第二十七話◆エンテルを救え
好矢たちが、バルトロ森林に入ったその日の夜……。
この日一日で、青いリンゴは10個ほど集めていた。
松明で地面と木を確認しながら歩いて行く。
「何かあるの?さっきから目印があるけど……」
「俺が転移した場所がある。少し開けていて、中々美味しい飲水がある。」
「へ~ぇ。」
「ところでよ、そこに着くまでにゴブリンと遭遇する確率もあるんじゃないか?」
「あぁ、だから青いリンゴ集めておいたんだろ?」
「なるほどな……。」
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バルトロ森林―池――。
ガブリエルの不安は杞憂に終わり、池がある所にテントをはった。
そのテントの中で、保存食を一食分と食後に三人は一つずつ青いリンゴを食べた。また明日採れば問題ない。
好矢は食事を終えた後、図書館で借りたゴブリンに関する本を読んでいた。共通文章で書かれている物は読めないので、借りたのは魔導語で書かれているものだけだ。
そこに書かれていたのは、人間と同じく、夜は寝ているという情報だった。……この情報を知ってから行けば良かった。
ゴブリンは夜中はよっぽどの事が無い限り、巣から出て外出しないそうだ。
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ドドドドドド……!!急に少し離れたところから騒音が聞こえた。
ちょうどテントの外で、青いリンゴを食べながら見張りをしていたガブリエルが最初に異常に気付いた。
「な、なんだ!?」
テントに戻り報告。
「トール!ソフィナ!起きろ!!あっちで大きな音が聞こえるぞ!!」
そう言って、音がした方を指差す。
その間も、ドォーン!!ズバァァァン!!という明らかに魔法を使った音が聞こえる。
「むにゃ……。」
ソフィナは初めてのことで少し寝ぼけ眼だったが、好矢はすぐに異変に気付いた。一番最初に脳裏に浮かんだのは、エンテルの身の危険だ。
「すぐに行くぞ!」
好矢はそう言って、ソフィナを軽くビンタした。
「…いたっ!何を……!」
「魔物の命が掛かってるかもしれない時に寝ぼけてんじゃねえ!置いていくぞ!!」好矢は思い切り怒鳴って、ガブリエルと共にテントを出た。
「そ、そんなつもりは……。」ソフィナは俯きながらそう呟いた。……そして、自分で両頬をパチンと叩いて、杖とカバンを持ってテントを出る。
ソフィナがテントから出てきたのを横目で一瞬見ると、好矢が言った。
「……ガブリエル、金属の防護魔法を頼む。」
「金属魔法でいいのか?」
「あぁ、頼む。」
(この範囲……人間に物理ぼうごしょうへき……)「…発動!」
パァン!と音を立てて、三人の周囲が一瞬銀色に輝く。
(物理障壁の上に、氷属性の魔法障壁……魔力200使用。)「発動!」
ガブリエルが張った防護魔法の上にさらに魔法障壁が発動する。
「なッ!?こんな事が出来るのか!」
本来、金属の物理防護ならそれ一つ。氷の魔法防護ならそれ一つ……両方かけたい場合は土属性の物理魔法防護だが、土属性はその分、防御力が落ちてしまう。
数字で表すと、金属は物理防御100、氷は魔法防御100に対して、土属性は物理魔法防御が70程度になってしまうのだ。
好矢は、調合の研究の傍ら、防護魔法についても少し調べていると、物理防護魔法から間隔を2、3mmほど空けて、その上から魔法防護魔法を発動すると、上手くいくことが分かった。
魔法防護の上から物理防護が発動しない理由は、最初に張っていた魔法防護によって、物理防護が弾かれてしまうからだ。
当然ながら、ここでそんな説明を二人にしている場合ではないので、黙って走り出す。
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また開けた場所に出てきた。
奥の岩肌には穴が空いていて、そこの入口のゴブリンたちが倒れている。
そこに近づいて行き、好矢は作っておいた、体力回復ポーションをゴブリンに飲ませた。
体力回復ポーションは、文字通りスタミナを回復させる。走って疲れた後に飲むと、一瞬で疲れが消え去る、一般では売られていない代物だ。
次に、傷を癒やす効果のある回復ポーション。店にあるのと同じようなものを、ゴブリンに飲ませる。
すると、ゆっくり目を開けたのと同時に、好矢に向かって攻撃を仕掛けてきた。
「わふー!!」
ガツンッ!
「うわっ!?」頭を強い衝撃が襲う。物理障壁のおかげで、ちょっとした軽い痛みで済んだ。これが土属性の障壁だったら、もっと痛かっただろう。
「やりやがったな!」ガブリエルが構える。
「いや、待て!」好矢はそう言うと、紙に「おちついてくれ なにがあったんだ?」と書いた紙をそのゴブリンの方へ投げた。
少し怪訝な顔をしたゴブリンは、木の枝を拾って地面に文字を書いた。「おまえたちに おれたちの す がこわされた」
それを見てソフィナが言った「本当にゴブリンと会話が出来るのか……。」
「おまえたち ということは にんげんのやつらが おまえたちをおそったのか?」と書くと、
「そうだ」と、ゴブリン。
「おれたちが まもってやる おれは とうりよしや えんてるのともだちだ」好矢がそう書く。
その文章と、好矢の顔をしばらく交互に見るゴブリン。
「…………わふ。」
ついてこい。というような手招きをして、ゴブリンの巣と呼ばれるその洞窟に入ることが出来た。
「エンテル!どこだ!!」洞窟で好矢が叫んだ。
するとその奥から、三人の人影が現れた。
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