第二十一話◆大怪我
戦闘フィールド全体に広がった衝撃波が消える前に、アデラはさらに氷魔法の発動準備を始めていた。
両チームの現状は、Aチームのゲージは七割分削れており、Bチームのゲージは、最初の好矢によるレメディオスへの攻撃、ガブリエルへの剣撃の攻防、ソフィナによるレメディオスへの連続落雷、
ロサリオへの爆炎攻撃、そして先ほど成功した好矢によるガブリエルへの渾身の一撃……
これらの攻撃で残り一割を切ろうとしていた。
しかし、先ほどの好矢の渾身の一撃は勢いが余って、戦闘フィールドの地面へ突き刺さった!
突然のことで戸惑い、刀を引き抜こうとしている好矢。
「終わりだッ…!!」
そこへガブリエルが両手剣を振り下ろした!!
(ひょうきゅう……8個、ロサリオの周りへしゅつげん……ロサリオへ一斉はっしゃ!!)「発動ッ!!」
アデラは、爆炎とそこから引き起こった衝撃波で、体勢を崩していたロサリオへ、直径15cmほどの氷球を放っていた。
前方から飛んできた氷球一つが見えていたため、体勢を崩した状態のまま、ロサリオは腕でガードして前方の氷球を受けた。
それと同時に後ろや横から同じようなサイズの氷球がロサリオへ激突し、割れて破片による追加ダメージを与えた。
「ぐわぁっ!!」「はぐっ…!!」
ロサリオと好矢は同時にダメージを食らっていた。
ロサリオが攻撃を食らったことでBチームのゲージは空になり、Aチームは好矢がガブリエルの攻撃を受けたが、ゲージはかろうじて残っている程度で耐え切った。
ソフィナが詠唱待ちで用意しておいてくれた、金属属性の障壁のおかげだった……。
………………
「に、二学年次模擬戦、優勝は―――Aチーム!ソフィナ・ヨエル、アデラ・エイジャー、トール・ヨシュアのパーティでーーすッ!!」
ワアァァァァァァーーーーーッッ!!!
戦闘フィールドは歓声と共に大きな拍手に包まれた。
――Cチーム控室
「勝ったよ!!」エリシアは同じチームのエレナに嬉しそうに声を掛けた。
「アンタの応援のお陰だね、エリシア。」その様子を見て、ニコニコと言うノーマ。
「そ、そんなこと……」エリシアは頬を染める。
・
・
・
「今回は二学年次の模擬戦は最弱チームまで全てを決めて、強さによる序列を作るという案をいただいております。ですので模擬戦はこれで終わりではありませんッ!!」
ガブリエルは、前のめりに倒れる好矢を抱え起こして一言。
「おめでとう、トール……お前、メチャクチャ強いな!」
ソフィナ、アデラ、レメディオスはザッザッと好矢のところへ歩いて行く。
「レメディオスか……」好矢は彼女の顔を見て言った。
「ごめんなさい……!」レメディオスは頭を下げた。
頭を下げたまま彼女は続けた。「弱くて真っ先にやられたのは私でした!!そしてヨシュアくんは、ガブリエルの必殺の一撃を二回も耐え切った……!正真正銘、キミの方が強いです!」
「そうだぞ、レメディオス。好矢くんは私よりも魔力が高くて強いんだ。」ソフィナは少し離れたところから笑いながら言った。
――その和やかな空気を壊したのはロサリオだった。
「ヨシュアァァ………!!…くらえぇッ!!」
ロサリオは試合が終わって障壁が完全解除された戦闘フィールドで爆炎を召喚し、好矢に向かって放った!!
魔法攻撃を食らっても立っていられる体力などは三学年から習うし、好矢も魔法の研究中、障壁の張り方は練習したが、自分へ魔法を撃って耐えるという命知らずな掛けはしなかった。
その結果……
ズドォォォォンッッ!!
好矢、ガブリエル、レメディオスは爆炎に包まれた……。
ザワザワザワ……
「好矢くぅぅぅぅぅぅぅぅんッッ!!!」「ガブゥゥゥゥーーーッッ!!」
ソフィナとアデラは同時に叫んだ。
ロサリオはその攻撃をして、やってしまったという表情を一瞬見せたが、
「へ…へへ……や、やった……お前が……悪いんだぜ……?ヨシュア……!」
そう言い終えた後、好矢、ガブリエル、レメディオスの三名は、黒煙から姿を見せる頃には全員真っ黒になっていた……
「担架だ!担架用意しろーッ!!」
「魔導通話で医者を呼べーーッ!!」
観戦席は大騒ぎになり、学長や教官たちはすぐに戦闘フィールドへ向かった。
しかし、戦闘の被害が周囲へ及ばないよう、すぐには辿り着けない仕組みになっていた……。
「ロサリオ……貴様……!!」ソフィナは今までに誰にも見せたことのない歪んだ怒りの表情を浮かべて杖を構え、長い詠唱を始めた……
「ソフィナ、私がロサリオを抑える。アイツ、一撃でぶっ殺して。」
「分かっている……」
「あ、アデラちゃん……?だって、アイツが…悪いんだぜ……?」
「発動。」アデラは無表情のまま、ロサリオの身体を氷の輪で縛り上げた。
「うわぁっ!?」
そしてソフィナの魔法――
(――魔力300使用…)「発――!!」
がしっ!
真っ黒になった好矢は、ソフィナの足を掴んで、魔法の発動を阻害した。
「よ、好矢くん……?」
「や…めろ……」喋るだけで苦しそうな好矢はそれだけ言って、意識を失った。
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