろしく頼む。」メルヴィンにそう言うとヨシュアはミスディバスタードを抜く。


「じゃあ、三分で片付けさせてもらうよ。」メルヴィンはハハッと笑って、杖を構えた。


好矢は試合が始まる前、エルフ族は自分に自信のある人間が多いという話を沙羅から聞いた。

逆に自分の得意分野で負けてしまうと、たちまち自信を無くしてしまうそうで、自分よりも優れた相手に抗おうという人間族や魔族が持っている感性は無いらしい。

だから魔法で圧倒出来てしまえば簡単に倒せると言われた。

実際はそんなに上手くいくわけがないが、何か出来るはずだと考えていた。

そこで思い付いたのが、しばらくミスディバスタードで戦闘を行うというものだ。草むしりをする時によく風属性を使っているので、

植物属性の次に得意な属性は風属性だった好矢には、ある策略があった。


フレッド王が号令をかけてくれた。

もちろん、模擬戦と同じく戦闘フィールドの上には、好矢とメルヴィンの障壁ゲージが表示されている。

「では、試合開始ッ!」


(光魔法行動予測……視界の上に表示……魔力200使用。)

(金属魔法…物理防ご障壁……魔力80使用。)

「「発動!」」


「でやあぁぁぁっ!!」好矢はそのままミスディバスタードを構えてメルヴィンに走り出した。


「まさかそのまま斬り掛かるつもり?物理防護障壁が見えないの?」好矢の行動を見て笑っているメルヴィン。


(氷属性…魔法破壊障壁……ミスディバスタードに……魔力60使用。)「魔法伝導210!発動ッ!でやぁっ!!」


「なッ……!?」斬られる直前の瞬時の判断でバックステップを使って下がったメルヴィンは軽傷で済んだ。


好矢がやったのは、氷属性の魔法に強い特性と魔法防護や魔法反射の性能を生かして、剣に魔法破壊という新たなジャンルの障壁を展開させ、

そのまま斬りつけたので、相手が張った物理障壁は一撃の物理攻撃でいとも容易く破れてしまう。

しかし、本当に考えていた策略はこの程度のものではなかった。


(火属性……逃げても追い続ける火球……魔力250使用。)「発動!」

高速の火球が飛んできたので、咄嗟に躱すが好矢を通り過ぎていった火球はUターンをするようにして再び好矢へ向かって飛んできた。

「分析防御してもいいが……ここは利用させてもらうか。」


その火球を好矢はミスディバスタードで斬り付けた!魔法破壊の障壁がある。

しかし……



ドォォン!!という爆音を上げた。

斬って真っ二つになった火球は爆発を起こし、好矢の魔法防御でダメージを押さえ込んだ。

魔法の抵抗力を高める障壁や、魔法をそのまま跳ね返す障壁とは違い、その場で破壊する魔法なので火球が壊された時に爆発してしまったのかもしれない。


「そうか!」あえて自分からダメージをくらった好矢の考えに気付かず、火球魔法をたくさん作り始めるメルヴィン。


全て斬るとでも思っていたのだろうか?好矢は瞬時に脳内で詠唱を済ませ、ミスディバスタードに使用する。

詠唱文は(氷属性…魔法反射障壁……ミスディバスタードに……魔力100使用。)「魔法伝導210!発動!」



飛んできた火球は全て打ち返す!

複数飛んでくるので、殆どを躱しながら打ち返しまくるが、メルヴィンの火球攻撃が止む気配がなかった。

そこで、好矢は一つ考えることにした。


元々やろうと思っていた策略ではないが、このままでは危険なので打ち返しながら準備をした。


(風属性……強風……打ち返した火球が上空に残留……魔力1200使用。)「発動!!」


発動後、好矢が火球を打ち返す度に、火球は上空に集まり徐々に大きくなっていく……。辺りには最初の爆発による砂埃も舞っているので、そのことに気付かず詠唱を続けるメルヴィン。



「はぁっ…はぁっ……どうだ!!」好矢に向かって夢中になって火球を撃ちまくったメルヴィンは、どうやら魔力が残り少なくなってしまったようだ。


(風属性……風圧……上空の火球を凝縮…………メルヴィンに向かって突風で火球を飛ばす!……魔力250使用。)「発動ッ!!」


ゴウッ……!という火の音が一瞬聞こえた。

次の瞬間、ズドオォォォォォン!!という轟音を立てて、メルヴィンの足元から爆炎に包まれた!!


一番最初の斬撃で、一割ちょっと与えていた障壁のゲージが一気に空になった。


「俺の勝ちだな!」好矢はミスディバスタードをしまった。


「グッ……ちくしょおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

メルヴィンは膝をついて叫んだ。




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